[0315] JCI(Joint Commission International)の取得前後でのリハビリテーション科の変化
キーワード:JCI, 感染予防, 患者安全
【はじめに,目的】
当院は2012年10月に日本の病院で4番目にJoint Commission International(以下JCI)を取得することが出来た。これはアメリカの病院機能評価のJoint Commissionの世界版であり,ここ数年で各国の主要な病院が取得するようになってきており,本邦でもそのような動きが出てきている。評価項目は大きく分けると,患者安全(IPSG),や施設管理(FMS),感染予防(PCI),患者家族教育(PFE)など14カテゴリーに分かれ,また小項目は1000以上になり,実際に病院を視察した審査員の評価により8割以上の項目を実施していないと認証されない厳しい基準である。また更新は3年毎となる。JCI取得に当たり,当リハビリテーション科においても感染予防や施設管理を中心に大きな改編を実施した。今回取得後約一年を経過した当科におして,JCI取得前後で変化した点を分析した。
【方法】
当科職員に対してアンケート調査を実施した。アンケートの質問は以下の通りであり,それぞれJCI取得前後での変化点があるかどうかを5段階評価で回答してもらった。質問の内容は①JCIの取得は良かったか②病院の変化③リハビリテーション科の変化④勤務状況の変化について聞き,次に審査項目の14カテゴリーの中で当科に関わりの強かったカテゴリーの⑤IPSG⑥PCI⑦PFE⑧FMS⑨診療の手順(AOP)⑩診療の質(QPS)についての質問をした。また,JCIの審査項目に関わる事として,リハビリテーションの実施状況や,医療安全の報告から客観的に分析できるデータを抽出し,院内の感染発生率,転倒・転落率等をチェックし,JCIによって変化した点を調査した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本調査にあたっては,個人が特定できない調査システムや使用目的を記し,調査目的を理解した上で,協力を求め,研究倫理には十分配慮した。
【結果】
アンケート対象は当科職員47名(男性27名 女性20名)であった。アンケートの結果はまず75%のスタッフがJCIを取得して良かったと回答し,リハビリテーション科の変化に関しては,73%が良くなったと回答していた。反面,勤務状況が改善されたと回答した割合は10%と低かった。カテゴリー別の質問に関しては,感染予防(手洗いの徹底,感染患者の識別等)が改善されたと回答したスタッフが87%と最も多く,次に患者安全(患者確認・口頭指示の処理の仕方・転倒転落予防等)と施設管理(整理・整頓や防災面)の項目がともに75%のスタッフが改善されたと回答していた。また患者家族教育(退院時リハビリ指導等)に関して改善されたと答えたのは59%,診療の手順(カルテ記載の仕方等)が良くなったと答えたのは55%,診療の質の変化に関して良くなったと答えたのは47%であった。
【考察】
今回JCI取得後のスタッフの意識調査を実施した。多くのスタッフからJCI取得に関しては良かったとの評価を得ることが出来た。カテゴリー別では,最も回答の良かった感染予防に関しては感染予防委員会からJCI所得後は取得以前に比べ,院内の感染発生率が1.4%低くなっているという報告があり,客観的なデータが出ている。また良くなったとの回答があまり高くはなかった患者教育ではあったが,関連事項として,JCI認証前に比べ退院時リハビリ指導の取得率が1.6倍に増加していた。これは認証前にはなかったルールやマニュアルを作成する事により,業務改善の効果が得られたものと考える。反面,勤務状況が良くなったとの回答が低かった。JCIでは,清掃業務や器機管理の面で日々実践しなければならない。それにより診療以外の仕事量が増加したのも事実であり,今後改善が求められるところである。またJCIは3年毎の更新が必要で,更新時は審査が厳しくなっていくと言われている。そのためJCIで決められたことを日々継続的に実践していくようにスタッフ教育も重要になっていく。
【理学療法学研究としての意義】
JCI取得にあたっては,リハビリテーション科の器機管理や理学療法の業務マニュアルにおいて大きな変更を迫られる。そこで取得するメリットを提示することは重要であろう。本研究ではJCI取得のメリットをスタッフの認識の変化を中心に提示できた。
