[0208] COPD患者におけるBreath-holding testによる新たな呼吸困難感評価法の開発
Keywords:breath-holding, 呼吸困難感, COPD
【はじめに,目的】
呼吸困難感は主要な呼吸器症状,不快な呼吸感覚であり,他の感覚と同様に外的刺激が感覚受容器を刺激することによって発生する。呼吸困難感に関与する受容器には迷走神経受容器,化学受容器,胸壁(筋・腱)受容器,上気道受容器や呼吸運動出力を感知する中枢受容器(central corollary discharge)があり,様々な経路で単一ではなく多様な呼吸困難感を引き起こす。呼吸困難感を誘発するツールとして,呼吸抵抗負荷,運動負荷および息止め(breath-holding test)などがあるが,その中でも運動誘発性呼吸困難感はCOPD患者の生命予後の独立した予測因子であり,呼吸困難感の評価ツールとして臨床的に広く用いられている。それに対して,breath-holding testは化学受容器(二酸化炭素負荷)とcentral corollary dischargeを刺激し,最も強力に呼吸困難感を引き起こすといわれているが,臨床応用には至っていない。そこで,本研究はCOPD患者において,呼吸困難評価ツールとして確立している運動誘発性呼吸困難感と,breath-holding誘発性呼吸困難感の臨床的パラメーターとの関連性を比較し,breath-holding誘発性呼吸困難感の臨床的ツールとしての有用性を検討することとした。
【方法】
対象は安定期のCOPD患者29例(年齢:75.2±8.6歳,%FEV1:39.9±18.2)とした。breath-holding testは1分間の安静換気後に,機能的残気量レベルにて最大限長く息止めを実施した。breath-holding test終了直後の呼吸困難感を修正Borg Saleにて測定し,breath-holding誘発性呼吸困難感とした。また,運動誘発性呼吸困難感として,6MWT終了時の呼吸困難感を修正Borg scaleにて測定した。臨床的パラメーターは肺機能,筋力(握力,膝伸展筋力),6MWD,ISWT,SGRQ,HADおよびNRADLとし,breath-holding誘発性呼吸困難感および運動誘発性呼吸困難感と各パラメーターをspearmanの順位相関係数にて解析した。危険率5%未満を有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づいて,倫理的配慮を行い実施した。全ての対象者に本研究の目的と内容を十分に説明し,書面で同意を得た。
【結果】
breath-holding誘発性呼吸困難感は5.8±1.7,運動誘発性呼吸困難感は4.0±2.0であった。単相関分析においてbreath-holding誘発性呼吸困難感と有意な相関を認めた項目は,6MWD(r:-0.427,p:0.023),ISWT(r:-0.517,p:0.028),SGRQ symptom(r:0.423,p:0.05),activity(r:0.608,p:0.003),impact(r:0.506,p:0.016),toal(r:0.612,p:0.002),NRADL(r:-0.453,p:0.034)であった。運動誘発性呼吸困難感と有意な相関を認めた項目は6MWD(r:-0.387,p:0.042),SGRQ activity(r:0.557,p:0.007)のみであった。その他の項目に関しては有意な相関関係は認められなかった。
【考察】
本研究はCOPD患者を対象とし,breath-holding誘発性呼吸困難感および運動誘発性呼吸困難感と臨床的パラメーターとの関連性を検討した。その結果,breath-holding誘発性呼吸困難感は,6MWD,ISWT,SGRQ全項目およびNRADLとの関連性が認められた。それに対して,運動誘発性呼吸困難感は,6MWDおよびSGRQ activityとのみ関連性が認められ,関連性があった項目に関してもbreath-holding誘発性呼吸困難感と比較して関連性は弱かった。この結果はbreath-holding誘発性呼吸困難感は運動誘発性呼吸困難感よりも多くの臨床的パラメーターをより強く反映することを示している。これらのことより,breath-holding誘発性呼吸困難感はCOPD患者の身体的特性をより強く反映する,新しい呼吸困難感の評価ツールとなりうる事が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
リハビリテーションにおいてCOPD患者の呼吸困難感を評価することは,病態を把握するために非常に重要である。本研究は簡便に実施可能なbreath-holdingを用いた呼吸困難感評価方法が,従来から使われてきた運動誘発性呼吸困難感と比較して,COPD患者の身体特性をより強く反映することを示した。これらのことより,breath-holding誘発性呼吸困難感の理学療法における呼吸困難感評価ツールとしての有用性が示唆された。
