[0447] 回復期脳卒中片麻痺患者におけるロボットスーツHAL®(Hybrid Assistive Limb®)福祉用を用いたリハビリテーションの効果の検討
Keywords:ロボットスーツHAL®福祉用, 歩行練習, 脳卒中片麻痺患者
【はじめに,目的】
現在,ロボットスーツHAL®福祉用(以下,HAL®)(CYBERDYNE株式会社)は全国の約160施設や病院に導入され,理学療法士により臨床応用されている。KubotaらやKawamotoらはHAL®装着下での歩行練習を実施し,歩行能力に向上を認めたと報告している。しかしながら,HAL®を使用したリハビリテーション(以下,リハ)の効果を通常のリハと比較した研究は少なく,HAL®の有効性については今だ不明な点が多い。そこで,本研究では脳卒中片麻痺患者におけるHAL®を用いたリハの効果を検討することを目的とする。
【方法】
研究デザインは,ベースライン期(以下,BL期),介入期で構成した群間比較デザインとした。本研究の同意が得られた患者をHAL®群と対照群にくじ引き試験を用いて割り付けた。対象は当院の回復期リハ病棟に入院し,本研究の同意が得られた脳卒中片麻痺患者であり,①発症前から歩行が可能な者,②回復期リハ病棟入棟時に歩行が自立していない者,③意識レベルがJapan Coma Scaleで1桁である者,④重篤な心肺機能障害を有さない者とした。研究プロトコルは,BL期に開始時評価を実施し,HAL®群の介入期ではHAL®を使用した歩行リハ20分間を1回とし,週3回合計12回,対照群の介入期では従来の平地歩行練習20分を1回とし,週3回合計12回実施し,介入終了時には開始時評価と同様の評価を実施した。その他の理学療法,作業療法,言語聴覚療法は継続して実施し,週3回合計12回の介入のみ規定した。本研究で使用したHAL®は単脚用であり,制御モードは,基本的にCVC(Cybernic Voluntary Control)モードを選択し,生体電位信号が出現しない場合はCAC(Cybernic Autonomous Control)モードを使用した。主要評価項目は,Functional Ambulation Category(以下,FAC)。副次評価項目は,患者情報,下肢Fugl-Meyer Assessment(以下,下肢FMA),下肢等尺性筋力(両股関節屈曲・伸展,両膝関節屈曲・伸展),Timed up and go test(以下,TUG),10m最大歩行速度,6分間歩行距離とした。統計学的解析は,BL期,介入期における各評価においては,二元配置反復測定分散分析を使用し,危険率5%未満を統計学的に有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,当院の倫理委員会の承認と筑波大学医学医療系医の倫理委員会の承認を得て実施し,患者には説明と同意を得て実施した。
【結果】
2013年2月8日~2013年9月8日に当院の回復期リハ病棟に入院した脳卒中片麻痺患者は61名であった。そのうち,33名が除外され28名をランダムに2群に割り付けた。HAL®群は14名中3名が脱落し最終的に11名,対照群は14名中3名が脱落し最終的に11名となった。平均年齢はHAL®群67.0±16.8歳,対照群75.6±13.9歳,病型は両群ともに脳梗塞6名,脳出血6名,発症後期間はHAL®群58.9±46.5日,対照群50.6±33.8日でありBL時の患者特性においては両群間で有意差を認めなかった。二元配置反復測定分散分析の結果,FACは時間要因(F値:55.577,p<0.001)と交互作用(F値:4.808,p<0.05)は有意であったが,群間要因は有意ではなかった。下肢FMA,TUG,6分間歩行距離においては,時間要因は有意であったが,群間要因や交互作用は有意ではなかった。下肢等尺性筋力,10m最大歩行速度においては,時間要因,群間要因,交互作用ともに有意ではなかった。
【考察】
回復期脳卒中片麻痺患者におけるHAL®を用いた歩行リハは,従来の平地歩行練習より明らかに優れていなかった。しかし,HAL®群は,対照群に比べて歩行能力の向上を認めた。これは,HAL®を使用したことによって,生体電位センサや床反力センサの情報をもとに歩行時の立脚相や遊脚相に応じた筋活動を適切なタイミングでアシストでき,左右対称的な歩行練習を実施することができた。このことが,歩行能力の向上に寄与したと考える。HAL®を使用した歩行リハは,歩行能力を改善できる可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,HAL®の臨床プロトコルの一案,ロボット技術を応用した歩行練習の一案であり,症例を蓄積し他の治療アプローチと比較することにより,根拠に基づく理学療法へとつながる可能性がある。
