第49回日本理学療法学術大会

講演情報

発表演題 ポスター » 教育・管理理学療法 ポスター

臨床教育系4

2014年5月30日(金) 14:25 〜 15:15 ポスター会場 (教育・管理)

座長:平野孝行(名古屋学院大学リハビリテーション学部理学療法学科)

教育・管理 ポスター

[0363] SRS18(心理的ストレス反応測定尺度)により測定した臨床実習時のスレトス反応に臨床実習遂行状況が及ぼす影響について

鈴木学1, 細木一成2, 仲保徹1, 鳥海亮1 (1.群馬パース大学保健科学部理学療法学科, 2.千葉・柏リハビリテーション学院理学療法学科)

キーワード:臨床実習, 実習遂行状況, ストレス

【はじめに,目的】理学療法士養成校における臨床実習は学内で習得した知識や技術などを臨床の現場で活用することを学ぶ上で重要なカリキュラムである。このカリキュラムは理学療法教育が始まった当初よりも時間数が減少しているが,以前よりも臨床実習において学生がトラブルを生じ,実習中止または成績不振などに陥るケースがよく見受けられるものである。特に実習時の心理的ストレスの増大は情動的,認知的,行動的変化を引き起こし,実習遂行に支障をきたす要因の1つとなっている。先行研究では実習終了後のストレス反応について検討し,実習中の対人ストレスイベントが実習終了後のストレスに関係している。と報告されている。しかし,実習遂行状況が実習中のストレスに及ぼす影響について報告されたものはきわめて少ない。
本研究は実習遂行状況とストレス反応との関連について検討し,実習前教育の一助とすることを目的とした。
【方法】対象は8週間の臨床実習を遂行した2養成校の4年生81名(男性51名,女性30名)で年齢21.8±1.2歳であった。
調査目的を説明し,SRS-18および実習遂行状況の自己評価を実施した。SRS-18は18項目の質問からなり,実習期間中の最もストレスを感じた時期での心理的状態を回想し,マニュアルに沿ってその程度を0~3点で評価した。これらの得点は抑うつ・不安,不機嫌・怒り,無気力)の3つの心理的反応の得点に集約し,各反応は0~18点で表示し,さらに全体の合計得点を算出して総合的ストレス反応の得点とした(MAX=54点)。実習遂行状況の評価は下位項目として50項目の質問からなり,それらの上位項目として常識,知識,情報収集,評価,問題点抽出,治療計画,リスク管理,治療,レポート作成を設定した。評価は0~5点で表示し,各下位項目の合計得点を上位項目の得点とした。
統計処理は統計ソフトSPSS statistictis20を使用し,心理的ストレス反応の程度と実習遂行状況との関係をPearsonの相関分析にて検討し,更に回帰分析(ステップワイズ法)にて各項目の実習遂行状況が総合的なストレスに及ぼす影響について検討した。有意確率は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】アンケート記入者には研究に際してその目的の趣旨,プライバシーの保護,参加拒否・中止の自由,分析結果の開示などについて説明し,文書による同意を得た。尚,本研究は群馬パース大学倫理審査会の承認を受けた(承認番号PAZ13-7)。
【結果】SRS18の検査結果から最もストレスを感じていたのは実習開始から平均4.3±1.2週目であった。ストレスの心理的反応は「抑うつ・不安」9.49±4.65点,「不機嫌・怒り」8.14±4.42点,「無気力」9.19±3.86点で総合的ストレスは26.8±10.8点であった。.実習遂行状況は上位項目では2.82~4.63点の範囲で知識(2.82点)とレポート作成(2.96点)が特に低く,総合的実習遂行状況は3.56±0.41点であった。
ああああああ 総合的実習遂行状況と「抑うつ反応・不安」(r=-0.32),「不機嫌・怒り」(r=0.262)および「無気力」(r=-0.39)とは有意な弱い負の相関がみられ,総合的ストレス反応との間(r=-0.37)も有意な弱い負の相関がみられた。(p<0.05)。
目的変数を実習時のストレス,説明変数を実習各遂行状況の上位項目とした重回帰分析では投入変数は情報収集のみとなり,他の変数は除外された。R2乗値0.207とやや弱い予測力であったが,F(1,79)=20.636(p<0.01)とモデルの有意性はみられた。回帰式y=56.184-8.565xが得られ,情報収集の標準偏回帰係数-0.455で有意差がみられた(P<0.01)。
【考察】ストレスの最も多い時期は概ね,初期評価終了前後で学生が実習でトラブルが発生すことが多い時期とほぼ一致していた。そしてストレスの各反応および総合的反応の程度は概ね,やや高いレベルであった。総合的ストレス反応と実習遂行状況は負の相関で特に情報収集でやや強い相関がみられ,情報収集やその活用とストレスの関係が強いことが示唆された。そして回帰分析の結果からストレスの原因として情報収集とその活用が関係し,負の影響を与えていた。そのため情報の収集や活用方法を熟知することがストレスを和らげる一因であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】実習期間に発生するストレスと実習遂行状況との関連を把握することは事前学習や臨床実習の際の教員や実習指導者介入時期,方法およびや程度を判断する一助になるものと考えられた。