[0257] 要支援・要介護高齢者における世帯構造と生活機能との関連
キーワード:高齢者, 世帯構成, 生活機能
【はじめに,目的】
平成24年の国民生活基礎調査によると,高齢者のいる世帯は全世帯の43.3%を占めている。世帯構造別でみると,高齢夫婦のみの世帯(以後,夫婦世帯)が30.3%で最も多く,次いで独居世帯が23.3%であり,二つを合わせると全体の半数を超える状況にある。
赤嶺らは,世帯構成別での日常生活活動能力の違いを調査した結果,世帯間に有意差は認められなかったと報告している。この報告は独居とそれ以外の世帯での比較であるが,独居以外でも夫婦世帯や子供との同居世帯(以後,同居世帯)によって必要とされる生活機能は変わることが考えられる。
そこで本研究では,通所介護サービスを利用している高齢者を独居世帯と夫婦世帯,同居世帯の3群に分け,世帯構造とADL,IADLとの関連を調査し,夫婦世帯,独居世帯高齢者に対する効果的なサービス提供へ繋げていくこととした。
【方法】
対象は,通所介護サービスを利用している高齢者3240名(男性936名,女性2304名,年齢83.0±6.7歳)であり,世帯構成により独居群835名(男性178名,女性657名,年齢82.2±6.7歳),夫婦群489名(男性290名,女性199名,年齢80.0±6.2歳),同居群1916名(男性468名,女性1448名,年齢84.1±6.5歳)に分けた。調査項目は,年齢,性別,要介護度に加えADLの指標としてFunctional Independence Measure(FIM)を測定し,セルフケア,排泄コントロール,移乗,移動,コミュニケーション,社会的認知の大項目にカテゴリー化した。IADLの指標として国立長寿医療研究センターで開発されたNCGG-ADLスケールを使用し13項目の合計点を算出した。
世帯構成間の比較について,FIM大項目,NCGG-ADLスケールはKruskal-Wallis検定,年齢は一元配置分散分析,性別,要介護度はχ2検定を用い,有意差を認めた場合は多重比較検定としてGames-Howell法を用いた。さらに,独居生活へ影響を与える要因を調べるため,多項ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言に沿って本研究の主旨および目的の説明を行い,同意を得た。なお本研究は国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。
【結果】
全ての調査項目において測定値に差があることが認められたため,多重比較検定を行なった。FIM大項目すべてにおいて独居群が夫婦群,同居群に比べ有意に高い点数を示し,セルフケアが独居群38.7±6.0点,夫婦群36.6±7.8点,同居群37.0±7.5点,排泄コントロールが独居群13.3±2.0点,夫婦群12.8±2.6点,同居群12.7±2.6点,移乗が独居群18.4±3.3点,夫婦群17.4±4.2点,同居群17.5±4.0点,移動が独居群11.3±2.8点,夫婦群10.6±3.3点,同居群10.6±3.2点,コミュニケーションが独居群12.8±2.2点,夫婦群12.2±2.7点,同居群12.2±2.7点,社会的認知が独居群18.1±3.9点,夫婦群17.0±4.6点,同居群17.0±4.5点であった。NCGG-ADLスケール合計点は,独居群が8.63±3.95点,夫婦群が6.41±4.45点,同居群が5.40±4.31点となり,独居群が夫婦群,同居群に比べ有意に高く,夫婦群は同居群に比べ有意に高い点数を示した。
多項ロジスティック回帰分析は,移乗と移動,コミュニケーションと社会的交流との間に0.8以上の相関係数が認められたため,多重共線性に配慮し,移乗とコミュニケーションは除外した。その結果,独居群を基準とした場合の夫婦群のオッズ比は,IADL合計点が有意であった(オッズ比0.89,95%信頼区間0.86-0.92)。同居群のオッズ比は,排泄コントロール(オッズ比0.92,95%信頼区間0.86-0.98)とIADL合計得点(オッズ比0.84,95%信頼区間0.82-0.86)が有意であった。
【考察】
独居群は,夫婦群や同居群と比較しすべてのFIM大項目とIADLが有意に高かったことから,独居生活高齢者のADL各項目やIADL評価の重要性が示唆される。IADLに関しては,夫婦群と同居群の間でも有意差があり,夫婦群の方が有意に高かった。これは,同居者がいても夫婦群のように主介護者が高齢であると介護力が低下することから,同居群に比べ高いIADL能力を必要とすることが示唆された。多項ロジスティック回帰分析の結果,独居生活に関連する因子として排泄コントロールとIADLが抽出された。排泄コントロールは,失敗数と介護量の2つの視点で評価されるため,独居生活を支援していくためには,IADLだけでなく排泄失敗の有無や失敗後の後始末についても評価していくことが重要であると考える。今後は,縦断調査により独居生活,夫婦のみの生活継続に関する予測因子を検討していく。
【理学療法学研究としての意義】
