第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 生活環境支援理学療法 口述

健康増進・予防4

Fri. May 30, 2014 2:25 PM - 3:15 PM 第6会場 (3F 304)

座長:井口茂(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻)

生活環境支援 口述

[0308] 地域在住日本人高齢者のチェアスタンドテストの基準値

中園哲治1, 安藤雅峻2, 上出直人1 (1.北里大学医療衛生学部, 2.汐田総合病院リハビリテーション科)

Keywords:チェアスタンドテスト, 高齢者, メタ分析

【はじめに,目的】チェアスタンドテスト(CST)は,高齢者の膝関節周囲筋筋力(Stephen,et al.2002)を反映した運動機能テストである。加えて,高齢者における日常生活活動(ADL)障害(Fang,et al.2013),転倒(Tiedemann,et al.2008)の発生などを予測しうることも示されている。しかし,高齢者を対象としたCSTの明確な基準値は存在しないため,CSTの結果の解釈を困難にしていると言える。そこで,本研究ではメタ分析にて地域在住日本人高齢者におけるCSTの基準値を算出した。
【方法】1996年1月から2013年9月の間に出版された,CSTに関してのデータを報告している査読のある研究論文を対象とした。対象とする論文の検索には電子データベースのPubmed,Embase,CINAHL,医学中央雑誌を用いた。加えて,関連する学術雑誌からマニュアルでの検索も行った。検索語には,「sit to stand」,「CS-5」,「CS-10」,「CS-30」,「chair stand」,「chair rising」,「立ち上がりテスト」と「elderly」,「高齢者」,「aged」,「older people」を適宜組み合わせて使用した。メタ分析に用いる論文の採用基準は,Kamideら(2011,2012)による先行研究を参考に以下の通りとした。(i)日本語もしくは英語で書かれた論文,(ii)60歳以上の地域在住日本人高齢者を対象とした論文,(iii)生活機能が良好な高齢者を対象とした論文,(iv)虚弱高齢者や明らかな疾患を有する高齢者を対象に含まない論文。これらの基準は,研究間のデータのばらつきを最小化するために設けた。なお,論文の選別は3名の研究者で行った。上記の採用基準を満たす論文から,論文情報(タイトル,著者,出典),対象者属性(生活機能,年齢,身長,体重,性別),測定条件,対象者数,CSTの平均値と標準偏差をそれぞれ抽出した。ただし,CSTにはCS-5,CS-10,CS-30の3種類の測定条件があり,各測定条件の測定結果をそのまま抽出した。また,一つの研究から複数のデータが報告されている場合,個々のデータとしてそれぞれ抽出した。統計解析として,CS-5,CS-10,CS-30の基準値と95%信頼区間(95%CI)を変量効果モデルでそれぞれ計算した。さらに,年齢と性別の影響をメタ回帰分析で計算した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,ヒトまたは動物を対象としていないため本項目は該当しない。
【結果】CS-10は採用基準に該当する論文が見つからず算出できなかった。CS-5の採用基準に該当したものは7論文(21データ)であった。対象者数は合計6050名(男性494名,女性1659名,未記載3897名;平均年齢69.0~80.7歳)であった。変量効果モデルの結果からCS-5の基準値は8.5(95%CI:7.9~9.1)秒と算出された。さらに,メタ回帰分析の結果から,CS-5と年齢および性別に関しては,いずれも関連が認められなかった。CS-30の採用基準に該当したものが3論文(14データ)であった。対象者数は合計661名(男性209名,女性317名,未記載135名;平均年齢62.6~83.2歳)であった。変量効果モデルの結果からCS-30の基準値は,17.3(95%CI:15.7~18.9)回と算出された。さらに,メタ回帰分析の結果より,CS-30と年齢にのみ有意な負の関連が認められた(p<0.001)。
【考察】本研究では,地域在住で自立した生活を送る日本人高齢者におけるCS-5,CS-30の基準値をメタ分析により算出した。60歳以上のCSTの基準値に関しては,CS-30にのみ年齢に伴い回数が低下することがわかった。先行研究でも,CS-30は年齢に伴って回数が低下することが示されている(Jones,et al.1999)。本研究の結果は,年齢によるCS-30への影響を裏づける結果になったと考えられた。本研究の結果から,CS-5に対してCS-30では,CS-5よりも12回程度立ち上がり回数を多く行う可能性があり,立ち上がり回数が増えることで,CS-30では,年齢が影響してくると考えられた。したがって,CS-30を用いる場合には年齢による影響を考慮して評価する必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】本研究で算出した基準値は,少なくともADL自立以上の生活機能を有する地域在住日本人高齢者に,CSTを行う際の評価基準として有益な指標となると考える。