現在,ロボットスーツHAL®福祉用(以下,HAL®)(CYBERDYNE株式会社)は全国の約160施設や病院に導入され,理学療法士により臨床応用されている。KubotaらやKawamotoらはHAL®装着下での歩行練習を実施し,歩行能力に向上を認めたと報告している。しかしながら,HAL®を使用したリハビリテーション(以下,リハ)の効果を通常のリハと比較した研究は少なく,HAL®の有効性については今だ不明な点が多い。そこで,本研究では脳卒中片麻痺患者におけるHAL®を用いたリハの効果を検討することを目的とする。
【方法】
研究デザインは,ベースライン期(以下,BL期),介入期で構成した群間比較デザインとした。本研究の同意が得られた患者をHAL®群と対照群にくじ引き試験を用いて割り付けた。対象は当院の回復期リハ病棟に入院し,本研究の同意が得られた脳卒中片麻痺患者であり,①発症前から歩行が可能な者,②回復期リハ病棟入棟時に歩行が自立していない者,③意識レベルがJapan Coma Scaleで1桁である者,④重篤な心肺機能障害を有さない者とした。研究プロトコルは,BL期に開始時評価を実施し,HAL®群の介入期ではHAL®を使用した歩行リハ20分間を1回とし,週3回合計12回,対照群の介入期では従来の平地歩行練習20分を1回とし,週3回合計12回実施し,介入終了時には開始時評価と同様の評価を実施した。その他の理学療法,作業療法,言語聴覚療法は継続して実施し,週3回合計12回の介入のみ規定した。本研究で使用したHAL®は単脚用であり,制御モードは,基本的にCVC(Cybernic Voluntary Control)モードを選択し,生体電位信号が出現しない場合はCAC(Cybernic Autonomous Control)モードを使用した。主要評価項目は,Functional Ambulation Category(以下,FAC)。副次評価項目は,患者情報,下肢Fugl-Meyer Assessment(以下,下肢FMA),下肢等尺性筋力(両股関節屈曲・伸展,両膝関節屈曲・伸展),Timed up and go test(以下,TUG),10m最大歩行速度,6分間歩行距離とした。統計学的解析は,BL期,介入期における各評価においては,二元配置反復測定分散分析を使用し,危険率5%未満を統計学的に有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,当院の倫理委員会の承認と筑波大学医学医療系医の倫理委員会の承認を得て実施し,患者には説明と同意を得て実施した。
【結果】
2013年2月8日~2013年9月8日に当院の回復期リハ病棟に入院した脳卒中片麻痺患者は61名であった。そのうち,33名が除外され28名をランダムに2群に割り付けた。HAL®群は14名中3名が脱落し最終的に11名,対照群は14名中3名が脱落し最終的に11名となった。平均年齢はHAL®群67.0±16.8歳,対照群75.6±13.9歳,病型は両群ともに脳梗塞6名,脳出血6名,発症後期間はHAL®群58.9±46.5日,対照群50.6±33.8日でありBL時の患者特性においては両群間で有意差を認めなかった。二元配置反復測定分散分析の結果,FACは時間要因(F値:55.577,p<0.001)と交互作用(F値:4.808,p<0.05)は有意であったが,群間要因は有意ではなかった。下肢FMA,TUG,6分間歩行距離においては,時間要因は有意であったが,群間要因や交互作用は有意ではなかった。下肢等尺性筋力,10m最大歩行速度においては,時間要因,群間要因,交互作用ともに有意ではなかった。
【考察】
回復期脳卒中片麻痺患者におけるHAL®を用いた歩行リハは,従来の平地歩行練習より明らかに優れていなかった。しかし,HAL®群は,対照群に比べて歩行能力の向上を認めた。これは,HAL®を使用したことによって,生体電位センサや床反力センサの情報をもとに歩行時の立脚相や遊脚相に応じた筋活動を適切なタイミングでアシストでき,左右対称的な歩行練習を実施することができた。このことが,歩行能力の向上に寄与したと考える。HAL®を使用した歩行リハは,歩行能力を改善できる可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,HAL®の臨床プロトコルの一案,ロボット技術を応用した歩行練習の一案であり,症例を蓄積し他の治療アプローチと比較することにより,根拠に基づく理学療法へとつながる可能性がある。