呼吸困難感は主要な呼吸器症状,不快な呼吸感覚であり,他の感覚と同様に外的刺激が感覚受容器を刺激することによって発生する。呼吸困難感に関与する受容器には迷走神経受容器,化学受容器,胸壁(筋・腱)受容器,上気道受容器や呼吸運動出力を感知する中枢受容器(central corollary discharge)があり,様々な経路で単一ではなく多様な呼吸困難感を引き起こす。呼吸困難感を誘発するツールとして,呼吸抵抗負荷,運動負荷および息止め(breath-holding test)などがあるが,その中でも運動誘発性呼吸困難感はCOPD患者の生命予後の独立した予測因子であり,呼吸困難感の評価ツールとして臨床的に広く用いられている。それに対して,breath-holding testは化学受容器(二酸化炭素負荷)とcentral corollary dischargeを刺激し,最も強力に呼吸困難感を引き起こすといわれているが,臨床応用には至っていない。そこで,本研究はCOPD患者において,呼吸困難評価ツールとして確立している運動誘発性呼吸困難感と,breath-holding誘発性呼吸困難感の臨床的パラメーターとの関連性を比較し,breath-holding誘発性呼吸困難感の臨床的ツールとしての有用性を検討することとした。
【方法】
対象は安定期のCOPD患者29例(年齢:75.2±8.6歳,%FEV1:39.9±18.2)とした。breath-holding testは1分間の安静換気後に,機能的残気量レベルにて最大限長く息止めを実施した。breath-holding test終了直後の呼吸困難感を修正Borg Saleにて測定し,breath-holding誘発性呼吸困難感とした。また,運動誘発性呼吸困難感として,6MWT終了時の呼吸困難感を修正Borg scaleにて測定した。臨床的パラメーターは肺機能,筋力(握力,膝伸展筋力),6MWD,ISWT,SGRQ,HADおよびNRADLとし,breath-holding誘発性呼吸困難感および運動誘発性呼吸困難感と各パラメーターをspearmanの順位相関係数にて解析した。危険率5%未満を有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づいて,倫理的配慮を行い実施した。全ての対象者に本研究の目的と内容を十分に説明し,書面で同意を得た。
【結果】
breath-holding誘発性呼吸困難感は5.8±1.7,運動誘発性呼吸困難感は4.0±2.0であった。単相関分析においてbreath-holding誘発性呼吸困難感と有意な相関を認めた項目は,6MWD(r:-0.427,p:0.023),ISWT(r:-0.517,p:0.028),SGRQ symptom(r:0.423,p:0.05),activity(r:0.608,p:0.003),impact(r:0.506,p:0.016),toal(r:0.612,p:0.002),NRADL(r:-0.453,p:0.034)であった。運動誘発性呼吸困難感と有意な相関を認めた項目は6MWD(r:-0.387,p:0.042),SGRQ activity(r:0.557,p:0.007)のみであった。その他の項目に関しては有意な相関関係は認められなかった。
【考察】
本研究はCOPD患者を対象とし,breath-holding誘発性呼吸困難感および運動誘発性呼吸困難感と臨床的パラメーターとの関連性を検討した。その結果,breath-holding誘発性呼吸困難感は,6MWD,ISWT,SGRQ全項目およびNRADLとの関連性が認められた。それに対して,運動誘発性呼吸困難感は,6MWDおよびSGRQ activityとのみ関連性が認められ,関連性があった項目に関してもbreath-holding誘発性呼吸困難感と比較して関連性は弱かった。この結果はbreath-holding誘発性呼吸困難感は運動誘発性呼吸困難感よりも多くの臨床的パラメーターをより強く反映することを示している。これらのことより,breath-holding誘発性呼吸困難感はCOPD患者の身体的特性をより強く反映する,新しい呼吸困難感の評価ツールとなりうる事が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
リハビリテーションにおいてCOPD患者の呼吸困難感を評価することは,病態を把握するために非常に重要である。本研究は簡便に実施可能なbreath-holdingを用いた呼吸困難感評価方法が,従来から使われてきた運動誘発性呼吸困難感と比較して,COPD患者の身体特性をより強く反映することを示した。これらのことより,breath-holding誘発性呼吸困難感の理学療法における呼吸困難感評価ツールとしての有用性が示唆された。