[0125] ディシジョンツリー分析を用いた人工股関節全置換術後在院日数予測モデルの構築(第2報)
キーワード:ディシジョンツリー分析, 人工股関節全置換術, 術後在院日数
【目的】
我々は先行研究において,2009年4月~2012年9月に当院にて再置換術を含む人工股関節全置換術(以下:THA)を施行された症例を対象とし,ディシジョンツリー分析を用いて術後在院日数予測モデル(以下:旧予測モデル)を構築した。予測モデルにより術前から採取しうる5項目(手術回数,年齢,術前歩行様式,非術側JOA score,併存疾患数)から,術後在院日数3週グループ(23日以内),4週グループ(24~30日),5週グループ(31~37日),5週以上グループ(38日以上)の4グループに分類可能となり,クリニカルパス運用の際などの臨床現場において有用となる可能性が示唆された。しかし,症例数が十分でないこと,予測精度について十分な検討を行えていないことなどから,実用化にはさらなる改良・検討が必要であると考えられる。そこで本研究の目的は,2012年10月~2013年10月に当院にてTHA術施行された42症例を追加し,あらたな予測モデル(以下:新予測モデル)の作成を行うこととした。また,旧予測モデルと新予測モデルに42症例を再適応し,予測精度を比較検討することを目的とした。
【方法】
対象は当院において2009年4月から2012年9月までに再置換術を含むTHAを施行された患者154名(女性122名,男性32名:平均年齢67歳),および2012年10月~2013年10月にTHA施行された42名(女性37名,男5名:平均年齢64歳)とし,年齢,手術回数,術前歩行様式(good:独歩or T字杖,poor:歩行不可or松葉杖や老人車),非術側の日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下:JOA score),併存疾患数の5項目(以下:術前5項目)を電子診療録より採取した。続いて,154名に42名を追加した196名の術後在院日数を従属変数,術前5項目を説明変数としてディシジョンツリー分析を行った。算出された予測在院日数をもとに4週グループ(24~30日),5週グループ(31~37日),6週以上(38日以上)の3グループに分類される新予測モデルを作成した。その後,42症例を旧予測モデルと新予測モデルに再適応し,予測精度を比較検討した。すべての統計解析はSAS Institute Japan社製jmp7を使用し,統計学的有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
本研究は後方視的研究であり,全ての患者からの同意が得られないため当大学医学倫理委員会の指針および臨床研究に関する倫理指針(厚生労働省)に則り,診療録から得られた個人情報を目的達成に必要な範囲を越えて取り扱わず,匿名化したデータベースにして解析を行った。
【結果】
旧予測モデルおよび新予測モデルの要約を記載する。最上位は,旧予測モデルでは“手術回数”,新予測モデルでは“術前非術側JOA score”であり,それぞれ“初回と再置換”,“73点以上と72点以下”に二分された。3週グループは,旧予測モデルでは“初回手術”→“47歳以下”の1モデル,新予測モデルでは3週グループは作成されなかった。4週グループは,旧予測モデルでは“初回手術”→“47歳以上”→“歩行good”→“非術側JOA score68点以上”→併存疾患数3以下“のモデルと“初回手術”→“47歳以上”→“歩行good”→“非術側JOA score68点以上”→“併存疾患数4以上”→“63歳以下”の2モデルであり,新予測モデルでは“非術側JOA score73点以上”→“年齢64以下”→“歩行様式good”のモデル,“非術側JOAscore73点以上”→“年齢65以上”→“初回手術”→“併存疾患数2以下”のモデル,および“非術側JOAscore72点以下”→“初回手術”→“歩行様式good”→“年齢71歳以下”の3モデルであった。同様に,5週グループは,旧予測モデルでは7モデル,新予測モデルでは3モデルであった。6週以上は,旧予測モデルでは4モデル,“新予測モデルでは3モデルであった。
続いて,旧予測モデルおよび新予測モデルに42名を再適応した結果,旧予測モデルでは,逸脱なし例14.2%,遅延例26.2%,短縮例59.5%,新予測モデルでは,逸脱なし例26.2%,遅延例14.3%,短縮例59.5%となった。
【考察】
本研究により,新予測モデルは旧予測モデルと比較して,予測精度が高く,遅延例が少ないことが示唆された。また,最上位は,旧予測モデルにおいて“手術回数”であり,新予測モデルにおいては“術前非術側JOA score”が抽出される結果となった。ディシジョンツリー分析は寄与度の高いものから順に分岐していき樹形図を作成する手法である。新予測モデルにおいて最上位に術前非術側JOA scoreが抽出されたより,術前5項目において非術側股関節機能が術後在院日数に最も寄与する可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,ディシジョンツリー分析を用いることでTHA術後在院日数に関連する要因間の相互関係を明らかにしたものである。今回の結果は,THA患者に対する理学療法やクリニカルパス運用の際に有用であると考える。
