[0171] 実習指導者会議が実習導入に与える影響
Keywords:実習指導者会議, 臨床実習, 不安
【はじめに,目的】
臨床実習において学生は学内から臨床への環境の変化に適応し自分の能力を発揮することが求められる。しかし,環境に適応することに時間を要してしまい自分の能力を発揮出来ずにいる学生も少なくない。そのため,学生が実習開始後早期に環境適応できるよう,本校では実習指導者会議(以下SV会議)における実習指導者(以下SV)と学生のコミュニケーションを重要視している。具体的には,事務連絡のみではなく,学生の個性を把握していただけるようなテーマを設け30分程度の個別またはグループ面談を行っている。本研究では,それらの試みが臨床実習に与える影響を調査することを目的とした。
【方法】
対象は,本校理学療法学科4年生41名とし,臨床実習後期終了後に前期・後期に関してそれぞれアンケートを実施した。アンケートの内容は(1)SV会議へのSV参加の有無,(2)SV会議前の各実習に対する不安,(3)SV会議直後の各実習に対する不安,(4)実習開始直前の各実習に対する不安,(5)実習中のSVとのコミュニケーション量,(6)SVと信頼関係が築けた時期,(7)実習環境に慣れた時期,(8)実習中自分らしさを出せるようになった時期,(9)前実習(評価実習または臨床実習前期)からの成長度の9項目とし,Numeric Rating Scale(NRS)および多項選択回答形式を用い回答してもらった。得られたデータはSV会議へのSV参加の有無によりSV参加群,SV以外参加群,不参加群の3群に分類し比較検討した。統計学的処理にはマンホイットニーのU検定および多サンプルX2検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,今後の実習指導者会議ならびに臨床実習の発展のために行うものである趣旨を対象者に説明し同意を得た。また,アンケートは無記名とし個人を特定できないよう配慮した上で実施した。
【結果】
アンケートの回収率は臨床実習前期,後期とも97.6%であった。SV参加群,SV以外参加群,不参加群の人数は,臨床実習前期でそれぞれ18名,5名,17名,臨床実習後期でそれぞれ17名,8名,15名であった。実習に対する不安に関して,臨床実習前期ではSV参加群においてSV会議前と比較しSV会議直後に有意な低下が認められた(p<0.05)。しかし,実習直前になると不安は増加しSV会議前と同等の不安状態に戻っていた。SV以外参加群,不参加群ではともに不安の程度に変化はみられなかった。臨床実習後期ではSV参加群,SV以外参加群,不参加群でいずれも不安の程度に変化はみられなかった。また,その他の項目については3群間で有意差はみられなかった。
【考察】
今回の結果より,SV会議でSVと直接コミュニケーションをとることで,学生の実習に対する不安は一時的に軽減することがわかった。しかし,この結果は臨床実習前期のみにみられ,臨床実習後期ではSV会議による不安の軽減は図れなかった。この要因として,SV会議から実習開始までの期間が影響していると考えられる。本研究の対象者に対するSV会議はその年度の4月に開催しており,臨床実習前期は約1か月後に開始されているのに対し,臨床実習後期はSV会議後4か月後の開始となる。そのため,学生は目前に迫った臨床実習前期に対する思いが強く,臨床実習後期を考える余裕がないことが考えられる。また,実習中のSVとのコミュニケーション量,SVと信頼関係が築けた時期,実習環境に慣れた時期,実習中自分らしさを出せるようになった時期,前実習からの成長度の項目では3群間で有意差がみられなかった。これらの要因として,実習直前の不安状態を軽減できなかったことが影響していると考えられる。したがって,今後はSV会議の開催時期や学生の不安要因の分析を行い,円滑な実習導入が行えるよう更なる検討が必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
SV会議においてSVと面談を行うことで,一時的に学生の実習に対する不安が軽減されることが示唆された。今後,学生の不安を軽減し実習をより円滑に進めるための足掛かりとして更なる検討に繋げていきたいと考える。
