[0179] ハンドヘルドダイナモメーターを用いた肩関節外転筋力の測定
キーワード:HHD, 肩関節外転筋力, 信頼性
【はじめに,目的】
ハンドヘルドダイナモメーター(以下HHD)は,簡易かつ携帯性に優れた等尺性筋力測定機器であり,筋力を客観的に数値化することができることにより,リハビリテーションを実施する上で患者の問題点・治療効果の把握・臨床研究等,多くの場面で使用されている。しかしその一方で,HHDの従来の使用方法では信頼性が低い事が問題点として挙げられ,信頼性・再現性については数多く検討されている。また,HHDを用いた筋力測定の研究において,体幹の固定により検者内・検者間信頼性が高く得られたという事が報告されている。特に肩関節外転筋力の測定では,体幹の代償が起こりやすい事が予想される。今回我々は,肩関節外転筋力において,測定方法の変化によって検者内・検者間再現性差はあるのか研究をし,若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は,整形外科的疾患のない健常成人10名(男性5名,女性5名)とし,検者2名が測定した。2人の検者は,1人の被験者に対し,2日間連続もしくは同日に筋力測定を行った。同日測定では,施行間に3時間以上の休息を設けた。肩関節外転筋力測定は4種類の肢位でそれぞれ2回実施し,最低30秒間の休息時間を置き実施した。筋力測定機器は,HOGGAN社製MICROFET2を使用した。筋力測定肢位は,肩関節外転90°前腕中間位とし,背もたれのない椅子に座った端坐位(A),Aの肢位で計測側と対側の肩関節90°外転位保持した状態(B),背もたれのある椅子に座った端坐位(C),Cの肢位で計測側と対側の肩関節90°外転位保持した状態(D)とした。C,Dには対側の肩関節にも3秒間の等尺性収縮を同時に加えた。アタッチメントの取り付け位置は,当機器のマニュアルに従い,上腕遠位1/3とした。C,Dの対側肩関節への抵抗も同部位に行った。検討項目として,各肢位で肩関節外転筋力を測定し,2名の検者それぞれの検者内信頼性,検者間信頼性を検討した。統計処理にはR-2.8.1(CRAN freeware)を使用し,検者内・検者間信頼性は級内相関係数(以下,ICC)を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則り行った。被験者には,本研究の主旨と方法に関して十分な説明を行い,承諾を得た後,測定を行った。
【結果】
検者内信頼性に関しては,A肢位で,検者①ICC(1,1):0.959(95%CI:0.856-0.989),検者②(1,1):0.849(95%CI:0.530-0.959),B肢位で,検者①ICC(1.1):0.966(95%CI:0.880-0.991),検者②ICC(1,1):0.874(95%CI:0.595-0.966),C肢位で,ICC(1,1):0.949(95%CI:0.821-0.986),検者②0.749(95%CI:0.297-0.930),D肢位で,検者①ICC(1,1):0.977(95%CI:0.919-0.994),検者②ICC(1,1):0.976(95%CI:0.913-0.993)であった。また,検者間信頼性に関しては,A肢位ICC(2,1):0.855(95%CI:0.516-0.962),B肢位ではICC(2,1):0.783(95%CI:0.103-0.948),C肢位で,ICC(2,1):0.682(95%CI:0.109-0.911),D肢位で,ICC(2,1):0.891(95%CI:0.641-0.971)であった。D肢位は検者内信頼性,検者間信頼性共に最も高値を示した。
【考察】
HDDによる筋力測定は,測定の信頼性と妥当性が必要となる。ICCの評価基準として桑原らは,0.9~は優秀,0.8~は良好,0.7~は普通,0.6~は可能,~0.6は要再考と報告している。今回の結果から,A,B,C,Dの肢位の中で,Dの肢位で測定を行う事が信頼性が高いという結果となった。Dの肢位では対側の肩関節90°外転位等尺性収縮を加える事で,体幹側屈の代償動作を予防し,また,背もたれのある椅子を使用する事で体幹伸展の代償動作を予防した事により,代償動作での筋力のぶれが起こりにくい肢位であるため,より高い信頼性が得られたと考えられる。従って,HHDを用いたDの肢位での肩関節外転筋力の測定は,検者内・検者間ともに高い信頼性があり肩関節外転筋活動をより反映しやすい評価方法であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究よりHHDを用いた検者内・検者間信頼性の高い肩関節外転筋力の評価肢位が示された。肩関節外転筋力評価において,簡便で効率の良い評価方法であり,短時間での測定が可能なため,臨床における理学療法効果の判定に有用な評価方法であると考えられる。
