第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

骨・関節9

Fri. May 30, 2014 3:20 PM - 4:10 PM ポスター会場 (運動器)

座長:山崎重人(マツダ株式会社マツダ病院リハビリテーション科)

運動器 ポスター

[0490] 胸腰椎圧迫骨折の在院日数に関与する因子の検討

牛島武1, 上原一輝1, 松元一将1, 山内ゆかり1, 井上美由紀1, 児玉淳1, 今屋将美1, 東利雄1, 三宮克彦1, 當利賢一2, 清田克彦3, 髙井聖子3 (1.熊本機能病院総合リハビリテーション部理学療法課, 2.介護老人保健施設清雅苑, 3.熊本機能病院整形外科)

Keywords:胸腰椎圧迫骨折, 在院日数, 早期離床

【はじめに,目的】
高齢者における脆弱性骨折の中で脊椎圧迫骨折は,最も頻度の高い骨折とされている。65歳以上の脊椎骨折入院患者に対する診療実態についての全国調査では,整形外科患者の約10%を占めていたとされている。臨床においては,脊椎圧迫骨折を繰り返し移動及び日常生活動作(以下ADL)能力が低下し,自宅復帰困難となり入院期間が長期化することがある。胸腰椎圧迫骨折の治療ついては,保存的加療を選択されることが多い。安静期間は軽症から重症まで幅広いため症状に応じ設定される。そのため,系統的な治療体系が確立しておらず入院が長期化することも少なくない。そこで,在院日数に関与する因子の検討を行ったので考察を加え報告する。
【方法】
対象は,2011年4月~2012年3月に当院入院の胸腰椎圧迫骨折患者のうち65歳以上で椎体後壁損傷および重篤な合併症を除いた83例とした。調査内容は,年齢,発症から入院までの日数,発症前移動能力,入院から離床までの日数,歩行練習開始までの日数,入院時BMI・FIM合計点・アルブミン値・ヘモグロビン値・痴呆性老人の日常生活自立判断基準(以下認知度)・食事形態と平均主食喫食率・平均副食喫食率について調査を行った。入院時認知度は,正常群(正常,I)と認知度低下群(II~IV,M),入院時食事形態では,常食形態かそれ以外(軟菜形態,キザミ食形態),発症前移動能力は杖歩行以上と支持歩行以下として調査を行った。統計解析にて在院日数を目的変数,調査項目を説明変数として重回帰分析(変数増減法)を行った。なお,統計学的有意水準は危険率5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
当院の臨床研究審査委員会の承認を得た。
【結果】
項目の中央値は,在院日数46日,年齢80歳,発症から入院までの日数0日,入院から離床までの日数6日,歩行練習開始までの日数12日,入院時BMI22.7kg/m2,FIM合計点82点,アルブミン値3.7g/dl,ヘモグロビン値12.4 g/dl,平均主食喫食率83.3%,平均副食喫食率83.3%であった。発症前移動能力は杖歩行以上74人,支持歩行以下9人,食事形態は常食形態60人,それ以外23人,認知度は正常69人,低下14人であった。在院日数を目的変数とした重回帰分析の結果は,年齢(<0.01),歩行練習開始までの日数(<0.01),入院から離床までの日数(<0.01)の3項目が抽出された。標準偏回帰係数は,0.56,0.27,0.17であり,VIFは2.70,4.48,3.51であった。その決定係数(修正R2乗)は0.89であった。
【考察】
在院日数に関与する因子として,年齢,歩行練習開始までの日数,入院から離床までの日数の3項目が抽出された。理学療法を進めるにあたって,椎体の変形を防ぎ骨癒合を得ることや偽関節を発症させないこと,疼痛コントロール,神経麻痺を発症させないこと,ADLをできるだけ低下させずに日常生活に復帰することが重要となる。合併症を予防するため保存療法は3~4週間ベッド上安静を基本とされている。しかし千葉らは,3週間の安静をとらせても椎体の変形や偽関節を予防できなかったと報告している。また,長町らは3週間の安静臥床にて有意な骨密度と筋力の低下がみられたと報告しており長期安静の必要性が低いと考える。早期離床と疼痛との関係でも,山崎らは早期離床においてVASの増悪はなかったと報告している。早期離床を図ることは運動機能維持をする上で重要であり,ADL能力も維持されることが期待される。さらに,田中らは早期の歩行自立が在院日数に影響を与えていたと報告している。今回の結果より,入院経過において入院後早期の離床,早期歩行練習の介入が在院日数を長期化させないと考える。今後は,筋力などその他の因子についても調査・検討を行いたい。
【理学療法学研究としての意義】
在院日数の長期化を防ぐには,本研究で得られた結果より早期離床,早期歩行練習を行うことが重要と考える。