[0157] 地域型運動教室参加者における抑うつ状態の有無が運動・精神機能へ与える効果
Keywords:筋力, Geriatric Depression Scale 15, 抑うつ
【はじめに】高齢者の要介護状態の悪化や発生を防ぐため,介護予防教室が各地域で展開されるようになった。介護予防事業には,一次予防事業と二次予防事業があり,後者では,運動器の機能,栄養改善や口腔機能の向上を目指したプログラムが単独で行われることが多かった。当院でも,病院スタッフによって虚弱高齢者でも安心して参加できる地域型運動教室として『さぼてんクラブ』を平成22年9月から開始し,運動器の機能向上を目的に実施している。高齢者においてうつ病は,精神疾患の中で発生頻度の高い事が知られているが,抑うつ状態の高齢者に対する運動介入の効果については,一致した見解を得ていない。そこで,地域在住高齢者を対象に,運動器の機能向上を目的とした運動教室において,抑うつ状態を有するか否かによって,運動面や心理面への効果に違いが生じるか否かについて確認しておく必要がある。
【目的】本研究の目的は,当院で実施した介護予防運動教室『さぼてんクラブ』に参加した地域在住高齢者を対象に,レジスタンス運動を実施し,抑うつ状態の有無によって介入効果に違いがあるかを検討することとした。
【対象】平成22年9月から運動教室『さぼてんクラブ』を4回実施した。対象は,本教室『さぼてんクラブ』に参加した地域在住高齢者116名のうち,介入前後で評価が可能であった73名(男9名:女64名)とした。介入前,対象に短縮版高齢者うつ評価尺度(Geriatric Depression Scale 15;以下,GDS)を実施し,得点が0~5点で抑うつ状態ではない者57名(以下,一般群;男6名・女51名,平均年齢71.5±6.7歳)と,GDSが6点以上で抑うつ状態と判断された者16名(以下,抑うつ群;男3名・女13名,平均年齢73.0±5.0歳)の2群に分けた。
【方法】両群共に同一の『さぼてんクラブ』での運動教室を週1回の計9回実施した。介入前後に評価日を設け,筋機能と抑うつ状態の評価を実施した。1回90分間の運動教室のプログラムは,ストレッチとゴムバンドを用いたレジスタンス運動を中心に実施した。教室の休憩時間には,健康相談を実施し,参加者とのコミュニケーションを積極的にとるように努めた。介入前後の筋機能評価としてArm Curl(以下,AC)・Chair Stand(以下CS),抑うつ評価としてGDSを実施した。統計学的分析は,AC,CSの筋機能評価では両群間における各項目の変化を,反復測定による分散分析法を用いて検討した。GDSでは仰うつ群における介入前後の比較を対応のあるt-検定を用いて検討した。有意水準は危険率5%とした。
【説明と同意】対象者には研究についての説明を行った上で,同意書で承認を得た。また,本研究は中部大学倫理審査委員会の承認を得て実施している。
【結果】ACの結果は,一般群の介入前後で22.3±5.0回から25.5±4.5回へと14%改善し,抑うつ群介入前後では21.2±2.6回から23.8±3.8回へと12%改善した。この時,2群間の間に交互作用は認めなれなかった(p=0.45)が,経時変化は認められた(p<0.01)。CSの結果は,一般群の介入前後で20.9±5.3回から24.7±5.9回へと18%改善し,抑うつ群介入前後では20.3±4.4回から23.4±4.9回へと15%改善した。この時,2群間の間に交互作用は認めなれなかった(p=0.47)が,経時変化は認められた(p<0.01)。GDSの結果は,抑うつ群の介入前後で7.9±2.2点から6.4±3.4点へと19%改善した(p<0.01)。抑うつ群16名中9名(56%)が介入後にGDS5点以下となった。
【考察】AC・CSにおいては,抑うつ状態の有無に関係なく,運動教室での介入によって,筋機能への効果は同様であることを示しているとみられた。
