第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 内部障害理学療法 ポスター

呼吸2

Fri. May 30, 2014 11:45 AM - 12:35 PM ポスター会場 (内部障害)

座長:渡邉文子(公立陶生病院中央リハビリテーション部)

内部障害 ポスター

[0155] 在宅酸素療法患者に対するフライングディスク競技の忍容性と活動強度に関する検討

本多雄一1,2, 森下友紀子2, 杉野亮人1, 平松政高2, 南方良章2, 山本信之2 (1.和歌山県立医科大学リハビリテーション部, 2.和歌山県立医科大学内科学第三講座)

Keywords:日常活動性, 在宅酸素療法, フライングディスク競技

【はじめに,目的】
在宅酸素療法(LTOT)患者は,主に慢性閉塞性肺疾患(COPD)であり,LTOT導入中の患者は身体能力の低下,日常生活動作,QOLの低下がみられる。COPD患者の生命予後は,日常活動性に最も影響され,LTOT患者の日常活動性維持は重要である。COPD患者の運動耐容能,日常活動性,QOLの改善に対し,リハビリテーションの有効性は報告されているが,同時に中止後の運動耐容能,活動性,QOLの低下も明らかであり,それらを維持させるための対策が必要である。近年,障害者の運動能力,日常活動性向上を目的としたフライングディスク(FD)競技が注目され,呼吸器疾患患者への導入も行われつつある。今回,LTOT患者の日常活動性維持,向上を目的し,FD競技をLTOT導入中の呼吸器疾患患者に実施させ,FD競技が日常活動性に比べどの程度の活動性に相当するか,また継続実施の忍容性について検討した。
【方法】
和歌山県の在宅酸素療法患者会総会に参加したLTOT導入中患者13名(COPD10名,間質性肺炎(IP)3名)に対し,FD競技の試技・実技を実施し,FD競技前後でのSpO2,心拍数(HR),修正Borg scaleを計測し,FD競技中の活動量を測定した。また,FD競技終了後,アンケートを実施し,その後,14日間の日常活動性を測定した。なお,SpO2,HRの測定は,フィンガーパルスオキシメーター(PULSOX-M;TEIJIN, Osaka, Japan)で,活動性の測定は,Actimarker(Actimarker;Panasonic, Osaka, Japan)で行った。FD競技中の活動性は,FD試技開始から競技終了までとし,日常活動性は杉野らの方法に準じ,14日間から雨天,休日,特殊な活動をした日を除いた3日間を選択した。統計処理は,Graph Pad Prism 5(GraphPad Software, San Diego, CA)で行い,日常活動性とFD競技中の活動性比較,SpO2,HR,修正BorgスケールのFD競技前後の差にはWilcoxonの符号付順位検定を用いた。なお,p<0.05を統計的有意と判定した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,和歌山県立医科大学倫理委員会の承認を受け,対象者には研究内容を十分に説明し,書面にて同意を得た(承認番号:968,1247)。
【結果】
対象患者の13人中,2人は試技後,SpO2 85%以下となったため対象から除外した。最終的に対象は,COPD8名,IP3名となり,平均年齢76.2±5.3歳,BMI22.5±3.1kg/m2,主な呼吸機能はFVC2.04±0.93L,FEV1.01.20±0.54L,FEV1.0% predicted 63.5±26.5%であった。FD競技実施後,SpO2は最低で88%,HRは最大で130拍/分,修正Borg scaleは最大で5でありFD競技前後でいずれも有意に変動した。FD競技中の活動性(% duration of activity)は日常活動性と比べ,≧2.0METs,≧2.5METsでFD競技中の割合が有意に髙値であった。≧3.0MET,≧3.5METsの割合は高い傾向であったが,有意差は認めなかった。アンケート結果は,息切れや疲労を感じる一方で,楽しいや次回参加希望,LTOT患者でも実施可能であるなど継続施行を希望する意見が多かった。
【考察】
FD競技の忍容性については,除外した2名以外は呼吸器疾患患者の運動療法中止基準であるSpO2が90%以下,心拍数が140回/分以上,修正Borg scaleが9以上とならず,SpO2に関しては,88%まで低下した2名もすぐに90%台に回復していた。そのため簡易な労作でSpO2≦85%とならないLTOT導入中の患者ではFD競技は安全に実施可能であることが示された。FD競技の活動性は日常活動性と比べ,≧2.0METs,≧2.5METsで割合が有意に増加していた。COPD患者の運動療法では,低強度の運動でも効果があるとされ,継続性に関しては低強度負荷が推奨されている。今回のFD競技は,低強度であり短時間の運動であるが,短い時間でも繰り返し競技を行うことが,日常活動性のパターンを変化させる可能性があると考えられる。アンケート結果は,息切れや疲労を感じる一方で継続施行を希望する意思が確認できた。COPD患者では,長期的なリハビリテーションは,短期的なものに比べ,身体機能の改善効果が高く,また,リハビリテーション終了後の運動耐容能,QOLの改善効果の維持は1-2年である。また,継続性向上のための要素としては,十分なコンディショニングや他者との助け合い,プログラムの楽しさ,報酬システムなどとされている。そのため,このような呼吸器疾患患者の持続的な運動療法の手段,機会の提供は重要であり,FD競技はLTOT患者が継続して実施可能であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
LTOT患者に対するFD競技は,実施可能で継続性の可能性も示され,FD競技は低強度の活動であることが判明した。今後,定期的な競技への参加がLTOT患者の日常活動性維持,向上させることが期待された。