第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 教育・管理理学療法 ポスター

臨床教育系4

Fri. May 30, 2014 2:25 PM - 3:15 PM ポスター会場 (教育・管理)

座長:平野孝行(名古屋学院大学リハビリテーション学部理学療法学科)

教育・管理 ポスター

[0367] Women’s Healthに関する生涯学習の取り組み

荒木智子1,2, 井ノ原裕紀子1,3, 瓜谷大輔1,4 (1.一般社団法人WiTHs, 2.了徳寺大学, 3.Her’s, 4.畿央大学)

Keywords:Women's Health, 生涯学習, 職域拡大

【はじめに,目的】昨今,理学療法士(以下,PT)が従事する新たな領域としてWomen’s Healthが注目されており,研修会なども各地で活発に開催されつつある。しかし,現在Women’s Healthに関心を持つPTの多くは女性であり,自らのキャリアデザインとのジレンマに直面しながら研鑽しなければならない現状があるのも事実である。そこで本研究では,医療専門職の関心がどのような分野にあるのか,どのような条件が整備されれば生涯学習を継続していけるのかを把握し,Women’s Healthに関する持続可能な生涯学習に求められる要件を把握することを目的とした。
【方法】2013年9月にWomen’s Healthに特化した法人により開催された研修会に参加した医療専門職および医療系学生34名に対し,質問紙調査を行った。質問紙は無記名,選択・自由記載によるもので,受講動機,関心のある分野,研修会受講に関する環境(託児の有無,曜日,時間帯)について調査を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には質問紙調査の趣旨を説明し,同意を得た上で無記名の質問紙調査を実施した。回答は得られたが研究発表への同意が得られなかったものに関しては,本研究の対象者から除外した。
【結果】セミナーの参加者は34名で有効回答数は31名(男性9名,女性22名)であった(回収率91.1%)。最も多かった職種はPT(74.1%)で,他に作業療法士,看護師,歯科医師などがいた。14名(45.1%)が未婚で,14名(45.1%)が既婚だった。子どもは13名(41.9%)におり,当日セミナーに併設した託児を利用した参加者は10名(子ども14名)であった。参加者のセミナーの受講動機は関心の強い順に「Women’s Healthに関心をもっている(21名:67.7%)」,「法人設立に関心をもった(13名:41.9%)」が多数をしめた。Women’s Healthについては「産前産後への介入(14名:45.1%)」「思春期への介入(7名:22.5%)」「多職種連携(5名:16.1%)」「中高年期への介入(5名:16.1%)」の順に関心や期待が寄せられた。法人設立に関しては,「法人の活動内容(9名:29.0%)」,「セラピストの起業(6名:19.3%)」,「法人の趣旨(5名:16.1%)」に関心や期待が寄せられた。今後セミナーで受講したいテーマに関しては「理論(18名:58.0%)」「実技(16名:51.6%)」「多職種連携(16名:51.6%)」がみられた。研修会受講の環境に関しては,参加しやすい曜日・時間帯は土・日・祝日に集中し,時間帯も午前・午後が多数を占めた。逆に参加しづらい曜日・時間帯に関しては月曜日から金曜日の平日の午前・夜間が多かった。託児に関しては「ある方がよい(20名:64.5%)」が多数をしめた。
【考察】参加者の関心は「Women’s Health」「法人設立」に向けられ,どちらについても産前産後のリハビリテーションや起業といった形で既にPTが進出している領域でもある。Women’s Healthについては現行の医療保険では網羅しづらい部分もあり,思春期への介入,産前産後への介入については他職種との連携が必須であり,その背景と参加者の関心がほぼ一致していた。また医療保険・介護保険で網羅できない分野へ「起業」という形で介入することについても関心が示され,新たな職域拡大,他職種との連携への可能性が感じられた。研修会受講に関しては,土・日・祝日開催の要望が多かった。託児を利用しなかった参加者からも託児の設置に関して前向きな回答が得られた。365日の診療体制をとる医療機関が増加している現状がありながらも,「週末開催・託児付」は子育て世代の参加者にとって研修会受講へのサポートになり,生涯学習の継続への支援につながると考える。今後本調査の結果を受けて,Women’s Healthを基盤として,関係各所・他職種との関連を強化し,ひいては子育て世代のPTを始めとする医療専門職のサポートも含めた社会貢献を事業として展開していく必要があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】新たな領域への開拓,自己研鑽への環境整備は理学療法士の職域拡大,質の向上にもつながると考えられ,医療専門職としての社会でのさらなる認知度の向上に寄与するものと考えられる。