第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 内部障害理学療法 ポスター

呼吸5

Fri. May 30, 2014 3:20 PM - 4:10 PM ポスター会場 (内部障害)

座長:小幡賢吾(岡山赤十字病院リハビリテーション科)

内部障害 ポスター

[0469] 食道癌術後患者における周術期から退院時の身体機能及び呼吸機能の変化

高木敏之, 滝澤未来, 門叶由美, 佐藤大, 斉藤友美, 西元淳司, 細谷学史, 樋田あゆみ, 佐藤弘, 高橋秀寿, 牧田茂 (埼玉医科大学国際医療センター)

Keywords:食道癌, 運動耐容能, 周術期リハビリ

【はじめに,目的】
食道癌患者に対して行われる開胸・開腹による食道癌根治術は消化器癌の中でも高度侵襲手術の一つに分類される。そのため術後の呼吸器合併症や術後臥床の遷延による身体機能低下の予防が重要視されており,周術期の積極的なリハビリテーションが推奨されている。当院でも2011年から外科的な食道癌根治術を施行する患者に対して術前からの理学療法介入と術後早期リハビリテーションを実施してきた。今回は当施設における食道癌術後患者の周術期から退院時における身体機能と呼吸機能の変化について検討したので報告する。
【方法】
2012年5月から2013年10月までに当院で食道癌切除術を施行し,術前に心肺運動負荷試験(以下CPX)や下肢筋力測定及び呼吸機能検査を実施し,術後リハビリテーションを行った後,退院前後に術前と同様の検査が実施できた患者19名(平均年齢68.2±7.7歳 男/女:18/1)とした。CPXには自転車エルゴメータを用い,安静3分間ウォーミングアップ0Watt4分間の後,15Watt/minのRamp負荷を症候限界性に実施した。その際,呼気ガス分析装置AE300S(ミナト医科学社製)にてbreath by breathによる測定を実施し,嫌気性代謝閾値(以下AT),最高酸素摂取量(以下PeakVO2/kg)を測定した。下肢筋力測定は三菱電機エンジニアリング株式会社製StrengthErgo240を用いて左右の最大脚伸展トルクを測定した。呼吸機能検査にはチェスト社製MICROSPIRO HI-801を用いて,肺活量(以下VC),努力性肺活量(以下FVC),1秒量(以下FEV1.0)を測定した。これらパラメータの術前後の値を対応のあるt検定を用いて検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
検査実施前には検査の目的・内容を十分に説明し同意を得た。
【結果】
CPXの結果AT(術前→退院時)は12.6±2.2→11.2±1.3ml/kg/min,PeakVO2/kgは21.3±3.7→16.8±3.4ml/kg/minと有意に低下していた(p<0.01)。筋力測定の結果(n=15)左右の最大脚伸展トルクは左129.5±34.9→105.5±35.2N・m,右129.6±39.9→106.5±39.3N・mと有意に低下していた(p<0.01)。呼吸機能検査の結果(n=14)VCは107.3±16.3→84.0±25.5%,FVCは104.9±16.0→75.1±24.1%,FEV1.0は111.7±22.0→86.91±32.4%といずれも有意に低下していた(p<0.01)。
【考察】
今回,当施設での食道癌術後患者の周術期から退院時における身体機能と呼吸機能の変化について検討した。術後リハビリプログラムに順じで早期離床を図り,ほとんどの患者が術後約1病日(1.3±0.8病日)には歩行練習を開始し,運動量の増加を図った後,自転車エルゴメータでの運動や筋力トレーニングを実施している(平均12.2±10.2病日)。しかし,退院時(平均35.2±28.7日)の検査の結果では身体機能や呼吸機能の低下を認めていた。食道癌根治術は開胸・開腹にて行われるため呼吸機能に対する影響は大きく,また,術後の臥床時間の遷延により筋力低下だけでなく循環機能の低下を起こし易いとされている。術後の合併症を予防し早期離床を進める事は重要であるが,入院中から積極的に有酸素トレーニングや筋力トレーニングを行い,体力の向上を図り退院後の生活に備える必要性がある。退院時の体力や筋力の低下は自宅でのADLやQOLの低下につながり,術後の身体機能の回復を目的に実際に退院時の体力や筋力の低下を自覚し不安を訴える患者は少なくない。今後は入院中のリハビリテーションの内容の検討や退院時の検査結果をもとにしたADL指導や自宅での運動指導などを行っていく必要があると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
食道癌術後患者の身体機能と呼吸機能から結果からその変化の要因を考え,退院時の機能低下を是正し,速やかな日常生活の復帰が図れるよう理学療法内容の検討をしていく。