第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 教育・管理理学療法 ポスター

臨床教育系2

Fri. May 30, 2014 11:45 AM - 12:35 PM ポスター会場 (教育・管理)

座長:加藤宗規(了德寺大学健康科学部理学療法学科)

教育・管理 ポスター

[0168] 理学療法学・作業療法学専攻学生におけるキャリア教育のニーズの分析

朝倉智之, 臼田滋, 今井忠則, 浅川康吉, 山路雄彦, 外里冨佐江, 李範爽, 中澤理恵, 勝山しおり, 高橋麻衣子 (群馬大学大学院保健学研究科)

Keywords:卒前教育, キャリア教育, 質問紙調査

【はじめに,目的】
大学におけるキャリア教育は他学部では一般的となっているが,理学療法学・作業療法学分野では系統的なキャリア教育に関する報告は少ない。理学療法や作業療法を取り巻く環境は大きく変化し,キャリアも多様化している。このような状況のなかでの学生のキャリア意識や目標の明確化はその後の学習姿勢に影響を与えると考えられ,キャリア教育プログラムの構築が必要である。本研究ではキャリア教育プログラムを作成するに当たっての具体的なニーズの把握を目的とし,質問紙調査を行った。
【方法】
本学理学療法学専攻(PT),作業療法学専攻(OT)在籍の1~3年生116名を対象とし,無記名自記式質問紙調査を実施した。質問紙はキャリア教育に関する内容として,キャリアへの意識,卒業後のイメージ,不安の有無とその内容,本学のキャリア教育体制の充実度,キャリア教育の必要性に関する項目と,所属専攻の志望動機に関する内容で構成した。キャリア教育に関する内容は四肢選択あるいは複数選択形式とし,志望動機に関する内容は16項目について自分の考えとの近さを5段階で選択する形式とした。統計学的処理としてSPSS for Windows 21.0を用いχ2検定による学年,専攻,性別間の比較と,Pearsonの順位相関係数にて項目間の関連性を検討した。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象に対し調査の目的,自由意思での参加であることを説明し,調査用紙の提出を持って同意を得たこととした。
【結果】
質問紙の配布数は116名,回収数は116名で回収率は100%であった。回答者の属性ではPT60名(男性30名,女性30名),OT56名(男性14名,女性42名)であった。キャリアに対する意識は「やや意識している・とても意識している」の合計が57.8%であった。将来の仕事についてのイメージは「よくできている・ややできている」が75.9%であった。卒業後の仕事や生活への不安は「とてもある・ややある」が88.8%であり,その内容は「就職後の業務」(39.1%),「経済面」(28.1%),「就職活動」(17.8%)の順で多かった。特に性別間の比較にて男性では「経済面」に対し,女性では「就職後の業務」,「就職活動」が有意に多かった(p<0.01)。本学のキャリアに関する情報は「全く得られていない・あまり得られていない」が87.9%であり,キャリアサポート体制は「全く整っていない・あまり整っていない」が49.1%であった。現状でキャリア教育として最も役立っているものは「臨床実習」(45.7%),「専門科目の講義」(25.0%)が多数であった。大学全体としてのキャリア教育の必要性は「とても感じる・やや感じる」が90.0%であり,学科・専攻ごとの教育は「とても感じる・やや感じる」が95.7%であった。必要と感じる情報は「PT・OTの勤務実態」(63.8%),「進路」(23.3%)が多数であった。必要と感じるサポートは「就職活動支援」(39.7%)が最多であった。特に男性では「キャリアモデルの提示」,女性では「就職活動支援」が有意に多かった(p<0.01)。専攻,学年ごとの比較では有意な差は認められなかった。項目間の関連では,キャリアに対する意識の程度とキャリア教育の必要性に弱い正の相関を認めた。専攻の志望動機の考えに「非常に近い・近い」とした合計が70%以上の項目は,「他人を援助することは楽しい」,「感謝を示してくれる患者がいる」,「他人に影響を与える機会がある」,「人体についての知識が得られることが魅力」であった。また対象者の67.2%が入学前の経験として,「所属専攻の治療を自分あるいは家族が受けた」,「見学した」,「ボランティア等で関わった」のいずれかを回答していた。
【考察】
半数以上の学生がキャリアに関する意識があり,将来についてのイメージもある程度形成されていることが分かった。しかしほとんどの学生がキャリアへの不安を持っており,特に業務,経済面,就職活動が不安の内容として挙げられた。志望動機の調査は本学での先行調査(1994年)を参考としたが,1994年と比較し安定した職業,将来性への期待の回答割合は少なくなっており,キャリアに関する質問項目でみられた就業への不安に一致する結果であった。長期の臨床実習や就職活動を経験した4年生に対する調査はこれからであるが,現状でのキャリア教育は不十分である可能性があり,今後は学生のニーズに答えられるキャリア教育プログラムを作成する予定である。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法士と作業療法士の充足率,職域の拡大に伴う業務の多様化など,理学療法士と作業療法士を取り巻く環境は変化してきている。卒前のキャリア教育のニーズ調査,分析は社会の変化に合わせた教育を実施するうえで必須である。