第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

健康増進・予防4

Fri. May 30, 2014 11:45 AM - 12:35 PM ポスター会場 (生活環境支援)

座長:中森寛(社会福祉法人よつば会特別養護老人ホーム風和里)

生活環境支援 ポスター

[0165] 地域在住高齢者の転倒

岩本祐輝1, 別所大樹1, 森将志1, 山根隆治1, 深田悟2 (1.公益社団法人鳥取県中部医師会立三朝温泉病院リハビリテーション科, 2.公益社団法人鳥取県中部医師会立三朝温泉病院整形外科)

Keywords:転倒, 運動機能, 関節痛

【はじめに,目的】
高齢者は,加齢に伴い転倒の危険性が増大する事が知られている。また,転倒の発生には加齢のほか複数の要因が関与する事が知られている。我々は,地域在住高齢者の転倒危険因子を把握する事を目的に運動機能,多関節痛についての調査を行った。
【方法】
平成25年3月から10月にかけて転倒予防検診の会場調査に参加し,研究への協力に同意が得られた79名(年齢78.1±8.0歳,男性11名,女性68名)を対象とした。測定項目の手順を理解できない程の重度の認知機能低下がある者や身体機能障害により全ての項目を測定できなかった者は除外した。測定項目は最大サイドステップ長,30-seconds chair-stand test(CS-30),開眼片脚立位(OLS),Time up & Go test(TUG),握力,転倒恐怖感の測定としてModified Falls Efficacy Scale(MFES)とした。また質問項目として過去1年間の転倒の有無,多関節痛の評価は,[痛みなし・肩関節・腰・股関節・膝関節・足関節]より該当する疼痛箇所を選択してもらい合計数を調査した。単変量解析は,転倒群と非転倒群の測定項目の比較には独立2群のt検定を用いた。また転倒の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を用いた。投入する独立変数は単変量解析でp値が0.25未満の変数とした。多重共線性に配慮し独立変数間の相関関係を調査し,高い相関関係(r=0.8以上)は,どちらかの項目を除外する事とした。なお年齢と性別は調整すべき属性としてロジスティック回帰分析の独立変数として強制的に投入した。選出された危険因子に対してはカットオフ値を算出するためROC曲線を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者に対しては,書面および口頭で研究の説明を行い,書面にて同意の得られた者を対象とした。本研究は,当院倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
転倒群と非転倒群のt検定の結果は疼痛箇所数,握力に有意差がみられた。また,両群間のt検定においてp<0.25となった項目は,疼痛箇所数,CS-30,OLS,最大サイドステップ長,握力であり,ロジスティック回帰分析の独立変数として採用した。さらに独立変数間の相関分析を行ったが,r=0.8以上の高い相関関係を示すものはなかった。ロジスティック回帰分析で転倒発生に関わる因子として有意であった項目は疼痛箇所数のみでありオッズ比は,1.69(95%信頼区間1.02~2.81,p<0.05)であった。カットオフ値は,疼痛箇所数が1.5箇所であった。感度は,50.0%,特異度は71.4%,AUC62.2%であった。
【考察】
今回の調査では,転倒の有無に関連を認める項目として多関節痛を示す疼痛箇所数の影響が挙げられた。今回の対象者の多くが日常生活に介助を要さない生活動作の自立している参加者が多く,転倒群においても比較的高い運動機能を有していた。この事から多関節痛は運動機能への干渉を介さずに転倒発生に影響を及ぼしている可能性がある事が考えられた。今後は,多関節痛が転倒発生に関わるメカニズムの探索が課題である。
【理学療法学研究としての意義】
高齢者の転倒は,外傷や骨折による機能予後への影響も大きい。転倒に関わる要因の分析は,転倒予防を考慮する際の重要な材料になるものと考えられる。