[0479] 片脚ブリッジ力測定法の再現性と妥当性について
Keywords:ブリッジ, 地域在住高齢者, 体幹筋力
【はじめに,目的】
高齢者の身体機能を定量的に評価することは,理学療法士のみならず医療に携わるものにとって重要である。なかでも,加齢による筋力低下は上肢に比べ下肢で著明に起こることから,下肢筋力をはじめとした下肢機能全般の評価は特に重要となる。また,下肢機能の低下により転倒のリスクが高くなることから,下肢機能評価は転倒予防にも繋がると考えられる。我々は,高齢者の下肢機能を簡便に評価する方法として,市販体重計を用いたブリッジ力測定法を考案し,その臨床的有用性について報告した。しかしながら,両脚で行うブリッジ動作では課題となる動作そのものの難易度が低く,地域在住高齢者の体力指標とはなり得なかった。そこで本研究では,片脚でのブリッジ動作による評価法を用い,その再現性と妥当性について検討した。
【方法】
対象は,要支援および要介護状態でない地域在住女性高齢者34名(平均年齢71.9±5.8歳,平均体重53.8±8.2kg)の支持脚34脚とした。測定は片脚ブリッジ力の他,両脚ブリッジ力,上体起こし,膝伸展筋力,片脚立位保持時間,CS-30,FRT,TUG,長座体前屈を実施した。片脚ブリッジ力測定の開始肢位は,背臥位にて支持脚足関節中間位(底背屈0度)にて片脚ブリッジを行った。対側下肢は支持脚の膝上に位置するように脚を組ませた。両上肢は体側に付けるように指示し,合図と同時に片脚ブリッジ動作を行い,足底に設置した市販体重計を最大努力にて床へ押しつけるように指示した。測定は2回行い,最大値を代表値とした。さらに得られた最大値を体重で除したものを片脚ブリッジ力値として採用した。統計処理は,片脚ブリッジ力測定法の再現性については級内相関(Intraclass correlation coefficient;ICC)を求め,妥当性についてはピアソンの相関係数を求めて検討した。なお,有意水準5%未満を有意差ありと判断した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究として実施した。対象への説明と同意は,研究の概要を口頭および文書にて説明後,研究内容を理解し,研究参加の同意が得られた場合,書面にて自筆署名にて同意を得た,その際参加は任意であり,測定に同意しなくても何ら不利益を受けないこと,また同意後も常時同意を撤回できること,撤回後も何ら不利益を受けることがないことを説明した。
【結果】
片脚ブリッジ力測定法のICCは0.984(95%CI:0.968-0.992)であった。片脚ブリッジ力と有意な相関が認められたのは,上体起こし(r=0.507,p<0.01),CS-30(r=0.466,p<0.01),FRT(r=0.447,p<0.01),膝伸展筋力(r=0.381,p<0.05),両脚ブリッジ力(r=0.565,p<0.01)であった。また,両脚ブリッジ力と有意な相関が認められたのは,CS-30(r=0.496,p<0.01),FRT(r=0.469,p<0.01),片脚ブリッジ力(r=0.565,p<0.01)であった。
【考察】
片脚ブリッジ力は体幹筋力の指標である上体起こしと有意な正相関が認められた。一方で,両脚ブリッジ力は上体起こしとは有意な相関は認められなかった。片脚ブリッジ動作は両脚ブリッジ動作よりも狭い支持基底面内に重心を保つ必要があり,動作の難易度が高くなる。そのため,地域在住高齢者を対象とした本研究において,両脚ブリッジ力測定法よりも難易度の高い片脚ブリッジ力測定法が,より体幹筋力を反映した可能性がある。本研究結果より,片脚ブリッジ力と上体起こし,膝伸展筋力,CS-30,両脚ブリッジ力,FRTとの間に有意は正相関を認めたことから,片脚ブリッジ力が地域在住高齢者の下肢筋力,バランス能力および体幹筋力の指標になり得る可能性が示された。これらの知見より,片脚ブリッジ力測定法は高齢者の下肢筋力ならびにバランス能力に加え,体幹筋力を定量的に評価できる簡易機能評価法として臨床応用できる可能性が示された。
【理学療法学研究としての意義】
片脚ブリッジ力測定法は,特別な機器を必要としない簡便な方法である。本研究は,片脚ブリッジ力測定法が高齢者の下肢筋力・バランス能力のみならず体幹筋力を推察できる可能性を示唆した。
