[0312] 地域在住高齢者の “Disabling Foot Pain” の実態に関する疫学的調査
キーワード:地域在住高齢者, 足部, 疫学的調査
【はじめに,目的】
本研究の目的は,地域在住高齢者における足部痛と,Disabling Foot Pain(足部痛に関連する活動制限と参加制約。以下,DFP)の存在率(Prevalence)と人口統計学的指標における関連要因を明らかにすることであった。
【方法】
本研究は,松戸地域高齢者コホート研究の一部として実施した。松戸市は千葉県東葛地域に位置する人口約48万人の都市で,この松戸地域高齢者コホート研究は松戸市に居住する65~84歳の住民から層化無作為抽出した3,000人を対象とし,足部障害(足部異常・足部痛・足部機能障害)と生活機能・身体活動を調査する縦断的コホート研究である。第1次調査として郵送アンケート調査を実施した。アンケート調査の内容は,人口統計学的指標(性・年齢等),腰痛・膝痛・足部痛(想起期間1ヶ月間において1日以上持続する疼痛)の有無と重症度,足部の自覚症状(皮膚の色調不良,異常感覚,関節可動域制限,足・爪白癬,肥厚爪・巻爪,等14項目の自覚症状の有無),足部痛による能力障害指標(日本語版Manchester Foot Pain and Disability Index;以下MFPDI-J)を含むものであった。
なお,統計処理はSPSS21.0J(IBM社)を使用しDFPの有無にかかわる関連要因を調べるため多重ロジスティック回帰分析を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究対象者には郵送質問票と同封の説明文書で本研究の詳細と参加に関する説明をし,調査票への回答・返送を求めた。なお,調査票に同綴の研究参加同意書への署名をもって協力の意志を確認できた者のみを有効回答とした。また,松戸地域高齢者コホート研究の第1次調査(郵送調査)全体は,千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号:24593491)を受けて実施した。
【結果】
1,250人から回答を得た(有効回答率42%)。回答者の性別内訳は,男性677人,女性573人,平均年齢は74.0±5.3歳であった。腰痛を有する者は590人(47.2%),膝部痛を有するものは484人(38.2%)であったのに対して,足部痛を有するものは253人(20.2%)であった。足部痛の重症度別内訳は,重度痛(日常生活そのものに支障をきたす程度の痛みあるいは痛み以外のことが考えられない程度の痛み)のある者が8人(0.6%),中等度痛(日常生活の一部に支障をきたす程度の痛み)のある者が4.6%(58人),軽度痛(日常生活には支障とならない程度の痛み)のある者が15.9%(187人)であった。足部の自覚症状については,肥厚爪・巻爪41.5%,足白癬・爪白癬32.5%,胼胝・鶏眼29.0%,外反母趾19.2%が多かった。DFP(MFPDI-Jの設問1~17で1点以上の者)は,19.6%(245人)に存在した。
DFPの有無を従属変数,性別,年齢,婚姻歴,教育歴,同居家族の有無,腰痛の有無,膝痛の有無を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行った結果,女性,前期高齢者,離別・死別者,独居者,膝痛のある者がそうでないものに比べてDFPを持ちやすいことがわかった(r=.47~.77)。
【考察】
高齢者の生活機能低下の関連要因としては運動器の疼痛性疾患の関与がよく知られている。欧米諸国では2000年にGarrowらが開発したMFPDIを用いて,足部痛やDFPに関する疫学調査が多く行われているが,我が国では高齢者の足部痛ならびにDFPの疫学を計画的に調査した報告はほとんどない。今回,地域在住高齢者コホートを対象とした足部痛・足部の自覚症状・DFPの実態を調査し,欧米で行われた同様の調査における足部痛の存在率(約24%),DFP存在率(約9%)に比べて,本邦では足部痛の存在率は低いにも関わらずDFP存在率は約2倍に上ることが明らかとなった。
今後,この縦断調査を継続し,足部痛ならびに足部痛による能力障害発生の関連要因を精査し,足部痛を起点とする要介護発生の実態を明らかにするとともにその予防策を解明したい。を行われた同様の調査に比べて,本邦の高齢者の足部障害存在率が高いことが明らかとなった。今後,この縦断調査を継続し,足部痛ならびに足部痛による能力障害発生の関連要因を精査し,足部痛を起点とする要介護発生の実態を明らかにするとともにその予防策を解明したい。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,地域在住高齢者に存在する足部痛とDFPの実態を調べた我が国初の疫学調査であり,運動器痛による高齢者の生活機能低下を予防する効果的な理学療法的介入手法を確立するうえで極めて重要な基礎資料を提供するものである。
