[0442] 空中回転課題を加えた片脚ジャンプ着地動作における床反力の特徴
Keywords:ジャンプ着地, 床反力, 前十字靭帯
【はじめに・目的】
ジャンプ着地は,バスケットボールやハンドボールなどの競技において不可欠な動作であり,着地時の床反力の急激な増大は前十字靭帯(以下:ACL)損傷などの下肢スポーツ傷害のリスクファクターとされている(Griffin,2000;Cocharane,2007)。
実際の競技では相手をかわしながらジャンプしてシュートを打ち着地するような空中での身体回転を伴った着地動作が要求される。しかし,床反力の分析は単純な前方もしくは側方へのジャンプ着地を課題としたものが多く(Hewett,2004;Mark,2010),空中で身体の回転を伴いながら着地(空中回転着地)した際の床反力の特徴に関するデータは見当たらない。
そこで本研究では,前方や側方へのジャンプ着地に加えて空中回転着地課題において,床反力を計測し,比較することで空中回転着地時の緩衝コントロールの評価及び指導に役立つ基礎データを得ることを目的とした。
【方法】対象は健常アスリート19名(男性15名,女性4名)。参加基準:①過去2年間に体幹,下肢の手術歴がない,②過去6か月間に明らかな整形外科的,神経学的な病歴がない,③過去に膝靱帯損傷および手術歴がない。
計測課題は,20cm高のボックス上での片脚立位から60cm離れたフォースプレート(9260AA6,Kistler)上に最小限のジャンプで片脚着地させる動作とした。ジャンプ・着地方向は前方,外側方,外回り回転,内回り回転の4種類とした。外回り,内回り回転では,フォースプレートに対して支持側下肢の外側,内側を向けて立ち,90°の回転をしながら前向きに着地するよう指示した。
解析ソフト(TRIAS,DKH)を使用してa)床反力垂直成分の最大値(体重比),b)初期接地から床反力垂直成分最大値までの時間を計測・抽出した。また単位緩衝時間あたりの垂直床反力としてaをbで除した値を算出した。
統計学的分析としては,a,b,a/bを従属変数とし,ジャンプ・着地の方法(4水準)と左右(2水準)を要因とした2元配置分散分析および多重比較を実施した。統計ソフト(SPSS ver.21)を用いて有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は東京医科歯科大学医学部付属病院倫理審査委員会によって承認された後に開始した。全ての参加者に対して研究開始前にヘルシンキ宣言の精神に基づき作成した参加説明書および同意書の内容を説明し,同意の意思を署名により確認した。
【結果】
参加者の年齢,身長,体重,BMIは各々平均で21.6歳,169.8cm,63.3kg,21.8であった。計測値の平均および標準偏差を下記に示す。
a:前方右足407±69%,前方左足414±75%,側方右足394±66%,側方左足394±81%,外回り右足417±93%,外回り左足412±76%。内回り右足419±88%,内回り左足411±82%。
b:前方右足40±12ms,前方左足38±12ms,側方右足61±12ms,側方左足65±15ms。外回り回転右足43±14ms,外回り回転左足50±23ms,内回り回転右足42±12ms,内回り回転左足40±10ms。
a/b:前方右足11910±6812,前方左足12169±5246,側方右足9356±11239,側方左足6536±2337。外回り回転右足11502±7293,外回り回転左足10690±8781。内回り回転右足10819±6732,内回り回転左足10564±3550。
b)初期接地から床反力垂直成分最大値までの時間においてジャンプ・着地の方法の効果は有意であった(p<.01)。Tukey法による多重比較の結果,平均の大小関係は外回り回転=内回り回転=前方<側方であった。その他の項目については条件の効果を認めなかった。
【考察】
空中回転着地では,側方着地と比較し初期接地から床反力垂直成分最大値までの時間が有意に低値を示した。これらの値は過去の報告による実際のACL損傷の発生タイミング17-50ms(Krosshaug,2007;Koga,2010)と一致した。空中回転着地では単純な前方や側方への着地と比べて膝の外反や回旋のモーメントアームが増大しやすいと推察される(Shin,2011;Jamison,2012)。空中回転着地時のACLにかかるストレスをコントロールするためには,膝のモーメント増減に影響しうる床反力の立ち上がり時間をコントロールすることが重要になるかもしれない。
【理学療法学研究としての意義】
今回得られた空中回転着地時の床反力計測は,単純な前方もしくは側方への着地と比べて,実際の競技特性をより考慮したものであり,得られたデータは空中回転を伴う着地動作での接地緩衝のための評価手法の発展や指導に役立つ基礎データとなりうる。空中回転課題を統制した着地における床反力データは国内外をみても見当たらない。