高齢者の身体機能を定量的に評価することは,理学療法士のみならず医療に携わるものにとって重要である。なかでも,加齢による筋力低下は上肢に比べ下肢で著明に起こることから,下肢筋力をはじめとした下肢機能全般の評価は特に重要となる。また,下肢機能の低下により転倒のリスクが高くなることから,下肢機能評価は転倒予防にも繋がると考えられる。我々は,高齢者の下肢機能を簡便に評価する方法として,市販体重計を用いたブリッジ力測定法を考案し,その臨床的有用性について報告した。しかしながら,両脚で行うブリッジ動作では課題となる動作そのものの難易度が低く,地域在住高齢者の体力指標とはなり得なかった。そこで本研究では,片脚でのブリッジ動作による評価法を用い,その再現性と妥当性について検討した。
【方法】
対象は,要支援および要介護状態でない地域在住女性高齢者34名(平均年齢71.9±5.8歳,平均体重53.8±8.2kg)の支持脚34脚とした。測定は片脚ブリッジ力の他,両脚ブリッジ力,上体起こし,膝伸展筋力,片脚立位保持時間,CS-30,FRT,TUG,長座体前屈を実施した。片脚ブリッジ力測定の開始肢位は,背臥位にて支持脚足関節中間位(底背屈0度)にて片脚ブリッジを行った。対側下肢は支持脚の膝上に位置するように脚を組ませた。両上肢は体側に付けるように指示し,合図と同時に片脚ブリッジ動作を行い,足底に設置した市販体重計を最大努力にて床へ押しつけるように指示した。測定は2回行い,最大値を代表値とした。さらに得られた最大値を体重で除したものを片脚ブリッジ力値として採用した。統計処理は,片脚ブリッジ力測定法の再現性については級内相関(Intraclass correlation coefficient;ICC)を求め,妥当性についてはピアソンの相関係数を求めて検討した。なお,有意水準5%未満を有意差ありと判断した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究として実施した。対象への説明と同意は,研究の概要を口頭および文書にて説明後,研究内容を理解し,研究参加の同意が得られた場合,書面にて自筆署名にて同意を得た,その際参加は任意であり,測定に同意しなくても何ら不利益を受けないこと,また同意後も常時同意を撤回できること,撤回後も何ら不利益を受けることがないことを説明した。
【結果】
片脚ブリッジ力測定法のICCは0.984(95%CI:0.968-0.992)であった。片脚ブリッジ力と有意な相関が認められたのは,上体起こし(r=0.507,p<0.01),CS-30(r=0.466,p<0.01),FRT(r=0.447,p<0.01),膝伸展筋力(r=0.381,p<0.05),両脚ブリッジ力(r=0.565,p<0.01)であった。また,両脚ブリッジ力と有意な相関が認められたのは,CS-30(r=0.496,p<0.01),FRT(r=0.469,p<0.01),片脚ブリッジ力(r=0.565,p<0.01)であった。
【考察】
片脚ブリッジ力は体幹筋力の指標である上体起こしと有意な正相関が認められた。一方で,両脚ブリッジ力は上体起こしとは有意な相関は認められなかった。片脚ブリッジ動作は両脚ブリッジ動作よりも狭い支持基底面内に重心を保つ必要があり,動作の難易度が高くなる。そのため,地域在住高齢者を対象とした本研究において,両脚ブリッジ力測定法よりも難易度の高い片脚ブリッジ力測定法が,より体幹筋力を反映した可能性がある。本研究結果より,片脚ブリッジ力と上体起こし,膝伸展筋力,CS-30,両脚ブリッジ力,FRTとの間に有意は正相関を認めたことから,片脚ブリッジ力が地域在住高齢者の下肢筋力,バランス能力および体幹筋力の指標になり得る可能性が示された。これらの知見より,片脚ブリッジ力測定法は高齢者の下肢筋力ならびにバランス能力に加え,体幹筋力を定量的に評価できる簡易機能評価法として臨床応用できる可能性が示された。
【理学療法学研究としての意義】
片脚ブリッジ力測定法は,特別な機器を必要としない簡便な方法である。本研究は,片脚ブリッジ力測定法が高齢者の下肢筋力・バランス能力のみならず体幹筋力を推察できる可能性を示唆した。