第49回日本理学療法学術大会

講演情報

発表演題 セレクション » 教育・管理理学療法 セレクション

臨床教育系,管理運営系

2014年5月30日(金) 15:20 〜 18:50 第8会場 (4F 411+412)

座長:日髙正巳(兵庫医療大学リハビリテーション学部), 酒井吉仁(富山医療福祉専門学校理学療法学科)

教育・管理 セレクション

[0416] 当院臨床実習における理学療法評価技能変化の傾向について

田房正寛1, 小島伸枝1, 田中良明1, 雄谷太一1, 由水麻里香1, 高村雅二2, 木村憲仁3 (1.社会医療法人社団カレスサッポロ時計台記念病院理学療法科, 2.社会医療法人社団カレスサッポロ時計台記念病院リハビリテーション部, 3.社会医療法人社団カレスサッポロ時計台記念病院総合リハビリテーションセンター)

キーワード:OSCE, 評価技能, 臨床実習

【はじめに,目的】
近年,臨床技能を評価する方法として医学教育を中心に客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination:以下OSCE)が取り入れられている。理学療法教育においても,養成校では実習前試験として,各施設では卒後教育として導入されている報告がある。当院では平成24年度より臨床実習生の理学療法評価技能において,指導者(Supervisor:以下SV)以外の第三者によるOSCEを実習初期と終期に実施する取り組みを開始した。今回,当院臨床実習における学生の理学療法評価技能変化の傾向について検討した。
【方法】
対象は平成25年4月から10月までに,当院理学療法科で総合臨床実習を行った学生20名。OSCE課題は①関節可動域検査(以下ROM-t),②徒手筋力検査(以下MMT),③形態計測,④筋緊張検査,⑤表在感覚検査,⑥深部感覚検査,⑦12段階式片麻痺機能テスト,⑧深部腱反射検査の8課題とし,各課題には6~13の小項目を設けた。小項目は,「オリエンテーション」と「検査技能」の2つの大項目から構成されている。採点方法は,課題毎に当院が作成したOSCE評価指標に則り,1~5点で採点し計40点満点とした。OSCEの試験官はSV以外で,リハビリテーション部のOSCE評価者規定基準を満たした理学療法士(理学療法士経験6年以上)1名,模擬患者は職員用評価技能試験に合格した理学療法士(理学療法士経験2年以上)1名とした。1度目は実習開始2週目に実施し,結果を学生とSVにフィードバックし指導に反映させ,2度目は実習終了1週間前に実施し,成績は試験官がつけた。検討は,合計点は対応のあるt検定,各課題点数についてはWilcoxonの符号付き順位和検定を使用し,1度目と2度目の差を比較した。有意水準は5%とした。また,大項目および全74小項目中,1度目の適正率(適正に実施できた小項目数/実施小項目数)が最も低かった5項目について,1度目と2度目における適正率の変化を検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,個人情報の管理には十分配慮し実施した。
【結果】
全対象学生合計の平均点が1度目19.35点,2度目27.80点であり有意な改善を認めた。各課題においても全ての課題で点数の向上を認め,深部感覚検査以外の7課題に有意な差を認めた。2つの大項目「オリエンテーション」,「検査技術」における適正率の変化(1度目→2度目)は,①ROM-t,②MMT,③形態計測,④筋緊張検査,⑤表在感覚検査,⑥深部感覚検査,⑦12段階式片麻痺機能テスト,⑧深部腱反射検査の順に,オリエンテーションの適正率変化は,①56%→88%,②62%→84%,③50%→75%,④65%→93%,⑤60%→90%,⑥25%→55%,⑦77%→90%,⑧77%→88%となった。同じく検査技術の適正率変化は,①58%→77%,②74%→83%,③61%→84%,④70%→83%,⑤72%→80%,⑥58%→70%,⑦75%→85%,⑧63%→82%,となった。また,1度目の適正率が下位5項目と適正率の変化(1度目→2度目)は,[1]深部感覚検査:運動開始・終了のタイミングが把握できるか確認し信頼性の向上を図る(17%→37%),[2]深部感覚検査:大まかな感覚検査を実施する(スクリーニング)(25%→55%),[3]ROM-t:正確にゴニオメーターを当てている(35%→50%),[3]ROM-t:測定結果が妥当解と比較して±5°以内である(35%→65%),[3]深部感覚検査:その他の刺激を排除できている(35%→45%)となった。
【考察】
合計点および7課題にて,2度目のOSCEでは有意な点数向上を認めた。先行研究ではOSCEが臨床技能における課題の早期発見手法として有効であると報告されており,今回の結果においても実習初期に実施された1度目のOSCEにより,早期に学生の評価技能における課題が明確となり,SVは効率的な指導が可能になったと考える。大項目の適正率変化の結果より,オリエンテーション項目は1度目のOSCEでは適正率が低いが,2度目のOSCEでは検査技術項目と比較し,改善しやすい傾向がみられた。オリエンテーションにおいては1度目のOSCE結果とフィードバックを活かし,適正率向上に結び付けやすいことが考えられる。一方,検査技術では検査の知識・理解に加え,手技の上達が不可欠であり,一定の練習量が必要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
今研究より,臨床実習において,SV以外の第三者によるOSCEの実施が理学療法評価技能向上に有効であることが示され,養成校および臨床実習施設での学生指導の一助となると考える。