[0482] 介護職におけるADL介助と腰痛の併発との関連について
Keywords:介護職員, 介助動作, 腰痛
【はじめに,目的】
介護職員は職業病としての様々な関節の痛みを発症することは少なくない。先行研究では,介助動作において腰痛が多いとの報告がある。しかし,各介助動作での腰痛発生頻度と程度についての報告は少ない。本研究では介護職員における腰痛の発症頻度および程度を比較検討することで,今後の介助動作に活かす一助とすることを目的とした。
【方法】
A県内8施設の訪問介護事業所および老人保健施設等の介護職員132名を対象とした。介護動作ごとの腰痛の頻度や程度についてアンケートを実施した。アンケート内容は,「介護職経験年数」,「現職場での仕事内容」とし,ADL動作での介助による腰痛の発生頻度,腰痛の程度を5段階評価での回答とし数値化した。統計処理はエクセル統計2010を使用し,介護動作項目間の腰痛の頻度や程度をFreedman検定でその差異を比較し,またSpearmanの順位相関分析により,年齢や経験年数および各動作間の関係について検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
アンケート記入者には,研究に際してその目的の趣旨,プライバシーの保護,参加・拒否・中止の自由,分析結果の開示などについて文章にて説明し,アンケートの返送をもって同意したものとみなした。
【結果】
116名から回答を得た(87.9%)。属性は男性68名,女性47名で年齢37.3歳,介護経験年数100.2か月,現職経験年数54.6か月であった。各介助動作の腰痛発生頻度は1.20~2.11の範囲,腰痛の程度は1.30~2.48の範囲に分布していた。各動作の発生頻度および症状の程度は移乗・入浴介助,おむつ交換は相互に有意差はないが,これらの動作は食事,整容,更衣介助と比較して有意に高かった(p<0.05)。そして年齢と整容および更衣動作の発生頻度,腰痛の程度との間,介護経験年数と更衣動作の発生頻度および程度には有意な弱い相関がみられた(p<0.05)。そして各介護動作の発生頻度と程度には相互に有意な相関がみられた(p<0.05)。
【考察】
整容および更衣動作は経験年数が増えるほど整容,更衣介助で腰痛の発生頻度と程度は増加し,移動介助や入浴介助では大きな増加は見られなかった。先行研究と比較すると,腰痛が発生しやすい介助動作に関しては同様の傾向が得られたが,年齢と介護職経験年数と相関した場合,整容動作や更衣動作でも腰痛は増加することが示唆された。移乗介助や入浴介助では経験を積むほどに腰に負担のかからない介助方法を習得し,逆に整容や更衣介助の動作では腰に負担のかからない介助方法が明確になっていないため,年齢や経験年数に関わらず腰痛の発生頻度と程度が増加したと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
介護職の腰痛の予防に関しての指導の一助となると考えられた。
介護職員は職業病としての様々な関節の痛みを発症することは少なくない。先行研究では,介助動作において腰痛が多いとの報告がある。しかし,各介助動作での腰痛発生頻度と程度についての報告は少ない。本研究では介護職員における腰痛の発症頻度および程度を比較検討することで,今後の介助動作に活かす一助とすることを目的とした。
【方法】
A県内8施設の訪問介護事業所および老人保健施設等の介護職員132名を対象とした。介護動作ごとの腰痛の頻度や程度についてアンケートを実施した。アンケート内容は,「介護職経験年数」,「現職場での仕事内容」とし,ADL動作での介助による腰痛の発生頻度,腰痛の程度を5段階評価での回答とし数値化した。統計処理はエクセル統計2010を使用し,介護動作項目間の腰痛の頻度や程度をFreedman検定でその差異を比較し,またSpearmanの順位相関分析により,年齢や経験年数および各動作間の関係について検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
アンケート記入者には,研究に際してその目的の趣旨,プライバシーの保護,参加・拒否・中止の自由,分析結果の開示などについて文章にて説明し,アンケートの返送をもって同意したものとみなした。
【結果】
116名から回答を得た(87.9%)。属性は男性68名,女性47名で年齢37.3歳,介護経験年数100.2か月,現職経験年数54.6か月であった。各介助動作の腰痛発生頻度は1.20~2.11の範囲,腰痛の程度は1.30~2.48の範囲に分布していた。各動作の発生頻度および症状の程度は移乗・入浴介助,おむつ交換は相互に有意差はないが,これらの動作は食事,整容,更衣介助と比較して有意に高かった(p<0.05)。そして年齢と整容および更衣動作の発生頻度,腰痛の程度との間,介護経験年数と更衣動作の発生頻度および程度には有意な弱い相関がみられた(p<0.05)。そして各介護動作の発生頻度と程度には相互に有意な相関がみられた(p<0.05)。
【考察】
整容および更衣動作は経験年数が増えるほど整容,更衣介助で腰痛の発生頻度と程度は増加し,移動介助や入浴介助では大きな増加は見られなかった。先行研究と比較すると,腰痛が発生しやすい介助動作に関しては同様の傾向が得られたが,年齢と介護職経験年数と相関した場合,整容動作や更衣動作でも腰痛は増加することが示唆された。移乗介助や入浴介助では経験を積むほどに腰に負担のかからない介助方法を習得し,逆に整容や更衣介助の動作では腰に負担のかからない介助方法が明確になっていないため,年齢や経験年数に関わらず腰痛の発生頻度と程度が増加したと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
介護職の腰痛の予防に関しての指導の一助となると考えられた。