[0229] 成人脊柱変形患者における歩行動作時の腰部筋血液酸素動態とQOLの関係
Keywords:成人脊柱変形患者, 近赤外線分光法(NIRS), QOL
【はじめに,目的】
成人脊柱変形患者の症状は歩行障害,腰背部痛,整容心理,内臓症状など多彩な愁訴を認める。その中でも腰痛性間欠跛行などの歩行障害の原因としては,脊柱起立筋の構造破綻,筋線維損傷による筋内圧上昇,阻血,酸素効率の低下などの機序が考えられる。我々は以前先行研究で,成人脊柱変形患者において歩行動作が腰部組織血液酸素動態に及ぼす影響を,近赤外分光法(NIRS)を用いて検討した。その結果,総血液量を反映している総ヘモグロビンには差を認めないが,組織酸素飽和度(StO2)は低下することが明らかとなった。ところで,歩行時に生じる腰部の筋障害がどのようなQuality of Life(QOL)と関係しているのかは治療や訓練を行う際に重要である。本研究の目的は,成人脊柱変形患者における歩行動作時の腰部筋血液酸素動態とQOLの関係を明らかにすることである。
【方法】
対象は2012年12月から2013年11月に当院整形外科にて手術予定の成人脊柱変形患者15名(女性13名,男性2名,平均年齢69.0歳,身長149.5cm,体重53.6kg,BMI23.9kg/m2)である。腰部筋血液酸素動態の測定は,NIRSによるレーザー組織血液酸素モニター(オメガウェーブ社製BOM-L1TRW)を用いて術前におこなった。測定部位は第4腰椎棘突起より3cm左外側,深部2から4cmの脊柱起立筋とした。座位2分,立位2分,トレッドミル歩行4分(歩行前半,歩行後半)(時速1km/h)を連続して行い,座位での値の平均値を100%としStO2低下率を求めた。評価項目は,腰部筋血液酸素動態としてStO2低下率,健康関連QOLとしてScoliosis Research Society Instrument(SRS-22)(Function,Pain,Self-image,Mental health)とした。統計学的解析はSPSS 17.0 Jにて,StO2低下率の推移の検討にWilcoxonの順位和検定,歩行動作時のStO2低下率と健康関連QOLの各ドメインをSpearmanの順位相関係数の検定を用いて検討し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当大学医の倫理委員会の承認を得て,対象者に対して本研究の趣旨及び目的を説明し文書にて同意を得た。
【結果】
成人脊柱変形患者において,座位から歩行によってStO2は有意に低下した(座位100% vs歩行前半97.1%)(座位100% vs歩行後半96.7%)(立位98.8% vs歩行前半97.1%)(立位98.8% vs歩行後半96.7%)(p<0.05)。また,歩行動作時のStO2低下率とSRS-22のドメインで有意な相関を示したのは,Function(r=-0.52,p<0.05),Mental health(r=-0.52,p<0.05)であった。その他のPain(p<0.62),Self-image(p<0.57)に相関は認めなかった。
【考察】
腰痛患者に対するNIRSを用いた先行研究では,運動中において酸素有効利用が出来ていない,また腰背筋における血液循環障害と酸素消費率の低下を認めると報告されている。本研究により成人脊柱変形患者においても歩行時に脊柱起立筋のStO2低下したことから,酸素消費率の低下による歩行障害が生じ,身体活動に制限を与えている可能性が考えられた。また,このような筋性症状による歩行などの身体活動制限は心理的にも負荷となっていることが推察された。
【理学療法学研究としての意義】
成人脊柱変形患者において腰部筋血液酸素動態と健康関連QOLの身体活動・心理的障害は関係している可能性がある。
成人脊柱変形患者の症状は歩行障害,腰背部痛,整容心理,内臓症状など多彩な愁訴を認める。その中でも腰痛性間欠跛行などの歩行障害の原因としては,脊柱起立筋の構造破綻,筋線維損傷による筋内圧上昇,阻血,酸素効率の低下などの機序が考えられる。我々は以前先行研究で,成人脊柱変形患者において歩行動作が腰部組織血液酸素動態に及ぼす影響を,近赤外分光法(NIRS)を用いて検討した。その結果,総血液量を反映している総ヘモグロビンには差を認めないが,組織酸素飽和度(StO2)は低下することが明らかとなった。ところで,歩行時に生じる腰部の筋障害がどのようなQuality of Life(QOL)と関係しているのかは治療や訓練を行う際に重要である。本研究の目的は,成人脊柱変形患者における歩行動作時の腰部筋血液酸素動態とQOLの関係を明らかにすることである。
【方法】
対象は2012年12月から2013年11月に当院整形外科にて手術予定の成人脊柱変形患者15名(女性13名,男性2名,平均年齢69.0歳,身長149.5cm,体重53.6kg,BMI23.9kg/m2)である。腰部筋血液酸素動態の測定は,NIRSによるレーザー組織血液酸素モニター(オメガウェーブ社製BOM-L1TRW)を用いて術前におこなった。測定部位は第4腰椎棘突起より3cm左外側,深部2から4cmの脊柱起立筋とした。座位2分,立位2分,トレッドミル歩行4分(歩行前半,歩行後半)(時速1km/h)を連続して行い,座位での値の平均値を100%としStO2低下率を求めた。評価項目は,腰部筋血液酸素動態としてStO2低下率,健康関連QOLとしてScoliosis Research Society Instrument(SRS-22)(Function,Pain,Self-image,Mental health)とした。統計学的解析はSPSS 17.0 Jにて,StO2低下率の推移の検討にWilcoxonの順位和検定,歩行動作時のStO2低下率と健康関連QOLの各ドメインをSpearmanの順位相関係数の検定を用いて検討し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当大学医の倫理委員会の承認を得て,対象者に対して本研究の趣旨及び目的を説明し文書にて同意を得た。
【結果】
成人脊柱変形患者において,座位から歩行によってStO2は有意に低下した(座位100% vs歩行前半97.1%)(座位100% vs歩行後半96.7%)(立位98.8% vs歩行前半97.1%)(立位98.8% vs歩行後半96.7%)(p<0.05)。また,歩行動作時のStO2低下率とSRS-22のドメインで有意な相関を示したのは,Function(r=-0.52,p<0.05),Mental health(r=-0.52,p<0.05)であった。その他のPain(p<0.62),Self-image(p<0.57)に相関は認めなかった。
【考察】
腰痛患者に対するNIRSを用いた先行研究では,運動中において酸素有効利用が出来ていない,また腰背筋における血液循環障害と酸素消費率の低下を認めると報告されている。本研究により成人脊柱変形患者においても歩行時に脊柱起立筋のStO2低下したことから,酸素消費率の低下による歩行障害が生じ,身体活動に制限を与えている可能性が考えられた。また,このような筋性症状による歩行などの身体活動制限は心理的にも負荷となっていることが推察された。
【理学療法学研究としての意義】
成人脊柱変形患者において腰部筋血液酸素動態と健康関連QOLの身体活動・心理的障害は関係している可能性がある。