[0170] 理学療法専攻入学生における職業決定意義の養成校種類別比較
Keywords:理学療法学生, 職業決定意識, 卒前教育
【はじめに,目的】
本邦では少子化で大学や短期大学への入学希望者が急減しており,現在でも大学への入学希望者総数が入学定員総数を下回る状況は加速している。それに伴い,理学療法士養成校の入学者の中にも,入学時から理学療法士への志望動機が希薄な場合や学年進行に伴い「責任を他者へ転嫁する」「自発的な行動をなかなか起こさない」など学習態度が後退する者もいる。この背景には,学年進行に伴う高度な専門科目の内容に学習が追いつかない,青年期特有の感情不安定,職業決定意識の未発達などが考えられる。何れにせよ彼らに学業を修めさせるためには,入学時から卒業時まで理学療法士の関心を維持させること,学生に求められる自主的に学び―想起―解釈―問題解決へとつなげる学習態度の変容を促すことが必要となってくる。今回,理学療法士養成校に入学した平成25年度生を対象に,理学療法士についてのイメージと職業決定意識について質問紙調査を実施し,養成校種類別比較から各校の特徴を明らかにし,専門職教育の方策について検討した。
【方法】
対象は理学療法学を専攻する平成25年度入学生であり,質問紙調査(留め置き法)を実施し,回答の得られた104名について解析した。回答者の所属は,青森県又は奈良県に所在するA専修学校(40名),B短期大学(37名)及びC大学(27名)であった。調査時期は2013年4~6月であり,調査票は基本属性,理学療法士のイメージについての設問(筆者らが作成,13項目)及び職業未決定尺度(下山,24項目)ほかで構成されていた。統計学検討はSPSS VER.16.0Jを使用し,探索的因子分析(Varimax回転)及び多重比較検定(Bonferroni法)を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の対象者には,予め調査の趣旨を説明し了承した上で実施した。また,調査票表紙には「調査票は無記名であり,統計的に処理されるため,皆様の回答が明らかにされることはありません」と明記されていた。
【結果】
理学療法士のイメージ項目について探索的因子分析を行い,因子負荷量0.50以上,固有値1以上,共通性0.20以上を項目決定因子とした結果,3因子が抽出された。そこで,第1因子は「職務挑戦」,第2因子は「勤務条件」及び第3因子は「理学療法の対象」と命名した。なお,3因子のCronbachα係数は0.75~0.68であり,内的整合性が見出されていた。養成校種類別比較では「職務挑戦」で3校の差を認めなかったが,「勤務条件」ではA専修学校が,「理学療法の対象」ではC大学が他の2校より有意な高値を示した。A専修学校生は勤務先や俸給に関心が高く,C大学生は理学療法の対象者が若年者よりも高齢者となることが多いことを認識していた。一方,職業未決定尺度の下位尺度のうち,職業決定を猶予して当面は就業を考える姿勢が消極的な「猶予」では,C大学が他の2校より有意な高値を示した。また,自らの関心や興味を職業選択に結び付けていこうとする態度が希薄な「安直」では,B短期大学が他の2校より有意な高値を示した。
【考察】
本来,職業決定は青年後期の重要な発達課題である。しかし,昨今の若者気質として,経済的,社会的に自立していなくても自尊(自分の能力や潜在能力の過信)感情は非常に高いことが知られている。本研究の対象者のように,入学間もない学生においても,すでに理学療法士のイメージや職業決定意識に養成校種類別で差を認めたことから,養成校の教育方針とカリキュラム及び校風が青年後期のアイデンティティ確立のために重要な多大な影響を持つことが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果,入学者が考える理学療法士としての将来像と職業決定意識には,養成校の種類により差がみられたことから,各校では理学療法士のイメージと職業意識を培う独自の取組みが必要と考えられた。在学中に,アイデンティティの確立を促し,理学療法士へのイメージの乖離を軽減する事は,理学療法士の質の向上につながると考える。
本邦では少子化で大学や短期大学への入学希望者が急減しており,現在でも大学への入学希望者総数が入学定員総数を下回る状況は加速している。それに伴い,理学療法士養成校の入学者の中にも,入学時から理学療法士への志望動機が希薄な場合や学年進行に伴い「責任を他者へ転嫁する」「自発的な行動をなかなか起こさない」など学習態度が後退する者もいる。この背景には,学年進行に伴う高度な専門科目の内容に学習が追いつかない,青年期特有の感情不安定,職業決定意識の未発達などが考えられる。何れにせよ彼らに学業を修めさせるためには,入学時から卒業時まで理学療法士の関心を維持させること,学生に求められる自主的に学び―想起―解釈―問題解決へとつなげる学習態度の変容を促すことが必要となってくる。今回,理学療法士養成校に入学した平成25年度生を対象に,理学療法士についてのイメージと職業決定意識について質問紙調査を実施し,養成校種類別比較から各校の特徴を明らかにし,専門職教育の方策について検討した。
【方法】
対象は理学療法学を専攻する平成25年度入学生であり,質問紙調査(留め置き法)を実施し,回答の得られた104名について解析した。回答者の所属は,青森県又は奈良県に所在するA専修学校(40名),B短期大学(37名)及びC大学(27名)であった。調査時期は2013年4~6月であり,調査票は基本属性,理学療法士のイメージについての設問(筆者らが作成,13項目)及び職業未決定尺度(下山,24項目)ほかで構成されていた。統計学検討はSPSS VER.16.0Jを使用し,探索的因子分析(Varimax回転)及び多重比較検定(Bonferroni法)を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の対象者には,予め調査の趣旨を説明し了承した上で実施した。また,調査票表紙には「調査票は無記名であり,統計的に処理されるため,皆様の回答が明らかにされることはありません」と明記されていた。
【結果】
理学療法士のイメージ項目について探索的因子分析を行い,因子負荷量0.50以上,固有値1以上,共通性0.20以上を項目決定因子とした結果,3因子が抽出された。そこで,第1因子は「職務挑戦」,第2因子は「勤務条件」及び第3因子は「理学療法の対象」と命名した。なお,3因子のCronbachα係数は0.75~0.68であり,内的整合性が見出されていた。養成校種類別比較では「職務挑戦」で3校の差を認めなかったが,「勤務条件」ではA専修学校が,「理学療法の対象」ではC大学が他の2校より有意な高値を示した。A専修学校生は勤務先や俸給に関心が高く,C大学生は理学療法の対象者が若年者よりも高齢者となることが多いことを認識していた。一方,職業未決定尺度の下位尺度のうち,職業決定を猶予して当面は就業を考える姿勢が消極的な「猶予」では,C大学が他の2校より有意な高値を示した。また,自らの関心や興味を職業選択に結び付けていこうとする態度が希薄な「安直」では,B短期大学が他の2校より有意な高値を示した。
【考察】
本来,職業決定は青年後期の重要な発達課題である。しかし,昨今の若者気質として,経済的,社会的に自立していなくても自尊(自分の能力や潜在能力の過信)感情は非常に高いことが知られている。本研究の対象者のように,入学間もない学生においても,すでに理学療法士のイメージや職業決定意識に養成校種類別で差を認めたことから,養成校の教育方針とカリキュラム及び校風が青年後期のアイデンティティ確立のために重要な多大な影響を持つことが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果,入学者が考える理学療法士としての将来像と職業決定意識には,養成校の種類により差がみられたことから,各校では理学療法士のイメージと職業意識を培う独自の取組みが必要と考えられた。在学中に,アイデンティティの確立を促し,理学療法士へのイメージの乖離を軽減する事は,理学療法士の質の向上につながると考える。