[0368] 行動指針別当院卒後教育システムのアンケート調査
キーワード:卒後教育, 人材育成, クリニカルラダー
【はじめに】
卒後教育の重要性の高まりにより当院でも2012年から将来のキャリアビジョン,目標による自己管理,卒後教育,自院に必要な人材育成を目的に,キャリア形成ツールとしてのクリニカルラダーの運用を開始した。このラダー表は当院で求められるセラピスト像に必要な臨床能力を「臨床実践」「組織役割遂行」「教育研究」「対人関係」の4つの能力に分類し,4段階に設定した行動指針と行動目標の表からなる。当院の卒後教育システムはラダー表に記載された行動目標より,各自がどの段階を目指すか自己申告し,理学療法部門管理者が行動指針に対応した様々な経験より,臨床実践能力を高めるための年間教育計画を立て運用している。このラダー表では3段階目を標準な業務を実施できるセラピスト,4段階目を模範となるセラピスト像と位置づけていているが,各々の段階の違いについて詳細な検証はされていない。そこで,芳野等により開発され,継続教育に活用するための評価表である臨床能力評価尺度Clinical Competence Evaluation Scale in Physical Therapy(以下CEPT)を用い,当ラダー表の検証を試みたので報告する。
【方法】
理学療法士(以下PT)17名における臨床実践能力をCEPTを用いてアンケート調査を行った。CEPTは7つの大項目(理学療法実施上の必要な知識・臨床思考能力・医療職としての理学療法士の技術・コミュニケーション技術・専門職社会人としての態度・自己教育力・自己管理能力)と53の評価項目で構成され,4段階(合計53~212点:点数が高いとより能力が高い)の評価尺度である。対象者にはCEPTを用いた自己評価及び現在の行動指針である目標ラダーの回答を依頼した。分析方法としては現在の到達目標がラダー3以下(12名,平均経験年数3年)とラダー4(5名 平均経験年数11.5年)の2群に分類し,7つの大項目毎にCEPTの段階付けで「自立している状態」である3点以上と回答した割合いを比較した。さらに53の評価項目毎に,ラダー3以下と4の2群に分け,Mann-WhitneyのU検定を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には研究に対する説明を行い,同意を得た上で実施した。またアンケートは匿名性とし個人情報に配慮した。
【結果】
各ラダーの4段階の割合は,ラダー3以下で「1点」9.9%,「2点」53.6%,「3点」32.9%,「4点」3.6%であった。また,ラダー4以上では「1点」0%,「2点」4.2%,「3点」61.9%,「4点」34.0%であった。7つの大項目別で3点以上をつけた割合は,「理学療法実施上の必要な知識」でラダー3以下は20.0%,4以上で84.0%「臨床思考能力」では27.5%,98.0%「医療職としての理学療法士の技術」32.6%,93.3%「コミュニケーション技術」34.7%,100%「専門職社会人としての態度」56.3%,96.7%「自己教育力」39.6%,100%「自己管理能力」31.3%,100%であった。評価項目毎のラダーの差は「医療職としての理学療法士の技術」の項目で有意差を認めない項目が多く,全体で13の評価項目で有意差を認めなかった。
【考察】
目標ラダー4では6割が他者の指導が無くても業務を実施でき,自立した状態と回答しており,主観的評価であるが目標ラダー3以下を指導する立場を認識していることが確認できた。目標ラダー3以下については約3割で指導・助言が必要なレベルと回答しており,標準な業務を実施できるセラピスト像と差があると考えられた。また大項目別では目標ラダー3以下では3点以上をつけた評価項目の割合が少ないものの,「専門職社会人としての態度」は約半数は自立していると回答しており,目標ラダーが低くても社会人としての意識は高いことが伺えた。各項目別の比較では,2群間では有意差を認めない項目も存在しており,当院のラダー表では行動目標の難易度が項目別に異なる可能性が示唆され,行動指針別の行動目標を検討する必要が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
CEPTのような一指標を活用し,理学療法部門の責任者が各施設の卒後教育目標を後方視的に調査することは重要と思われ,卒後教育システムの構築に役立つものと考えられた。
