第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 運動器理学療法 口述

骨・関節5

Fri. May 30, 2014 2:25 PM - 3:15 PM 第11会場 (5F 501)

座長:阿南雅也(広島大学大学院医歯薬保健学研究院)

運動器 口述

[0320] 変形性膝関節症患者のscrew home movementに影響を与える因子の検討

小山優美子1, 建内宏重1, 齊田高介1, 季翔1, 梅垣雄心1, 西村里穂1, 小林政史2, 市橋則明1 (1.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 2.小林整形外科医院)

Keywords:変形性膝関節症, スクリューホームムーブメント, 動作分析

【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下,膝OA)は退行性に生じる膝関節軟骨の変性であり,主たる症状として関節の変形や可動域制限を来す。先行研究にて膝OA患者の矢状面,前額面における膝関節運動の変化については数多く報告されているが,水平面上の運動を観察した研究は少ない。正常な構造を持つ膝関節では,大腿骨の形状や靭帯の緊張などの解剖学的特徴によって,screw home movement(以下,SHM)と言われる脛骨の外旋が膝伸展運動に伴い起こるとされている。一方で,臨床においては膝OA患者のSHMは関節の変形や,関節周囲組織の変性,疼痛などによって健常者とは異なる様相を示すと考えられている。しかし,膝OA患者の生体運動にてこのSHMを観察した研究は少なく,また実際の患者で観察された膝回旋運動の変化と,それに関連する因子を明らかにした報告はない。そこで本研究の目的は,膝OA患者を対象に自動膝関節伸展運動時の膝回旋運動を分析し,伸展運動に伴う膝関節外旋変位量と関連する因子を検討することとした。
【方法】
対象は地域在住の内側型変形性膝関節症患者18名(男性3名,女性15名,平均年齢66.3±7.9歳)とし,両側膝OAの場合はより症状の強い方を測定下肢とした。動作課題は,端座位での膝関節自動伸展運動とし,メトロノームを使用し角速度を45°/secに規定して3回の動作を行った。動作解析には三次元動作解析装置VICON NEXUS(VICON社製)を使用し,Andriacchiらが考案したPoint Cluster法に基づき測定下肢に21箇所の反射マーカーを貼付した。全対象者で運動可能であった膝関節屈曲70~10°における膝関節外旋角度の変位量を各試行で算出し,3試行の平均値を統計解析に用いた。動作分析に加え,日常生活活動中の膝関節痛の程度をVisual Analog Scale(以下,VAS)を用いて聴取し,X線画像情報をもとにKellgren-Lawrence分類による重症度及びfemorotibial angle(以下,FTA)を収集した。さらに,他動膝関節屈曲及び伸展可動域を同一の検者によってゴニオメータで測り,最大等尺性膝伸展筋力をIso-force GT330(オージー技研社製)を用いて計測し,それぞれ解析に用いた。統計解析にはまず膝OAの重症度と膝関節の外旋変位量の関連を検討するため,重症度を要因とし外旋変位量を従属変数とする一元配置分散分析を行った。さらに,外旋角度変位量と関連する因子の特定のため,膝関節伸展筋力,膝屈曲可動域,膝伸展可動域,年齢,VAS,FTAを独立変数とし,外旋角度変位量を従属変数とする重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。有意水準は5%とした。
【説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,所属施設の倫理委員会の承認を得た上で,対象者には測定に際して研究の主旨について十分な説明を行った。
【結果】
全対象者における膝関節外旋変位量は4.0±4.4°であった。重症度による外旋変位量の相違は認められなかった。重回帰分析の結果,外旋変位量と年齢にのみ有意な因果関係が見られた(標準偏回帰係数β=0.541,p<0.05)。
【考察】
膝OA患者においては,年齢が高い程,自動膝伸展運動時の膝関節外旋変位量は大きい結果となった。過去の報告においても,加齢による筋や靭帯の張力の低下によって関節運動が変化することが言われており,本研究でも加齢による膝関節周囲組織の変性がSHMの変化に関与していることが考えられた。一方で,SHMの変化は関節拘縮や筋力低下といった膝OAの病態とは関連せずに独立して生じる現象であると考えられた。しかし,関節変形の程度とは関連がないものの,健常者を対象として同様の動作を行った先行研究と比較すると,本研究で観察された外旋変位量は少ないものであり,膝OAに由来する関節の構造の変化もまた,SHMに影響を与えている可能性がある。また,本研究では非荷重位での動作にて観察を行ったため,膝関節回旋運動は近位関節あるいは遠位関節からの運動連鎖の影響を受けない。荷重位においては加齢や関節の変形だけでなく,他関節の運動連鎖の影響がSHMを変化させる可能性があるため,今後膝OA患者の荷重位におけるSHMも評価する必要があると考えられた。
【理学療法研究としての意義】
本研究結果より,膝OA患者において非荷重位での膝関節伸展運動時の膝関節回旋可動域は,加齢による影響を受けることが明らかとなった。これは膝OA患者の関節可動域制限の評価,治療を行う上で臨床上有用な知見となり得る。