一方,GDSにおいては,抑うつ群で抑うつ状態の改善傾向を認めた。山田ら(2013)によると,抑うつ状態を有する高齢者に対してレジスタンストレーニング教室を実施したところ,筋力・筋細胞量の増加に加え,抑うつ状態が改善したと報告しており,本研究の抑うつ群での結果と同様であった。また,当院の『さぼてんクラブ』では,スタッフや参加者同士で積極的にコミュニケーションをとることや,安心して運動に取り組めるよう健康相談も実施しており,これらの関わりも心理状態に影響を与えたことが考えられる。
以上の事より,当院での運動教室においては,抑うつ状態にある高齢者においても,一般高齢者と同様に筋機能が向上し,さらに,抑うつ状態も改善できる可能性が示唆された。
【目的】本研究の目的は,当院で実施した介護予防運動教室『さぼてんクラブ』に参加した地域在住高齢者を対象に,レジスタンス運動を実施し,抑うつ状態の有無によって介入効果に違いがあるかを検討することとした。
【対象】平成22年9月から運動教室『さぼてんクラブ』を4回実施した。対象は,本教室『さぼてんクラブ』に参加した地域在住高齢者116名のうち,介入前後で評価が可能であった73名(男9名:女64名)とした。介入前,対象に短縮版高齢者うつ評価尺度(Geriatric Depression Scale 15;以下,GDS)を実施し,得点が0~5点で抑うつ状態ではない者57名(以下,一般群;男6名・女51名,平均年齢71.5±6.7歳)と,GDSが6点以上で抑うつ状態と判断された者16名(以下,抑うつ群;男3名・女13名,平均年齢73.0±5.0歳)の2群に分けた。
【方法】両群共に同一の『さぼてんクラブ』での運動教室を週1回の計9回実施した。介入前後に評価日を設け,筋機能と抑うつ状態の評価を実施した。1回90分間の運動教室のプログラムは,ストレッチとゴムバンドを用いたレジスタンス運動を中心に実施した。教室の休憩時間には,健康相談を実施し,参加者とのコミュニケーションを積極的にとるように努めた。介入前後の筋機能評価としてArm Curl(以下,AC)・Chair Stand(以下CS),抑うつ評価としてGDSを実施した。統計学的分析は,AC,CSの筋機能評価では両群間における各項目の変化を,反復測定による分散分析法を用いて検討した。GDSでは仰うつ群における介入前後の比較を対応のあるt-検定を用いて検討した。有意水準は危険率5%とした。
【説明と同意】対象者には研究についての説明を行った上で,同意書で承認を得た。また,本研究は中部大学倫理審査委員会の承認を得て実施している。
【結果】ACの結果は,一般群の介入前後で22.3±5.0回から25.5±4.5回へと14%改善し,抑うつ群介入前後では21.2±2.6回から23.8±3.8回へと12%改善した。この時,2群間の間に交互作用は認めなれなかった(p=0.45)が,経時変化は認められた(p<0.01)。CSの結果は,一般群の介入前後で20.9±5.3回から24.7±5.9回へと18%改善し,抑うつ群介入前後では20.3±4.4回から23.4±4.9回へと15%改善した。この時,2群間の間に交互作用は認めなれなかった(p=0.47)が,経時変化は認められた(p<0.01)。GDSの結果は,抑うつ群の介入前後で7.9±2.2点から6.4±3.4点へと19%改善した(p<0.01)。抑うつ群16名中9名(56%)が介入後にGDS5点以下となった。
【考察】AC・CSにおいては,抑うつ状態の有無に関係なく,運動教室での介入によって,筋機能への効果は同様であることを示しているとみられた。
一方,GDSにおいては,抑うつ群で抑うつ状態の改善傾向を認めた。山田ら(2013)によると,抑うつ状態を有する高齢者に対してレジスタンストレーニング教室を実施したところ,筋力・筋細胞量の増加に加え,抑うつ状態が改善したと報告しており,本研究の抑うつ群での結果と同様であった。また,当院の『さぼてんクラブ』では,スタッフや参加者同士で積極的にコミュニケーションをとることや,安心して運動に取り組めるよう健康相談も実施しており,これらの関わりも心理状態に影響を与えたことが考えられる。
以上の事より,当院での運動教室においては,抑うつ状態にある高齢者においても,一般高齢者と同様に筋機能が向上し,さらに,抑うつ状態も改善できる可能性が示唆された。