[0487] 脊椎圧迫骨折に対するBallon Kyphoplasty後の罹患椎体の変化
Keywords:BKP, 椎体, ADL
【はじめに,目的】
脊椎圧迫骨折は骨粗鬆性骨折疾患において,高齢化社会の進行に伴い増加が予想されている疾患である。本邦において新しい手術法としてBallon Kyphoplasty(以下BKP)が認可され,低侵襲かつ早期に除痛・離床が可能となり,保存療法時に起こりうる廃用の進行予防や早期の生活復帰が期待されている。保存療法では,罹患椎体(以下椎体)の圧潰変形が起こりえるため,その予防に対する理学療法介入の重要性が報告されている。しかしBKPは本邦で認可されて間もないことも背景にあり,BKP後の椎体の復元と圧潰変形との理学療法の関係は,保存療法時と比べて明らかではない。そこで本研究にて,BKP後の椎体の変化を明らかにし,さらにADLとの関連をみることでBKP後の理学療法における基礎的データの一助にすることを目的とし,検討したので報告する。
【方法】
対象は2013年5月から2013年8月にかけて当院でBKPを施行した7名(平均年齢80.9±8.6歳,男性1名,女性6名)とし,Th11が2名,Th12が2名,L2が2名,L3が1名であった。平均在院日数は51.6±53.0日であった。方法は椎体の評価項目にX線側面画像を用い,福島らの報告に順じて,椎体後縁高をa,最圧潰部椎体高をb,椎体圧潰率を(a-b)/a×100%,局所後弯角を椎体の終板の成す角α°として測定し,項目毎に術前,術直後,術後6~8週(撮影日の平均は術後46.1±6.5日)の3群間で比較した。ADLの評価はFIM運動項目にて評価し,術前・退院時の点数と3群の各項目との相関を検討した。統計処理はFriedman検定,Spearmanの相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言及び当院倫理委員会に則り,患者の同意を得ている。
【結果】
椎体後縁高の平均は,術前28.4±2.8mm,術直後31.0±2.8mm,術後6~8週28.0±4.0mm(以下同順)であり有意差は認められなかった。最圧潰部椎体高の平均は,20.5±5.2mm,25.1±3.3mm,23.3±3.1mmであり,3群間で有意差が認められた(P<0.05)。椎体圧潰率の平均は28.2±12.7%,18.8±6.8%,16.3±8.6%,局所後弯角の平均は29.7±6.2°,30.6±10.1°,35.3±9.3°であり,それぞれ有意差は認められなかった。FIM運動項目の平均は術前51.0±27.2,退院時81.3±8.4であり,各項目との相関は認められなかった。
【考察】
最圧潰部椎体高はBKPにより術直後に高くなり,術後6~8週には減少することが認められた。脊椎圧迫骨折後の椎体の圧潰変形は,骨癒合が完了する受傷から8~12週までの期間に2~3日または2~3週かけて完成していく特徴がある。今回,X線画像上に術後6~8週後の椎体の変化として充填されたセメント部ではなく,椎体の骨部の圧潰が認められた対象症例があり,骨癒合が完了する前に骨部への負荷が加わり,最圧潰部椎体高が減少したと考えられた。椎体高の減少は腰背部痛の増強,脊柱後弯変形を助長することは報告されている。そのため骨癒合は完了していない術後6~8週後では,BKP後であっても最圧潰部への負荷を考慮した理学療法を展開していく必要があることが示唆された。椎体後縁高,椎体圧潰率,局所後弯角に有意差が認められなかったことは,X線画像上での測定の際の誤差の影響,骨折の変形型による影響が考えられた。術前・退院時のFIM運動項目が3群の各項目との相関を認めなかったことは,術前・退院時のADLは椎体の変化に影響を及ぼさないことが示唆された。椎体の圧潰変形は,脊柱起立筋の筋力低下,身体機能の低下が関与することが報告されており,今回,FIM運動項目に示される基本的なADLよりも,ADLに密接する身体機能レベルでの要因に着目し,理学療法を展開していく必要性が考えられた。今回,全対象症例に退院時のFIM運動項目の上昇を認めたが,向上したADLの中で適切な椎体への圧潰防止を考慮した動作,身体機能の維持・向上が獲得されていなければ,椎体の圧潰が進行し,ADLの低下を招いてしまう可能性がある。よって今後は,最圧潰部椎体高が減少した時点での身体機能評価,疼痛の評価を加えて検討する必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
今回,術後6~8週にはBKPにより増加した最圧潰部の椎体高が減少した。脊椎圧迫骨折においてBKP後であっても最圧潰部の椎体高の減少を予防するためにADL,身体機能に着目した理学療法を展開していく必要性が示唆され,BKP後の理学療法の一助となり,理学療法研究としての意義があると考える。