本研究の目的は,地域在住高齢者における足部痛と,Disabling Foot Pain(足部痛に関連する活動制限と参加制約。以下,DFP)の存在率(Prevalence)と人口統計学的指標における関連要因を明らかにすることであった。
【方法】
本研究は,松戸地域高齢者コホート研究の一部として実施した。松戸市は千葉県東葛地域に位置する人口約48万人の都市で,この松戸地域高齢者コホート研究は松戸市に居住する65~84歳の住民から層化無作為抽出した3,000人を対象とし,足部障害(足部異常・足部痛・足部機能障害)と生活機能・身体活動を調査する縦断的コホート研究である。第1次調査として郵送アンケート調査を実施した。アンケート調査の内容は,人口統計学的指標(性・年齢等),腰痛・膝痛・足部痛(想起期間1ヶ月間において1日以上持続する疼痛)の有無と重症度,足部の自覚症状(皮膚の色調不良,異常感覚,関節可動域制限,足・爪白癬,肥厚爪・巻爪,等14項目の自覚症状の有無),足部痛による能力障害指標(日本語版Manchester Foot Pain and Disability Index;以下MFPDI-J)を含むものであった。
なお,統計処理はSPSS21.0J(IBM社)を使用しDFPの有無にかかわる関連要因を調べるため多重ロジスティック回帰分析を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究対象者には郵送質問票と同封の説明文書で本研究の詳細と参加に関する説明をし,調査票への回答・返送を求めた。なお,調査票に同綴の研究参加同意書への署名をもって協力の意志を確認できた者のみを有効回答とした。また,松戸地域高齢者コホート研究の第1次調査(郵送調査)全体は,千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号:24593491)を受けて実施した。
【結果】
1,250人から回答を得た(有効回答率42%)。回答者の性別内訳は,男性677人,女性573人,平均年齢は74.0±5.3歳であった。腰痛を有する者は590人(47.2%),膝部痛を有するものは484人(38.2%)であったのに対して,足部痛を有するものは253人(20.2%)であった。足部痛の重症度別内訳は,重度痛(日常生活そのものに支障をきたす程度の痛みあるいは痛み以外のことが考えられない程度の痛み)のある者が8人(0.6%),中等度痛(日常生活の一部に支障をきたす程度の痛み)のある者が4.6%(58人),軽度痛(日常生活には支障とならない程度の痛み)のある者が15.9%(187人)であった。足部の自覚症状については,肥厚爪・巻爪41.5%,足白癬・爪白癬32.5%,胼胝・鶏眼29.0%,外反母趾19.2%が多かった。DFP(MFPDI-Jの設問1~17で1点以上の者)は,19.6%(245人)に存在した。
DFPの有無を従属変数,性別,年齢,婚姻歴,教育歴,同居家族の有無,腰痛の有無,膝痛の有無を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行った結果,女性,前期高齢者,離別・死別者,独居者,膝痛のある者がそうでないものに比べてDFPを持ちやすいことがわかった(r=.47~.77)。
【考察】
高齢者の生活機能低下の関連要因としては運動器の疼痛性疾患の関与がよく知られている。欧米諸国では2000年にGarrowらが開発したMFPDIを用いて,足部痛やDFPに関する疫学調査が多く行われているが,我が国では高齢者の足部痛ならびにDFPの疫学を計画的に調査した報告はほとんどない。今回,地域在住高齢者コホートを対象とした足部痛・足部の自覚症状・DFPの実態を調査し,欧米で行われた同様の調査における足部痛の存在率(約24%),DFP存在率(約9%)に比べて,本邦では足部痛の存在率は低いにも関わらずDFP存在率は約2倍に上ることが明らかとなった。
今後,この縦断調査を継続し,足部痛ならびに足部痛による能力障害発生の関連要因を精査し,足部痛を起点とする要介護発生の実態を明らかにするとともにその予防策を解明したい。を行われた同様の調査に比べて,本邦の高齢者の足部障害存在率が高いことが明らかとなった。今後,この縦断調査を継続し,足部痛ならびに足部痛による能力障害発生の関連要因を精査し,足部痛を起点とする要介護発生の実態を明らかにするとともにその予防策を解明したい。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,地域在住高齢者に存在する足部痛とDFPの実態を調べた我が国初の疫学調査であり,運動器痛による高齢者の生活機能低下を予防する効果的な理学療法的介入手法を確立するうえで極めて重要な基礎資料を提供するものである。