第49回日本理学療法学術大会

講演情報

発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

骨・関節5

2014年5月30日(金) 13:30 〜 14:20 ポスター会場 (運動器)

座長:関誠(帝京大学福岡医療技術学部理学療法学科)

運動器 ポスター

[0275] 肘頭裂離骨折を伴った上腕三頭筋腱皮下断裂の1例

風間裕孝, 湯本正樹, 阿部純子, 松平兼一 (富永草野クリニックリハビリテーション科)

キーワード:肘頭裂離骨折, 超音波動態観察, 運動療法

【はじめに】
外傷性肘疾患の運動療法において好成績を得るには,拘縮要因である関節筋に対するアプローチが以前より認識されている。更に近年,超音波画像診断装置(以下,エコー)を用いた観察によって,肘伸展制限において前方組織は基より後方組織では後方脂肪体が制限因子として報告されている。今回,右肘頭裂離骨折術後症例に対し,エコーを用いて肘後方の動態観察のもと運動療法を実施し,良好な成績を得たので報告する。
【方法】
症例は14歳,女子である。バスケットボールのジャンプ時に右肘より落下受傷し,同日,右肘頭裂離骨折と診断され,ギプス固定となる。受傷後10日目に骨接合術及び上腕三頭筋の筋腱逢着術施行後,肘60°屈曲位にてギプス固定となる。尚,術中所見では肘頭の裂離骨片と共に上腕三頭筋は一部を除き剥離していた。術後20日目にヒンジ付肘装具処方,30日目より運動療法開始となる。装具許容角度は肘伸展-60°,屈曲105°,術後33日目に肘伸展-30°,屈曲120°となった。初診時理学所見では,肘頭周辺部の腫脹や圧痛はなく,ROMは肘伸展-55°,屈曲90°であった。
エコーはSIEMENS社製超音波画像診断装置ACUSON P300を使用し,画面上に肘頭窩,肘頭,上腕三頭筋,後方関節包,後方脂肪体を描出した。エコー観察(術後39日目)は装具を外し,肘屈伸可動範囲である屈曲90°から伸展-45°の自動伸展運動を健側と比較した。上腕三頭筋内側頭(以下,内側頭)の近位滑走と後方関節包及び脂肪体の背側近位移動は著しい制限を認めた。その為,内側頭に対し前方へのスライド操作,引き離し操作と共に内側頭の反復収縮を行ったうえで再度エコー観察したところ,明らかな改善を示した。また,前方組織に対するアプローチも併せて実施した。運動療法は術後3ヵ月まで週1~2回,その後2週に1回程度実施した。術後8週において,骨癒合状態は良好であり装具は除去,他動運動が追加された。
【説明と同意】
症例には本発表の目的と意義について十分な説明を行い,同意を得た。
【結果】
伸展最終域での後方動態を定期的にエコーで観察したが,可動域の改善と共により後方関節包及び脂肪体の背側近位移動は改善を示した。4ヵ月後,ROMは肘伸展0°,屈曲145°,JOA score100点で運動療法終了とした。
【考察】
肘頭裂離骨折の予後は一般的に良好であるが,若干の伸展制限を残す事もある。林らは終末伸展運動における肘後方脂肪体の動態をエコーにて観察し,伸展に伴い機能的な形態変形をしながら後方関節包と共に背側近位移動する事を明らかにし,肘後方インピンジメントを回避するとしている。本症例は開始初期において,内側頭の滑走障害と共に後方関節包及び脂肪体の背側近位移動の明らかな制限を認めた。この制限の残存は伸展運動における後方インピンジメントの惹起に寄与し得るが,当然後方関節包の伸張性低下は屈曲制限にもなる。ゆえに初期において後方関節包及び脂肪体の背側近位移動を改善させた事は,後の可動域改善を円滑にし,他報告と単純比較出来ないものの,良好な可動域が得られたと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
可及的早期に脂肪体の機能的変形が出来るスペースの確保と共に脂肪体の線維瘢痕化を予防する事は後の運動療法を円滑にし,またエコーによる動態観察を行う事で的確な運動療法に繋がると考えられる。