ジャンプ着地は,バスケットボールやハンドボールなどの競技において不可欠な動作であり,着地時の床反力の急激な増大は前十字靭帯(以下:ACL)損傷などの下肢スポーツ傷害のリスクファクターとされている(Griffin,2000;Cocharane,2007)。
実際の競技では相手をかわしながらジャンプしてシュートを打ち着地するような空中での身体回転を伴った着地動作が要求される。しかし,床反力の分析は単純な前方もしくは側方へのジャンプ着地を課題としたものが多く(Hewett,2004;Mark,2010),空中で身体の回転を伴いながら着地(空中回転着地)した際の床反力の特徴に関するデータは見当たらない。
そこで本研究では,前方や側方へのジャンプ着地に加えて空中回転着地課題において,床反力を計測し,比較することで空中回転着地時の緩衝コントロールの評価及び指導に役立つ基礎データを得ることを目的とした。
【方法】対象は健常アスリート19名(男性15名,女性4名)。参加基準:①過去2年間に体幹,下肢の手術歴がない,②過去6か月間に明らかな整形外科的,神経学的な病歴がない,③過去に膝靱帯損傷および手術歴がない。
計測課題は,20cm高のボックス上での片脚立位から60cm離れたフォースプレート(9260AA6,Kistler)上に最小限のジャンプで片脚着地させる動作とした。ジャンプ・着地方向は前方,外側方,外回り回転,内回り回転の4種類とした。外回り,内回り回転では,フォースプレートに対して支持側下肢の外側,内側を向けて立ち,90°の回転をしながら前向きに着地するよう指示した。
解析ソフト(TRIAS,DKH)を使用してa)床反力垂直成分の最大値(体重比),b)初期接地から床反力垂直成分最大値までの時間を計測・抽出した。また単位緩衝時間あたりの垂直床反力としてaをbで除した値を算出した。
統計学的分析としては,a,b,a/bを従属変数とし,ジャンプ・着地の方法(4水準)と左右(2水準)を要因とした2元配置分散分析および多重比較を実施した。統計ソフト(SPSS ver.21)を用いて有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は東京医科歯科大学医学部付属病院倫理審査委員会によって承認された後に開始した。全ての参加者に対して研究開始前にヘルシンキ宣言の精神に基づき作成した参加説明書および同意書の内容を説明し,同意の意思を署名により確認した。
【結果】
参加者の年齢,身長,体重,BMIは各々平均で21.6歳,169.8cm,63.3kg,21.8であった。計測値の平均および標準偏差を下記に示す。
a:前方右足407±69%,前方左足414±75%,側方右足394±66%,側方左足394±81%,外回り右足417±93%,外回り左足412±76%。内回り右足419±88%,内回り左足411±82%。
b:前方右足40±12ms,前方左足38±12ms,側方右足61±12ms,側方左足65±15ms。外回り回転右足43±14ms,外回り回転左足50±23ms,内回り回転右足42±12ms,内回り回転左足40±10ms。
a/b:前方右足11910±6812,前方左足12169±5246,側方右足9356±11239,側方左足6536±2337。外回り回転右足11502±7293,外回り回転左足10690±8781。内回り回転右足10819±6732,内回り回転左足10564±3550。
b)初期接地から床反力垂直成分最大値までの時間においてジャンプ・着地の方法の効果は有意であった(p<.01)。Tukey法による多重比較の結果,平均の大小関係は外回り回転=内回り回転=前方<側方であった。その他の項目については条件の効果を認めなかった。
【考察】
空中回転着地では,側方着地と比較し初期接地から床反力垂直成分最大値までの時間が有意に低値を示した。これらの値は過去の報告による実際のACL損傷の発生タイミング17-50ms(Krosshaug,2007;Koga,2010)と一致した。空中回転着地では単純な前方や側方への着地と比べて膝の外反や回旋のモーメントアームが増大しやすいと推察される(Shin,2011;Jamison,2012)。空中回転着地時のACLにかかるストレスをコントロールするためには,膝のモーメント増減に影響しうる床反力の立ち上がり時間をコントロールすることが重要になるかもしれない。
【理学療法学研究としての意義】
今回得られた空中回転着地時の床反力計測は,単純な前方もしくは側方への着地と比べて,実際の競技特性をより考慮したものであり,得られたデータは空中回転を伴う着地動作での接地緩衝のための評価手法の発展や指導に役立つ基礎データとなりうる。空中回転課題を統制した着地における床反力データは国内外をみても見当たらない。