我々は先行研究において,2009年4月~2012年9月に当院にて再置換術を含む人工股関節全置換術(以下:THA)を施行された症例を対象とし,ディシジョンツリー分析を用いて術後在院日数予測モデル(以下:旧予測モデル)を構築した。予測モデルにより術前から採取しうる5項目(手術回数,年齢,術前歩行様式,非術側JOA score,併存疾患数)から,術後在院日数3週グループ(23日以内),4週グループ(24~30日),5週グループ(31~37日),5週以上グループ(38日以上)の4グループに分類可能となり,クリニカルパス運用の際などの臨床現場において有用となる可能性が示唆された。しかし,症例数が十分でないこと,予測精度について十分な検討を行えていないことなどから,実用化にはさらなる改良・検討が必要であると考えられる。そこで本研究の目的は,2012年10月~2013年10月に当院にてTHA術施行された42症例を追加し,あらたな予測モデル(以下:新予測モデル)の作成を行うこととした。また,旧予測モデルと新予測モデルに42症例を再適応し,予測精度を比較検討することを目的とした。
【方法】
対象は当院において2009年4月から2012年9月までに再置換術を含むTHAを施行された患者154名(女性122名,男性32名:平均年齢67歳),および2012年10月~2013年10月にTHA施行された42名(女性37名,男5名:平均年齢64歳)とし,年齢,手術回数,術前歩行様式(good:独歩or T字杖,poor:歩行不可or松葉杖や老人車),非術側の日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下:JOA score),併存疾患数の5項目(以下:術前5項目)を電子診療録より採取した。続いて,154名に42名を追加した196名の術後在院日数を従属変数,術前5項目を説明変数としてディシジョンツリー分析を行った。算出された予測在院日数をもとに4週グループ(24~30日),5週グループ(31~37日),6週以上(38日以上)の3グループに分類される新予測モデルを作成した。その後,42症例を旧予測モデルと新予測モデルに再適応し,予測精度を比較検討した。すべての統計解析はSAS Institute Japan社製jmp7を使用し,統計学的有意水準は5%未満とした。
【説明と同意】
本研究は後方視的研究であり,全ての患者からの同意が得られないため当大学医学倫理委員会の指針および臨床研究に関する倫理指針(厚生労働省)に則り,診療録から得られた個人情報を目的達成に必要な範囲を越えて取り扱わず,匿名化したデータベースにして解析を行った。
【結果】
旧予測モデルおよび新予測モデルの要約を記載する。最上位は,旧予測モデルでは“手術回数”,新予測モデルでは“術前非術側JOA score”であり,それぞれ“初回と再置換”,“73点以上と72点以下”に二分された。3週グループは,旧予測モデルでは“初回手術”→“47歳以下”の1モデル,新予測モデルでは3週グループは作成されなかった。4週グループは,旧予測モデルでは“初回手術”→“47歳以上”→“歩行good”→“非術側JOA score68点以上”→併存疾患数3以下“のモデルと“初回手術”→“47歳以上”→“歩行good”→“非術側JOA score68点以上”→“併存疾患数4以上”→“63歳以下”の2モデルであり,新予測モデルでは“非術側JOA score73点以上”→“年齢64以下”→“歩行様式good”のモデル,“非術側JOAscore73点以上”→“年齢65以上”→“初回手術”→“併存疾患数2以下”のモデル,および“非術側JOAscore72点以下”→“初回手術”→“歩行様式good”→“年齢71歳以下”の3モデルであった。同様に,5週グループは,旧予測モデルでは7モデル,新予測モデルでは3モデルであった。6週以上は,旧予測モデルでは4モデル,“新予測モデルでは3モデルであった。
続いて,旧予測モデルおよび新予測モデルに42名を再適応した結果,旧予測モデルでは,逸脱なし例14.2%,遅延例26.2%,短縮例59.5%,新予測モデルでは,逸脱なし例26.2%,遅延例14.3%,短縮例59.5%となった。
【考察】
本研究により,新予測モデルは旧予測モデルと比較して,予測精度が高く,遅延例が少ないことが示唆された。また,最上位は,旧予測モデルにおいて“手術回数”であり,新予測モデルにおいては“術前非術側JOA score”が抽出される結果となった。ディシジョンツリー分析は寄与度の高いものから順に分岐していき樹形図を作成する手法である。新予測モデルにおいて最上位に術前非術側JOA scoreが抽出されたより,術前5項目において非術側股関節機能が術後在院日数に最も寄与する可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,ディシジョンツリー分析を用いることでTHA術後在院日数に関連する要因間の相互関係を明らかにしたものである。今回の結果は,THA患者に対する理学療法やクリニカルパス運用の際に有用であると考える。