第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 セレクション » 基礎理学療法 セレクション

生体評価学,運動生理学

Fri. May 30, 2014 3:20 PM - 5:05 PM 第4会場 (3F 302)

座長:中山彰博(帝京科学大学医療科学部理学療法学科), 磯貝香(常葉大学保健医療学部理学療法学科)

基礎 セレクション

[0401] レーザーを用いた荷重位での後足部アライメント測定法の検討(第一報)

大西忠輔1, 和田健征1, 三沢貴博2, 肥田光正3, 佐藤満4, 井野秀一5, 中村幸男6, 本田哲三7 (1.昭和伊南総合病院リハビリテーション技術科, 2.昭和伊南総合病院放射線技術科, 3.あそか苑訪問看護ステーション, 4.昭和大学保健医学部, 5.独立行政法人産業技術総合研究所, 6.信州大学医学部附属病院整形外科, 7.昭和伊南総合病院リハビリテーション科)

Keywords:荷重位測定, 距骨下関節, レーザー 

【はじめに】
距骨下関節面の形状は個人差が大きく,運動軸の位置も偏倚がきわめて大きいため,距骨下関節の動きを正確に測定することは困難である。しかし,距骨下関節の動きを知ることは運動連鎖を考える上で重要な要素である。
そこで我々は,臨床現場でも簡易に実施できる荷重位での距骨下関節内外反の程度を測定する方法を考案し,レントゲン撮影で得られたデータと比較することにより,本測定方法の妥当性を検討した。
【方法】
本研究における被験者は,変形性膝関節症など整形疾患を既往とする16人(男性3名,女性13名,年齢73.8±9.9歳,身長155.4±9.5cm,体重56.6±12.1 kg)である。
単純X線を用いた荷重肢位でのレントゲン撮影法は,両足の間隔を自然肢位とし,股関節を内旋させ両足部の長軸(第二趾と踵の中心)が平行になるような立位姿勢にて,Cobey(1976)の後足部レントゲン撮影方法を用いた。その後,レントゲン画像上で距骨滑車関節面の中点から下した垂直線に対して踵骨軸(踵骨の中心線)がなす角度を計測し,踵骨の内反および外反の角度とみなした。
体表からの計測においては,Elveru(1988)らが行った距骨下関節計測方法(腹臥位・非荷重位)に従い,新たに踵骨の外輪郭を触診しやすい踵遠位1/3を除いた部分に,踵骨近位から遠位にかけて踵骨内外側を2等分する3点を等間隔でマークした。その後,レントゲン撮影法と同じ方法での立位姿勢になり,外果中心より1cm近位の高さのアキレス腱の中心を距骨滑車関節面の中心とみなし,その位置から床への垂直なレーザー(クロスラインレーザーQuigo:BOSCH社製)を照射した。踵骨内外反の判定には踵骨内外側を2等分した3つの中点が全てレーザー上にあるものを内外反中間位とし,レーザーに対して3点全て外側にある場合を外反,2点の場合をやや外反,1点だけの場合を少し外反とし,内反についても同様の基準とし,計7群に分類した。統計処理は,XLSTAT(Addinsoft社製)を用い,レントゲン撮影により得られた踵骨内外反の角度とレーザーを使用して計測した踵骨内外反の程度の関係性に対してスピアマン順位相関係数を使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮】
実験の開始および参加にあたり,事前に実験の趣旨を口頭にて説明し,対象者の同意を得た上で実験をおこなった。本実験は昭和伊南総合病院倫理委員会で承認されている。
【結果】
レントゲン撮影により得られた踵骨内外反角度とレーザーを使用して計測した踵骨内外反の程度には負の強い相関が認められた(r=-0.83,P=0.0002)。なお,レーザー照射に伴う有害事象は全例で認められなかった。
【考察】
これまで日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会が制定する足部の内がえしと外がえしの基本軸は下腿軸への垂直線,移動軸は足底面であり,距骨下関節を計測する上では,足底面は横足根関節及び足根中足関節を含むため,純粋に距骨下関節の内外反を反映する計測方法ではない。さらに荷重位での距骨下関節の角度を計測することは困難であった。
本研究の結果からレントゲン撮影による踵骨内外反角度とレーザーを使用して計測した踵骨内外反の程度には高い相関があることが分かり,体表からレーザーを使用することで踵骨内外反の程度を正確にとらえることが可能であることを示唆した。
よって,レーザーを使用する計測方法は荷重位での距骨下関節の動きが強く反映されたものであると推測され,被爆も生じない安全で簡易的な荷重位での距骨下関節の動きを知る上で有用な評価方法であると思われる。
また,荷重位での距骨下関節の動きを知ることは臨床において,歩行における重心移動などのダイナミックな動きの推測に役立つほか,近隣する筋骨格系の問題を知る上での手がかりとなりえる。
今後は,レーザーを用いた本研究実施方法に関する信頼性や再現性を検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての臨床的意義】
二足直立歩行を行う人間は下半身と上半身,それに伴う身体重心位置の変化及び床反力によって多くを制御することで,身体の様々な部分にメカニカルなストレスが加わり障害を引き起こす。そのため,足部からの運動連鎖,障害発生のメカニズムを力学的観点から捉えることは臨床上重要な観点であると思われる。特に距骨下関節は床反力の影響を最初に受ける関節であり,荷重位での距骨下関節の内外反の程度を正確に測定することの臨床的意義は理学療法士にとって大きいと思われる。