[0136] ボツリヌス療法と理学療法の併用が自然歩行と最大歩行に及ぼす影響
Keywords:ボツリヌス療法, 10m歩行, 片麻痺
【はじめに,目的】
ボツリヌス(以下BTX-A)療法は,2009年脳卒中ガイドラインでグレードAに推奨され,脳卒中後の痙性治療に対し有効との報告がされている。また,BTX-A療法と理学療法を併用した結果,歩行能力が有意に改善したという報告がある。BTX-A療法と理学療法を併用した効果を検証する場合に,歩行能力の評価指標として10m歩行テストを用いることが多い。しかし,BTX-A療法と理学療法を併用した効果として,10m歩行テストにおいて自然な歩行速度で歩行したとき(以下自然歩行)と,最大歩行速度で歩行したとき(以下最大歩行)の2つに分けて検討した報告は少ない。本研究は,BTX-A療法と理学療法の併用が自然歩行と最大歩行に及ぼす影響の検討を目的とした。
【方法】
対象は2011年4月から2013年10月の間に当院でBTX-A療法を投与し,歩行能力が監視以上の慢性期脳卒中患者8名中,自然歩行と最大歩行ともに計測可能であった7名(男性6名,女性1名,年齢55.4±11.82歳,発症からBTX-A療法の投与までの日数726.4±511.16日)を採用した。対象者のBTX-A投与筋は,上腕二頭筋,浅指屈筋,下腿三頭筋,後脛骨筋などであった。注射単位数は対象者の痙縮の程度によって判断された(投与単位数平均342.9単位)。投与後,2週間は入院にて,毎日60分程度の理学療法を実施し,以降は外来にて週1~2回,各40~60分程度の理学療法を実施した。初回のBTX-A投与前(以下初回投与前)と,2回目投与前(投与間日数149.0±33.26日)に10m歩行テストを実施し,歩行時間,歩数を計測した。10m歩行テストは2mの助走路を設定し,自然歩行と最大歩行をそれぞれ3回実施し,その最大値を抽出した。対象者には,自然歩行時「普通に歩いて下さい。」と,最大歩行時「出来る限り速く歩いてください。」とそれぞれ統一して伝え,自然歩行と最大歩行を区分した。統計は対応のあるt検定を使用した。解析にはSPSS20.0を使用し有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
情報抽出の際は個人情報の取り扱いに最大限の配慮を行い,個人が特定できないようにした。対象者には,学術的利用を目的とした評価データの使用について同意を得た。
【結果】
初回投与前→2回目投与前として,結果を下記に記載し,有意な差がある場合p値で示した。自然歩行では,歩行時間(秒):24.0±9.94→ 21.1±5.39であり,有意な差は認められなかった。歩数(歩):33.9±12.42→30.6±7.57であり,有意な差は認められなかった。最大歩行では,歩行時間(秒):19.2±6.85→16.8±5.46(p<0.05)であり,有意な差を認めた。歩数(歩):30.6±9.51→27.0±7.26であり,有意な差は認められなかった。
【考察】
本研究の結果から,最大歩行における歩行時間のみ有意な差が認められ,自然歩行においては有意な差が認められなかった。自然歩行は,エネルギーコストが最小な状態であり,最大歩行は,その人の持つ歩行能力をパフォーマンスとして的確に引き出している状態であるとの報告がある。よって,BTX-A療法と理学療法を併用することにより,歩行のパフォーマンスに影響を与えることが示唆された。また,BTX-A療法と理学療法を併用した効果判定としては,最大歩行を指標にすることが有効であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
今回の結果から,BTX-A療法と併用する理学療法においては,歩行のパフォーマンス向上に着目する必要があることが推察でき,今後理学療法内容を検討していく上で意義があると考える。また,BTX-A療法と理学療法を併用した効果判定を10m歩行テストにて検討する場合は最大歩行を指標することが望ましい。
ボツリヌス(以下BTX-A)療法は,2009年脳卒中ガイドラインでグレードAに推奨され,脳卒中後の痙性治療に対し有効との報告がされている。また,BTX-A療法と理学療法を併用した結果,歩行能力が有意に改善したという報告がある。BTX-A療法と理学療法を併用した効果を検証する場合に,歩行能力の評価指標として10m歩行テストを用いることが多い。しかし,BTX-A療法と理学療法を併用した効果として,10m歩行テストにおいて自然な歩行速度で歩行したとき(以下自然歩行)と,最大歩行速度で歩行したとき(以下最大歩行)の2つに分けて検討した報告は少ない。本研究は,BTX-A療法と理学療法の併用が自然歩行と最大歩行に及ぼす影響の検討を目的とした。
【方法】
対象は2011年4月から2013年10月の間に当院でBTX-A療法を投与し,歩行能力が監視以上の慢性期脳卒中患者8名中,自然歩行と最大歩行ともに計測可能であった7名(男性6名,女性1名,年齢55.4±11.82歳,発症からBTX-A療法の投与までの日数726.4±511.16日)を採用した。対象者のBTX-A投与筋は,上腕二頭筋,浅指屈筋,下腿三頭筋,後脛骨筋などであった。注射単位数は対象者の痙縮の程度によって判断された(投与単位数平均342.9単位)。投与後,2週間は入院にて,毎日60分程度の理学療法を実施し,以降は外来にて週1~2回,各40~60分程度の理学療法を実施した。初回のBTX-A投与前(以下初回投与前)と,2回目投与前(投与間日数149.0±33.26日)に10m歩行テストを実施し,歩行時間,歩数を計測した。10m歩行テストは2mの助走路を設定し,自然歩行と最大歩行をそれぞれ3回実施し,その最大値を抽出した。対象者には,自然歩行時「普通に歩いて下さい。」と,最大歩行時「出来る限り速く歩いてください。」とそれぞれ統一して伝え,自然歩行と最大歩行を区分した。統計は対応のあるt検定を使用した。解析にはSPSS20.0を使用し有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
情報抽出の際は個人情報の取り扱いに最大限の配慮を行い,個人が特定できないようにした。対象者には,学術的利用を目的とした評価データの使用について同意を得た。
【結果】
初回投与前→2回目投与前として,結果を下記に記載し,有意な差がある場合p値で示した。自然歩行では,歩行時間(秒):24.0±9.94→ 21.1±5.39であり,有意な差は認められなかった。歩数(歩):33.9±12.42→30.6±7.57であり,有意な差は認められなかった。最大歩行では,歩行時間(秒):19.2±6.85→16.8±5.46(p<0.05)であり,有意な差を認めた。歩数(歩):30.6±9.51→27.0±7.26であり,有意な差は認められなかった。
【考察】
本研究の結果から,最大歩行における歩行時間のみ有意な差が認められ,自然歩行においては有意な差が認められなかった。自然歩行は,エネルギーコストが最小な状態であり,最大歩行は,その人の持つ歩行能力をパフォーマンスとして的確に引き出している状態であるとの報告がある。よって,BTX-A療法と理学療法を併用することにより,歩行のパフォーマンスに影響を与えることが示唆された。また,BTX-A療法と理学療法を併用した効果判定としては,最大歩行を指標にすることが有効であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
今回の結果から,BTX-A療法と併用する理学療法においては,歩行のパフォーマンス向上に着目する必要があることが推察でき,今後理学療法内容を検討していく上で意義があると考える。また,BTX-A療法と理学療法を併用した効果判定を10m歩行テストにて検討する場合は最大歩行を指標することが望ましい。