第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 運動器理学療法 口述

骨・関節2

Fri. May 30, 2014 11:45 AM - 12:35 PM 第11会場 (5F 501)

座長:河野礼治(新別府病院リハビリテーション科)

運動器 口述

[0127] THA術後3ヶ月から6ヶ月においてJHEQ不満度に影響を与える因子の検討

三田村信吾1, 近藤秀哉1, 宮ノ脇翔1, 中宿伸哉1, 坪井真幸2 (1.吉田整形外科病院リハビリテーション科, 2.吉田整形外科病院整形外科)

Keywords:運動療法, 患者満足度, 人工股関節全置換術

【はじめに,目的】
我々はこれまでに,人工股関節全置換術(以下,THA)術後1ヶ月及び3ヶ月では股関節屈曲及び外転,外旋可動域を改善し,動作項目の点数向上により,患者の主観評価である日本整形外科学会股関節疾患評価表(以下,JHEQ)の股関節の状態(以下,不満度)が改善されることを報告した。今回,THA術後6ヶ月での中期成績を調査し報告する。本研究の目的は,THA術後3ヶ月から6ヶ月においてJHEQの不満度に影響を与える因子を検討することである。
【方法】
対象は2012年3月から2013年3月までに当院で初回THAを行った43例43関節のうち,術後3ヶ月時のJHEQの不満度が6mm以上の20例20関節(男性6例,女性14例,平均年齢64.45±8.33歳)とした。検討項目は,JHEQによる不満度,JHEQによる痛み項目,動作項目及びメンタル項目,各股関節可動域(屈曲,伸展,外転,内転,外旋,内旋,屈曲外転外旋の複合可動域(以下,複合)),BIODEX systemIIIで計測した等速性股関節屈曲及び伸展筋力,等尺性股関節外転筋力を体重で除し100を乗じた値(%)であり,術後3ヶ月と6ヶ月の2群間で比較検討した。統計処理は,対応のあるt検定を用い有意水準5%未満とした。さらに,2群間において統計学的有意差を認めた項目と不満度の間で,Spearmanの順位相関係数を算出した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき計画し,対象者には本研究の趣旨,目的を十分に説明し,書面にて同意を得た。
【結果】
術後3ヶ月と6ヶ月の2群間で統計学的有意差を認めた項目は,不満度が3ヶ月27.4mm,6ヶ月11.4mm(p=0.0163),痛み項目が3ヶ月22.4点,6ヶ月24.5点(p=0.0111),動作項目が3ヶ月15.3点,6ヶ月18.4点(p=0.0033),屈曲可動域が3ヶ月99°,6ヶ月104°(p=0.0072),伸展可動域が3ヶ月14.5°,6ヶ月16.8°(p=0.0086),外旋可動域が3ヶ月39.5°,6ヶ月43°(p=0.0493),複合可動域が3ヶ月161°,6ヶ月171.5°(p<0.0001),等速性股関節屈曲筋力が3ヶ月98.7%,6ヶ月107.1%(p=0.0058)であった。
2群間で統計学的有意差を認めなかった項目は,メンタル項目が3ヶ月18点,6ヶ月19点(p=0.2452),外転可動域が3ヶ月22°,6ヶ月24°(p=0.1189),内転可動域が3ヶ月18°,6ヶ月19°(p=0.2674),内旋可動域が3ヶ月36°,6ヶ月38°(p=0.1762),等速性股関節伸展筋力は3ヶ月95%,6ヶ月107%(p=0.1479),等尺性股関節外転筋力は3ヶ月80%,6ヶ月91%(p=0.1810)であった。
Spearmanの順位相関係数は,不満度と屈曲可動域(r=-0.374),伸展可動域(r=0.3545),外旋可動域(r=0.374),複合可動域(r=-0.04),等速性股関節屈曲筋力(r=-0.04)であった。
【考察】
我々は,THA術後1ヶ月及び3ヶ月でのJHEQの動作項目の点数には,屈曲及び外転,外旋可動域が関与していると報告した。今回,THA術後3ヶ月で不満度が残存している20例では,術後3ヶ月と6ヶ月において,JHEQにおける不満度及び動作項目,屈曲及び外旋可動域,等速性股関節屈曲筋力に有意差が認められた。短期成績同様,可動域制限により残存する動作困難感が不満度に関与している可能性があるという結果となった。患者の不満度の原因が動作の改善であれば,本研究の通りに股関節屈曲及び外旋可動域を広げ,股関節屈曲筋力を改善すれば良いと考える。しかし,統計学的有意差が認められた項目が不満度と相関関係にはないという結果が得られた。術後6ヶ月での中期成績では,THA術後運動療法が3ヶ月以上展開され,身体的にも精神的にも改善されてきた中で,何か一つの項目が改善することにより不満度が改善されるのではなく,不満度は多様な因子から影響を受けているとも考えられる。そこで,不満度をVASで計測するのみではなく,その数値にした理由を患者本人に確認し,その患者の背景,環境,身体状況など一人ひとり異なる因子を総合的に捉えることが必要ではないかと考える。患者一人ひとりの不満度を総合的に捉えた上で,一人ひとりに合わせた運動療法及び自宅ADL指導などを展開することにより,患者の不満度の軽減を図るべきであると考える。
【理学療法学研究としての意義】
術後3ヶ月から6ヶ月において不満度に影響を与える因子を検討した。主訴が動作の改善である患者は,術後3ヶ月以降の運動療法として,術後3ヶ月までに獲得出来なかった屈曲及び外転,外旋可動域を改善し,動作の獲得をすることが不満度の改善において必要なことだと考えられた。しかし,患者の不満度や主訴に影響するものは,患者一人ひとりで異なるため,患者一人ひとりに適した運動療法及び自宅ADL指導などを展開することにより,患者の不満度の軽減を図ることが重要になるのではないかと考える。