第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

健康増進・予防5

Fri. May 30, 2014 1:30 PM - 2:20 PM ポスター会場 (生活環境支援)

座長:齋藤圭介(吉備国際大学保健医療福祉学部理学療法学科)

生活環境支援 ポスター

[0256] 当院におけるノルディックウォークが脳血管疾患患者の姿勢変化に及ぼす影響について

藤本瑛司, 大西弘展, 鬼塚北斗, 川内基裕 (一般社団法人巨樹の会小金井リハビリテーション病院)

Keywords:ノルディックウォーク, 身長, 姿勢

【はじめに,目的】
ノルディックウォーク(以下NW)とはスキートレーニングとして1997年にフィンランドで始まり,2本のノルディックポール(以下NP)を使って歩行運動を補助し,関節や脊椎に負担が少なく運動効果の高い有酸素運動とであるということから,近年では様々な分野から注目されている。当院では理学療法士がNW指導員の資格を取得し,リハビリの一環として活用している。
NWの効果の一つとして,姿勢改善効果が挙げられ,臨床においてもその効果を実感している。この効果に関して,一般的にNPの高さは身長×0.68cmで設定され,一本杖よりも高い位置での把持となる。この事により,相対的に姿勢が伸展位を保持しやすくなり,脊柱アライメントへの影響があるのではないかと考える。しかし,NWによる姿勢への影響を調べた文献は散見されていない。そこで今回,NW前後の身長変化を測定することで,NWの姿勢改善に及ぼす影響を検証した。
また,これまでに本研究と同様の方法で,健常者30名を対象としたNW施行前後の身長変化を検証し,健常者において身長増加効果があることを報告した。そのため,姿勢不良を呈しやすい脳血管疾患患者様に対してNWを行なうことにより,姿勢改善効果を期待出来るのではないかと考え,当院入院中の脳血管疾患を有する患者様のNW施行前後による身長変化を検討した。【方法】
1.対象
2013年9月~10月の間に当院に入院されていた脳血管疾患患者10名(平均年齢75歳±5歳,男性5名,女性5名)を対象とした。対象の動作能力として,5分以上のNWを見守り又は自立で可能な者とした。また,整形疾患の既往が無く,指示理解が良好な者を対象とした。
2.歩行スタイル
NWではポールを垂直に立てるJapanese style(以下Js)と,斜め後方につくEurope style(以下Es)がある。Jsの特徴としては運動強度が低く,支持基底面が前方に安定して位置しているので安定した運動が可能である為,高齢者で用いられることが多い。Esでは運動強度が高くスピードが早くなる為,アスリート等が使用していることが多い。当院ではJsを用いており,本研究においてもJsを用いることとし,NW指導員が対象に対し歩行方法の指導を行った。
3.測定方法
測定方法として,NW前に裸足にて身長を測定し,その後5分間連続してNWを行う。NW施行期間は5日間とし,6日目は身長測定のみ実施した。また,測定誤差防止の為,6日間連続して同時刻,同測定者で行った。身長計上での姿勢に差異が出ない様,測定者の口頭指示を統一した。
4.分析
1日目のNW前と6日目の身長を比較した。また,統計処理はウィルコクソンの符号順位検定を用い,p<0.05を有意差ありとした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には,本研究の主旨と倫理的配慮について口頭及び,書面にて十分に説明し,同意を得た上で本研究を行った。
【結果】
1日目のNW前の身長は平均158.64cmであり,6日目の身長は平均159.18cmであった。1日目のNW前と6日目との各対象者の身長変化において有意な増加がみられた。(p<0.05)
【考察】
NWを行なうことにより,脳血管疾患患者に身長の増加を認めた要因として,NWの特徴である胸を張るという事や,左右対称の動作を行うことで,NPが無い状態においても良姿勢が維持され易くなった可能性が考えられる。また,身体がNPを地面に突く事によって得られる突き上げ作用により,体幹の伸展モーメントを助長させ,身長に変化を起こす可能性が考えられる。先行研究において矢野らはNWを行なうことによりバイオメカニクス的に姿勢が改善する可能性があると述べており,本研究においてもその効果が示唆されたと考えられる。
しかし,今回の研究では身体のどこの部位がNW後に影響を与えているかを特定するのが困難であった。今後の展望として,NWによる姿勢改善の部位を特定することや,測定期間・対象者数を増加さることにより,NWによる姿勢改善効果を検討していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
今回の研究でNWが姿勢改善効果に関与していることが示唆された。今後もNWのエビデンスや可能性を検討し,患者様に合ったより良い移動手段の一つとして普及させていきたい。