第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 基礎理学療法 口述

生体評価学1

Fri. May 30, 2014 2:25 PM - 3:15 PM 第4会場 (3F 302)

座長:中山恭秀(東京慈恵会医科大学附属第三病院リハビリテーション科)

基礎 口述

[0301] 屋外活動が困難な地域在住高齢者における屋内生活空間での日常生活動作と離床時間の縦断的変化の関連

橋立博幸1, 大沼剛2, 澤田圭祐3, 原田和宏4 (1.杏林大学保健学部理学療法学科, 2.板橋リハビリ訪問看護ステーション, 3.医療法人笹本会おおくに訪問リハビリテーション, 4.吉備国際大学保健医療福祉学部理学療法学科)

Keywords:地域在住高齢者, 生活空間, 離床

【はじめに,目的】
高齢者における不活動は心身機能低下や虚弱を招く原因となるため,生活機能の維持・向上のために日常生活活動(ADL)における活動量の維持・向上が重要視され,活動量の目安の1つとなる離床時間に関連する要因が検討されてきた。とくに屋外活動遂行が困難な地域在住高齢者ではADLにおいて自宅屋外だけでなく自宅屋内の生活空間での活動量を維持・向上するための離床時間の確保が必要であると考えられるが,屋内外の生活空間での活動と離床時間の継時的な変化がどのように関連するかについては十分に明らかとされていない。そこで本研究では,屋内生活空間における身体活動を簡便に評価できる質問紙指標として開発したhome-based life-space assessment(Hb-LSA)を用いて,屋外活動が困難な地域在住高齢者における日中の離床時間と自宅屋内または屋外の生活空間での活動の縦断的変化の関連について検証することを目的とした。
【方法】
対象は訪問リハビリテーションを利用した地域在住高齢者68人のうち初回調査から6か月後の追跡調査を実施できた27人(平均年齢77.9歳)とした。初回調査および追跡調査時に,日中の離床時間,屋内生活空間(Hb-LSA),屋外生活空間(life-space assessment(LSA)),基本的ADL自立度(functional independence measure(FIM)),基本動作能力(bedside mobility scale(BMS))を調査した。離床時間は平均的な1日の離床する時間を調べ,離床の定義はベッドや布団から離れて臥位以外の姿勢(座位,立位)を保持している状態とした。Hb-LSAにおける屋内生活空間は,基点を寝室のベッドとして規定し,自宅屋内の生活空間をレベル1:ベッド上,レベル2:寝室内,レベル3:自宅住居内,レベル4:自宅居住空間のごく近くの空間(庭やアパートの敷地内),レベル5:自宅屋外(敷地外)の5段階に設定した。実際の調査では,過去1か月間における各生活空間レベルにおける移動の有無,頻度(生活空間レベル1・2(1:1回未満/日,2:1~3回/日,3:4~6回/日,4:日中ほとんど),レベル3~5(1:1回未満/週,2:1~3回/週,3:4~6回/週,4:毎日)),自立度(1:動作介助が必要,1.5:補助具の使用または介助者の見守りが必要,2:補助具の使用および人的介助が不要)を調べ,各生活空間レベルにおける移動の有無,頻度,自立度の得点を積算し,各生活空間レベルの積算値の合計をHb-LSAの代表値とした(得点範囲0-120点)。初回調査と比べて追跡調査において離床時間が維持・増加したか(維持・増加群)低下したか(低下群)によって対象者を2群に分け,各指標を比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の実施に際して,対象者または家族介護者に対して口頭と書面にて研究概要を事前に説明し同意を得た。なお,本研究は杏林大学保健学部倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
初回調査時における年齢,性別,要介護原因となった主疾患,要介護度,Hb-LSA,LSA,FIM,BMSを群間比較した結果,各指標に有意差は認められなかった。次に,各群において初回調査時と追跡調査時の各指標を比較した結果,維持・増加群(n=18)では離床時間(平均0.9時間/日),Hb-LSA(平均7.8点)が有意に向上したが,低下群(n=9)では離床時間(平均2.6時間/日),HbLSA(平均7.4点)が有意に低下した。各群ともにLSA,FIM,BMSに有意な縦断的変化は認められなかった。さらに,初回調査時と比べた追跡調査時における離床時間の変化量と他の指標の変化量のSpearman順位相関係数を算出した結果,離床時間の変化量は,Hb-LSAの変化量と有意な相関を示したが(rs=0.594,p=0.001),LSAの変化量との相関は認められなかった。また,Hb-LSAの変化量は,LSA,FIM,BMSの変化量と有意な正の中等度の相関を示した。
【考察】
離床時間の維持・増加群ではHb-LSAが有意に向上したのに対して低下群ではHbLSAの有意な低下が認められ,離床時間の変化量とHb-LSAの変化量との間に有意な正の相関を示したことから,屋内生活空間の活動状況が離床時間と密接に関連すると考えられた。また,離床時間の縦断的な変化量がLSAではなくHbLSAの変化と有意に関連したことから,屋外活動遂行が困難な地域在住高齢者の活動量を高めるためには自宅屋外だけでなく自宅屋内の生活空間における活動の向上に着目することが重要であるとともに,Hb-LSAは屋内生活空間を中心とした活動時間の変化を鋭敏に反映する指標であると推察された。
【理学療法学研究としての意義】
屋外活動の遂行が困難な地域在住高齢者において,活動時間および活動量の向上を検討する際に屋内生活空間におけるADLを評価し向上を図ることが重要であることを示唆した。