臨床実習において学生は学内から臨床への環境の変化に適応し自分の能力を発揮することが求められる。しかし,環境に適応することに時間を要してしまい自分の能力を発揮出来ずにいる学生も少なくない。そのため,学生が実習開始後早期に環境適応できるよう,本校では実習指導者会議(以下SV会議)における実習指導者(以下SV)と学生のコミュニケーションを重要視している。具体的には,事務連絡のみではなく,学生の個性を把握していただけるようなテーマを設け30分程度の個別またはグループ面談を行っている。本研究では,それらの試みが臨床実習に与える影響を調査することを目的とした。
【方法】
対象は,本校理学療法学科4年生41名とし,臨床実習後期終了後に前期・後期に関してそれぞれアンケートを実施した。アンケートの内容は(1)SV会議へのSV参加の有無,(2)SV会議前の各実習に対する不安,(3)SV会議直後の各実習に対する不安,(4)実習開始直前の各実習に対する不安,(5)実習中のSVとのコミュニケーション量,(6)SVと信頼関係が築けた時期,(7)実習環境に慣れた時期,(8)実習中自分らしさを出せるようになった時期,(9)前実習(評価実習または臨床実習前期)からの成長度の9項目とし,Numeric Rating Scale(NRS)および多項選択回答形式を用い回答してもらった。得られたデータはSV会議へのSV参加の有無によりSV参加群,SV以外参加群,不参加群の3群に分類し比較検討した。統計学的処理にはマンホイットニーのU検定および多サンプルX2検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,今後の実習指導者会議ならびに臨床実習の発展のために行うものである趣旨を対象者に説明し同意を得た。また,アンケートは無記名とし個人を特定できないよう配慮した上で実施した。
【結果】
アンケートの回収率は臨床実習前期,後期とも97.6%であった。SV参加群,SV以外参加群,不参加群の人数は,臨床実習前期でそれぞれ18名,5名,17名,臨床実習後期でそれぞれ17名,8名,15名であった。実習に対する不安に関して,臨床実習前期ではSV参加群においてSV会議前と比較しSV会議直後に有意な低下が認められた(p<0.05)。しかし,実習直前になると不安は増加しSV会議前と同等の不安状態に戻っていた。SV以外参加群,不参加群ではともに不安の程度に変化はみられなかった。臨床実習後期ではSV参加群,SV以外参加群,不参加群でいずれも不安の程度に変化はみられなかった。また,その他の項目については3群間で有意差はみられなかった。
【考察】
今回の結果より,SV会議でSVと直接コミュニケーションをとることで,学生の実習に対する不安は一時的に軽減することがわかった。しかし,この結果は臨床実習前期のみにみられ,臨床実習後期ではSV会議による不安の軽減は図れなかった。この要因として,SV会議から実習開始までの期間が影響していると考えられる。本研究の対象者に対するSV会議はその年度の4月に開催しており,臨床実習前期は約1か月後に開始されているのに対し,臨床実習後期はSV会議後4か月後の開始となる。そのため,学生は目前に迫った臨床実習前期に対する思いが強く,臨床実習後期を考える余裕がないことが考えられる。また,実習中のSVとのコミュニケーション量,SVと信頼関係が築けた時期,実習環境に慣れた時期,実習中自分らしさを出せるようになった時期,前実習からの成長度の項目では3群間で有意差がみられなかった。これらの要因として,実習直前の不安状態を軽減できなかったことが影響していると考えられる。したがって,今後はSV会議の開催時期や学生の不安要因の分析を行い,円滑な実習導入が行えるよう更なる検討が必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
SV会議においてSVと面談を行うことで,一時的に学生の実習に対する不安が軽減されることが示唆された。今後,学生の不安を軽減し実習をより円滑に進めるための足掛かりとして更なる検討に繋げていきたいと考える。