脊椎圧迫骨折は骨粗鬆性骨折疾患において,高齢化社会の進行に伴い増加が予想されている疾患である。本邦において新しい手術法としてBallon Kyphoplasty(以下BKP)が認可され,低侵襲かつ早期に除痛・離床が可能となり,保存療法時に起こりうる廃用の進行予防や早期の生活復帰が期待されている。保存療法では,罹患椎体(以下椎体)の圧潰変形が起こりえるため,その予防に対する理学療法介入の重要性が報告されている。しかしBKPは本邦で認可されて間もないことも背景にあり,BKP後の椎体の復元と圧潰変形との理学療法の関係は,保存療法時と比べて明らかではない。そこで本研究にて,BKP後の椎体の変化を明らかにし,さらにADLとの関連をみることでBKP後の理学療法における基礎的データの一助にすることを目的とし,検討したので報告する。
【方法】
対象は2013年5月から2013年8月にかけて当院でBKPを施行した7名(平均年齢80.9±8.6歳,男性1名,女性6名)とし,Th11が2名,Th12が2名,L2が2名,L3が1名であった。平均在院日数は51.6±53.0日であった。方法は椎体の評価項目にX線側面画像を用い,福島らの報告に順じて,椎体後縁高をa,最圧潰部椎体高をb,椎体圧潰率を(a-b)/a×100%,局所後弯角を椎体の終板の成す角α°として測定し,項目毎に術前,術直後,術後6~8週(撮影日の平均は術後46.1±6.5日)の3群間で比較した。ADLの評価はFIM運動項目にて評価し,術前・退院時の点数と3群の各項目との相関を検討した。統計処理はFriedman検定,Spearmanの相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言及び当院倫理委員会に則り,患者の同意を得ている。
【結果】
椎体後縁高の平均は,術前28.4±2.8mm,術直後31.0±2.8mm,術後6~8週28.0±4.0mm(以下同順)であり有意差は認められなかった。最圧潰部椎体高の平均は,20.5±5.2mm,25.1±3.3mm,23.3±3.1mmであり,3群間で有意差が認められた(P<0.05)。椎体圧潰率の平均は28.2±12.7%,18.8±6.8%,16.3±8.6%,局所後弯角の平均は29.7±6.2°,30.6±10.1°,35.3±9.3°であり,それぞれ有意差は認められなかった。FIM運動項目の平均は術前51.0±27.2,退院時81.3±8.4であり,各項目との相関は認められなかった。
【考察】
最圧潰部椎体高はBKPにより術直後に高くなり,術後6~8週には減少することが認められた。脊椎圧迫骨折後の椎体の圧潰変形は,骨癒合が完了する受傷から8~12週までの期間に2~3日または2~3週かけて完成していく特徴がある。今回,X線画像上に術後6~8週後の椎体の変化として充填されたセメント部ではなく,椎体の骨部の圧潰が認められた対象症例があり,骨癒合が完了する前に骨部への負荷が加わり,最圧潰部椎体高が減少したと考えられた。椎体高の減少は腰背部痛の増強,脊柱後弯変形を助長することは報告されている。そのため骨癒合は完了していない術後6~8週後では,BKP後であっても最圧潰部への負荷を考慮した理学療法を展開していく必要があることが示唆された。椎体後縁高,椎体圧潰率,局所後弯角に有意差が認められなかったことは,X線画像上での測定の際の誤差の影響,骨折の変形型による影響が考えられた。術前・退院時のFIM運動項目が3群の各項目との相関を認めなかったことは,術前・退院時のADLは椎体の変化に影響を及ぼさないことが示唆された。椎体の圧潰変形は,脊柱起立筋の筋力低下,身体機能の低下が関与することが報告されており,今回,FIM運動項目に示される基本的なADLよりも,ADLに密接する身体機能レベルでの要因に着目し,理学療法を展開していく必要性が考えられた。今回,全対象症例に退院時のFIM運動項目の上昇を認めたが,向上したADLの中で適切な椎体への圧潰防止を考慮した動作,身体機能の維持・向上が獲得されていなければ,椎体の圧潰が進行し,ADLの低下を招いてしまう可能性がある。よって今後は,最圧潰部椎体高が減少した時点での身体機能評価,疼痛の評価を加えて検討する必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
今回,術後6~8週にはBKPにより増加した最圧潰部の椎体高が減少した。脊椎圧迫骨折においてBKP後であっても最圧潰部の椎体高の減少を予防するためにADL,身体機能に着目した理学療法を展開していく必要性が示唆され,BKP後の理学療法の一助となり,理学療法研究としての意義があると考える。