卒後教育の重要性の高まりにより当院でも2012年から将来のキャリアビジョン,目標による自己管理,卒後教育,自院に必要な人材育成を目的に,キャリア形成ツールとしてのクリニカルラダーの運用を開始した。このラダー表は当院で求められるセラピスト像に必要な臨床能力を「臨床実践」「組織役割遂行」「教育研究」「対人関係」の4つの能力に分類し,4段階に設定した行動指針と行動目標の表からなる。当院の卒後教育システムはラダー表に記載された行動目標より,各自がどの段階を目指すか自己申告し,理学療法部門管理者が行動指針に対応した様々な経験より,臨床実践能力を高めるための年間教育計画を立て運用している。このラダー表では3段階目を標準な業務を実施できるセラピスト,4段階目を模範となるセラピスト像と位置づけていているが,各々の段階の違いについて詳細な検証はされていない。そこで,芳野等により開発され,継続教育に活用するための評価表である臨床能力評価尺度Clinical Competence Evaluation Scale in Physical Therapy(以下CEPT)を用い,当ラダー表の検証を試みたので報告する。
【方法】
理学療法士(以下PT)17名における臨床実践能力をCEPTを用いてアンケート調査を行った。CEPTは7つの大項目(理学療法実施上の必要な知識・臨床思考能力・医療職としての理学療法士の技術・コミュニケーション技術・専門職社会人としての態度・自己教育力・自己管理能力)と53の評価項目で構成され,4段階(合計53~212点:点数が高いとより能力が高い)の評価尺度である。対象者にはCEPTを用いた自己評価及び現在の行動指針である目標ラダーの回答を依頼した。分析方法としては現在の到達目標がラダー3以下(12名,平均経験年数3年)とラダー4(5名 平均経験年数11.5年)の2群に分類し,7つの大項目毎にCEPTの段階付けで「自立している状態」である3点以上と回答した割合いを比較した。さらに53の評価項目毎に,ラダー3以下と4の2群に分け,Mann-WhitneyのU検定を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には研究に対する説明を行い,同意を得た上で実施した。またアンケートは匿名性とし個人情報に配慮した。
【結果】
各ラダーの4段階の割合は,ラダー3以下で「1点」9.9%,「2点」53.6%,「3点」32.9%,「4点」3.6%であった。また,ラダー4以上では「1点」0%,「2点」4.2%,「3点」61.9%,「4点」34.0%であった。7つの大項目別で3点以上をつけた割合は,「理学療法実施上の必要な知識」でラダー3以下は20.0%,4以上で84.0%「臨床思考能力」では27.5%,98.0%「医療職としての理学療法士の技術」32.6%,93.3%「コミュニケーション技術」34.7%,100%「専門職社会人としての態度」56.3%,96.7%「自己教育力」39.6%,100%「自己管理能力」31.3%,100%であった。評価項目毎のラダーの差は「医療職としての理学療法士の技術」の項目で有意差を認めない項目が多く,全体で13の評価項目で有意差を認めなかった。
【考察】
目標ラダー4では6割が他者の指導が無くても業務を実施でき,自立した状態と回答しており,主観的評価であるが目標ラダー3以下を指導する立場を認識していることが確認できた。目標ラダー3以下については約3割で指導・助言が必要なレベルと回答しており,標準な業務を実施できるセラピスト像と差があると考えられた。また大項目別では目標ラダー3以下では3点以上をつけた評価項目の割合が少ないものの,「専門職社会人としての態度」は約半数は自立していると回答しており,目標ラダーが低くても社会人としての意識は高いことが伺えた。各項目別の比較では,2群間では有意差を認めない項目も存在しており,当院のラダー表では行動目標の難易度が項目別に異なる可能性が示唆され,行動指針別の行動目標を検討する必要が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
CEPTのような一指標を活用し,理学療法部門の責任者が各施設の卒後教育目標を後方視的に調査することは重要と思われ,卒後教育システムの構築に役立つものと考えられた。