ハンドヘルドダイナモメーター(以下HHD)は,簡易かつ携帯性に優れた等尺性筋力測定機器であり,筋力を客観的に数値化することができることにより,リハビリテーションを実施する上で患者の問題点・治療効果の把握・臨床研究等,多くの場面で使用されている。しかしその一方で,HHDの従来の使用方法では信頼性が低い事が問題点として挙げられ,信頼性・再現性については数多く検討されている。また,HHDを用いた筋力測定の研究において,体幹の固定により検者内・検者間信頼性が高く得られたという事が報告されている。特に肩関節外転筋力の測定では,体幹の代償が起こりやすい事が予想される。今回我々は,肩関節外転筋力において,測定方法の変化によって検者内・検者間再現性差はあるのか研究をし,若干の知見を得たので報告する。
【方法】
対象は,整形外科的疾患のない健常成人10名(男性5名,女性5名)とし,検者2名が測定した。2人の検者は,1人の被験者に対し,2日間連続もしくは同日に筋力測定を行った。同日測定では,施行間に3時間以上の休息を設けた。肩関節外転筋力測定は4種類の肢位でそれぞれ2回実施し,最低30秒間の休息時間を置き実施した。筋力測定機器は,HOGGAN社製MICROFET2を使用した。筋力測定肢位は,肩関節外転90°前腕中間位とし,背もたれのない椅子に座った端坐位(A),Aの肢位で計測側と対側の肩関節90°外転位保持した状態(B),背もたれのある椅子に座った端坐位(C),Cの肢位で計測側と対側の肩関節90°外転位保持した状態(D)とした。C,Dには対側の肩関節にも3秒間の等尺性収縮を同時に加えた。アタッチメントの取り付け位置は,当機器のマニュアルに従い,上腕遠位1/3とした。C,Dの対側肩関節への抵抗も同部位に行った。検討項目として,各肢位で肩関節外転筋力を測定し,2名の検者それぞれの検者内信頼性,検者間信頼性を検討した。統計処理にはR-2.8.1(CRAN freeware)を使用し,検者内・検者間信頼性は級内相関係数(以下,ICC)を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則り行った。被験者には,本研究の主旨と方法に関して十分な説明を行い,承諾を得た後,測定を行った。
【結果】
検者内信頼性に関しては,A肢位で,検者①ICC(1,1):0.959(95%CI:0.856-0.989),検者②(1,1):0.849(95%CI:0.530-0.959),B肢位で,検者①ICC(1.1):0.966(95%CI:0.880-0.991),検者②ICC(1,1):0.874(95%CI:0.595-0.966),C肢位で,ICC(1,1):0.949(95%CI:0.821-0.986),検者②0.749(95%CI:0.297-0.930),D肢位で,検者①ICC(1,1):0.977(95%CI:0.919-0.994),検者②ICC(1,1):0.976(95%CI:0.913-0.993)であった。また,検者間信頼性に関しては,A肢位ICC(2,1):0.855(95%CI:0.516-0.962),B肢位ではICC(2,1):0.783(95%CI:0.103-0.948),C肢位で,ICC(2,1):0.682(95%CI:0.109-0.911),D肢位で,ICC(2,1):0.891(95%CI:0.641-0.971)であった。D肢位は検者内信頼性,検者間信頼性共に最も高値を示した。
【考察】
HDDによる筋力測定は,測定の信頼性と妥当性が必要となる。ICCの評価基準として桑原らは,0.9~は優秀,0.8~は良好,0.7~は普通,0.6~は可能,~0.6は要再考と報告している。今回の結果から,A,B,C,Dの肢位の中で,Dの肢位で測定を行う事が信頼性が高いという結果となった。Dの肢位では対側の肩関節90°外転位等尺性収縮を加える事で,体幹側屈の代償動作を予防し,また,背もたれのある椅子を使用する事で体幹伸展の代償動作を予防した事により,代償動作での筋力のぶれが起こりにくい肢位であるため,より高い信頼性が得られたと考えられる。従って,HHDを用いたDの肢位での肩関節外転筋力の測定は,検者内・検者間ともに高い信頼性があり肩関節外転筋活動をより反映しやすい評価方法であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究よりHHDを用いた検者内・検者間信頼性の高い肩関節外転筋力の評価肢位が示された。肩関節外転筋力評価において,簡便で効率の良い評価方法であり,短時間での測定が可能なため,臨床における理学療法効果の判定に有用な評価方法であると考えられる。