第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 教育・管理理学療法 口述

臨床教育系3

2014年5月30日(金) 13:30 〜 14:20 第8会場 (4F 411+412)

座長:加藤研太郎(上尾中央医療専門学校教育部理学療法学科)

教育・管理 口述

[0219] 当院における新人教育改善のための取り組み

小串健志, 藤田聡行 (医療法人社団心和会新八千代病院リハビリテーション科)

キーワード:臨床教育, 新人教育, 自己効力感

【はじめに,目的】
先の研究で,新人療法士の指導に関わった療法士に対するアンケートとグループディスカッションをとることにより,新人教育において新人療法士の業務到達度を図る手法では,指導者と新人療法士相互に課題消化型の志向性に陥ることが明らかとなった。そこで,回復期リハビリテーション病棟の業務と理学療法専門技術について,経験した事柄を累積させ,新人療法士の育成の過程を可視化させたシート(OJTシート)を考案した。本研究の目的は,OJTシートの半年間の運用から指導者と新人療法士間への効果を検討することである。
【方法】
当院のリハビリテーション診療チーム(以下,ユニット)は,診療及び業務の統率を行っているユニットリーダーを中心に複数の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の8~9人で構成される。平成25年度新卒の新人療法士12名に対して,OJTシートを入職時その使用方法を説明し,所属するユニットに配布していることを伝えた。ユニットリーダーに対しては,OJTシートの使用方法を説明し配布した。
OJTシートは,当院回復期リハビリテーション病棟の業務と理学療法専門領域を6領域(①入院評価,②患者・家族等のneedsの把握,③検査測定,情報収集にて問題点の抽出,④個別的な治療計画の説明・実施,⑤経過項目,⑥ゴールの確認)に分けた。さらにそれぞれの領域に項目を設け,①入院評価6項目,②患者・家族等のneedsの把握3項目,③検査測定,情報収集にて問題点の抽出7項目,④個別的な治療計画の説明・実施4項目,⑤経過項目7項目,⑥ゴールの確認2項目の29項目に細分化した。その項目に対し,指導実施時に体験し指導を要する段階を4つ(A見た・説明を受けた,B一緒に行う,C最終確認を受ける,D一人で行える)に分けた。新人療法士を指導者が指導する毎に両者確認の上でスタンプ印を押していき,その段階が可能となった時点でユニットリーダーが見極め印を押す事とした。OJTシートの確認は,月1度回収により実施した。返却の際,教育を統括するチーフにより適宜フィードバックを行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言の趣旨に沿い,OJTシートは無記名にて確認したため対象者に対して本研究の目的と個人の特定がされないことを明記した書類を用いて説明をした。データの集積は,部署長の同意を得て対象者個人に対して同意書を作成せず,OJTシートの回収をもって同意を得たものとした。
【結果】
個々の結果から見極め印を押すまでにかかったスタンプ印数の平均は,①入院評価(A:2.24個,B:2.36個,C:1.60個,D:1.23個),②患者・家族等のneedsの把握(A:1.88個,B:1.94個,C:2.00個,D:1.11個)③検査測定,情報収集にて問題点の抽出(A:2.71個,B:3.60個,C:2.45個,D:1.23個),④個別的な治療計画の説明・実施(A:2.32個,B:3.45個,C:3.71個,D:1.67個),⑤経過項目(A:2.32個,B:3.45個,C:3.71個,D:1.67個),⑥ゴールの確認(A:2.18個,B:3.00個,C:1.00個,D:1.00個)であった。全体の平均は2.36個であった。
指導頻度が高かった項目として全体の平均を超えた領域として,③検査測定,情報収集にて問題点の抽出(平均個数:2.73)と④個別的な治療計画の説明・実施(平均個数:2.81)であり,理学療法専門領域の内容の項目となった。
スタンプ印の量は,⑤経過項目,⑥ゴールの確認といった治療介入が進んでいく段階において伸びず,時期と共に段階的に移り変わっていく傾向を見た。ユニットリーダーの見極め印についても,大凡,半年間の到達度に照らした形で押印が重ねられた。【考察】
OJTシートの導入により,先攻研究で回復期リハビリテーション病棟の業務に偏っていた指導内容が理学療法専門領域への指導内容にシフトした。しかし,回復期リハビリテーション病棟の業務と理学療法専門領域の両面ともにC最終確認を受ける,D一人で行なえる項目や⑤経過項目,⑥ゴールの確認の領域の平均値が低い結果となり,指導者側の自信のなさを裏付ける結果となった。
OJTシートを用いて,指導者と新人療法士が相互に段階を確認し合うことが新人療法士の自己効力感を高める作用にしたと思われる。指導者の一部には経験値の蓄積というスタンプ印が,指導者の見極め印に置き換わる評価シートとして利用されてしまった例も残存するが,その段階を達成する為に指導方法を工夫し,教育の効果を得る機会に繋がった例が多くみられた。スタンプ印の数が多く新人療法士との確認頻度が多い程,新人療法士と指導者との進捗度の乖離が少ないと考えた。
【理学療法学研究としての意義】
新人療法士を教育するプログラムには,新人の自己効力感をより高められるような工夫が有効なシステム構築を検討する一つとなり得る。