本研究において世帯構造と生活機能との関連が明らかになったことは,高齢者が在宅生活を継続する為の方策を探る上での一助となる。
平成24年の国民生活基礎調査によると,高齢者のいる世帯は全世帯の43.3%を占めている。世帯構造別でみると,高齢夫婦のみの世帯(以後,夫婦世帯)が30.3%で最も多く,次いで独居世帯が23.3%であり,二つを合わせると全体の半数を超える状況にある。
赤嶺らは,世帯構成別での日常生活活動能力の違いを調査した結果,世帯間に有意差は認められなかったと報告している。この報告は独居とそれ以外の世帯での比較であるが,独居以外でも夫婦世帯や子供との同居世帯(以後,同居世帯)によって必要とされる生活機能は変わることが考えられる。
そこで本研究では,通所介護サービスを利用している高齢者を独居世帯と夫婦世帯,同居世帯の3群に分け,世帯構造とADL,IADLとの関連を調査し,夫婦世帯,独居世帯高齢者に対する効果的なサービス提供へ繋げていくこととした。
【方法】
対象は,通所介護サービスを利用している高齢者3240名(男性936名,女性2304名,年齢83.0±6.7歳)であり,世帯構成により独居群835名(男性178名,女性657名,年齢82.2±6.7歳),夫婦群489名(男性290名,女性199名,年齢80.0±6.2歳),同居群1916名(男性468名,女性1448名,年齢84.1±6.5歳)に分けた。調査項目は,年齢,性別,要介護度に加えADLの指標としてFunctional Independence Measure(FIM)を測定し,セルフケア,排泄コントロール,移乗,移動,コミュニケーション,社会的認知の大項目にカテゴリー化した。IADLの指標として国立長寿医療研究センターで開発されたNCGG-ADLスケールを使用し13項目の合計点を算出した。
世帯構成間の比較について,FIM大項目,NCGG-ADLスケールはKruskal-Wallis検定,年齢は一元配置分散分析,性別,要介護度はχ2検定を用い,有意差を認めた場合は多重比較検定としてGames-Howell法を用いた。さらに,独居生活へ影響を与える要因を調べるため,多項ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言に沿って本研究の主旨および目的の説明を行い,同意を得た。なお本研究は国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。
【結果】
全ての調査項目において測定値に差があることが認められたため,多重比較検定を行なった。FIM大項目すべてにおいて独居群が夫婦群,同居群に比べ有意に高い点数を示し,セルフケアが独居群38.7±6.0点,夫婦群36.6±7.8点,同居群37.0±7.5点,排泄コントロールが独居群13.3±2.0点,夫婦群12.8±2.6点,同居群12.7±2.6点,移乗が独居群18.4±3.3点,夫婦群17.4±4.2点,同居群17.5±4.0点,移動が独居群11.3±2.8点,夫婦群10.6±3.3点,同居群10.6±3.2点,コミュニケーションが独居群12.8±2.2点,夫婦群12.2±2.7点,同居群12.2±2.7点,社会的認知が独居群18.1±3.9点,夫婦群17.0±4.6点,同居群17.0±4.5点であった。NCGG-ADLスケール合計点は,独居群が8.63±3.95点,夫婦群が6.41±4.45点,同居群が5.40±4.31点となり,独居群が夫婦群,同居群に比べ有意に高く,夫婦群は同居群に比べ有意に高い点数を示した。
多項ロジスティック回帰分析は,移乗と移動,コミュニケーションと社会的交流との間に0.8以上の相関係数が認められたため,多重共線性に配慮し,移乗とコミュニケーションは除外した。その結果,独居群を基準とした場合の夫婦群のオッズ比は,IADL合計点が有意であった(オッズ比0.89,95%信頼区間0.86-0.92)。同居群のオッズ比は,排泄コントロール(オッズ比0.92,95%信頼区間0.86-0.98)とIADL合計得点(オッズ比0.84,95%信頼区間0.82-0.86)が有意であった。
【考察】
独居群は,夫婦群や同居群と比較しすべてのFIM大項目とIADLが有意に高かったことから,独居生活高齢者のADL各項目やIADL評価の重要性が示唆される。IADLに関しては,夫婦群と同居群の間でも有意差があり,夫婦群の方が有意に高かった。これは,同居者がいても夫婦群のように主介護者が高齢であると介護力が低下することから,同居群に比べ高いIADL能力を必要とすることが示唆された。多項ロジスティック回帰分析の結果,独居生活に関連する因子として排泄コントロールとIADLが抽出された。排泄コントロールは,失敗数と介護量の2つの視点で評価されるため,独居生活を支援していくためには,IADLだけでなく排泄失敗の有無や失敗後の後始末についても評価していくことが重要であると考える。今後は,縦断調査により独居生活,夫婦のみの生活継続に関する予測因子を検討していく。
【理学療法学研究としての意義】
本研究において世帯構造と生活機能との関連が明らかになったことは,高齢者が在宅生活を継続する為の方策を探る上での一助となる。