当院は2012年10月に日本の病院で4番目にJoint Commission International(以下JCI)を取得することが出来た。これはアメリカの病院機能評価のJoint Commissionの世界版であり,ここ数年で各国の主要な病院が取得するようになってきており,本邦でもそのような動きが出てきている。評価項目は大きく分けると,患者安全(IPSG),や施設管理(FMS),感染予防(PCI),患者家族教育(PFE)など14カテゴリーに分かれ,また小項目は1000以上になり,実際に病院を視察した審査員の評価により8割以上の項目を実施していないと認証されない厳しい基準である。また更新は3年毎となる。JCI取得に当たり,当リハビリテーション科においても感染予防や施設管理を中心に大きな改編を実施した。今回取得後約一年を経過した当科におして,JCI取得前後で変化した点を分析した。
【方法】
当科職員に対してアンケート調査を実施した。アンケートの質問は以下の通りであり,それぞれJCI取得前後での変化点があるかどうかを5段階評価で回答してもらった。質問の内容は①JCIの取得は良かったか②病院の変化③リハビリテーション科の変化④勤務状況の変化について聞き,次に審査項目の14カテゴリーの中で当科に関わりの強かったカテゴリーの⑤IPSG⑥PCI⑦PFE⑧FMS⑨診療の手順(AOP)⑩診療の質(QPS)についての質問をした。また,JCIの審査項目に関わる事として,リハビリテーションの実施状況や,医療安全の報告から客観的に分析できるデータを抽出し,院内の感染発生率,転倒・転落率等をチェックし,JCIによって変化した点を調査した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本調査にあたっては,個人が特定できない調査システムや使用目的を記し,調査目的を理解した上で,協力を求め,研究倫理には十分配慮した。
【結果】
アンケート対象は当科職員47名(男性27名 女性20名)であった。アンケートの結果はまず75%のスタッフがJCIを取得して良かったと回答し,リハビリテーション科の変化に関しては,73%が良くなったと回答していた。反面,勤務状況が改善されたと回答した割合は10%と低かった。カテゴリー別の質問に関しては,感染予防(手洗いの徹底,感染患者の識別等)が改善されたと回答したスタッフが87%と最も多く,次に患者安全(患者確認・口頭指示の処理の仕方・転倒転落予防等)と施設管理(整理・整頓や防災面)の項目がともに75%のスタッフが改善されたと回答していた。また患者家族教育(退院時リハビリ指導等)に関して改善されたと答えたのは59%,診療の手順(カルテ記載の仕方等)が良くなったと答えたのは55%,診療の質の変化に関して良くなったと答えたのは47%であった。
【考察】
今回JCI取得後のスタッフの意識調査を実施した。多くのスタッフからJCI取得に関しては良かったとの評価を得ることが出来た。カテゴリー別では,最も回答の良かった感染予防に関しては感染予防委員会からJCI所得後は取得以前に比べ,院内の感染発生率が1.4%低くなっているという報告があり,客観的なデータが出ている。また良くなったとの回答があまり高くはなかった患者教育ではあったが,関連事項として,JCI認証前に比べ退院時リハビリ指導の取得率が1.6倍に増加していた。これは認証前にはなかったルールやマニュアルを作成する事により,業務改善の効果が得られたものと考える。反面,勤務状況が良くなったとの回答が低かった。JCIでは,清掃業務や器機管理の面で日々実践しなければならない。それにより診療以外の仕事量が増加したのも事実であり,今後改善が求められるところである。またJCIは3年毎の更新が必要で,更新時は審査が厳しくなっていくと言われている。そのためJCIで決められたことを日々継続的に実践していくようにスタッフ教育も重要になっていく。
【理学療法学研究としての意義】
JCI取得にあたっては,リハビリテーション科の器機管理や理学療法の業務マニュアルにおいて大きな変更を迫られる。そこで取得するメリットを提示することは重要であろう。本研究ではJCI取得のメリットをスタッフの認識の変化を中心に提示できた。