[0513] 一次予防高齢者に対する5年間の運動介入が運動機能,健康関連QOLに与える影響
キーワード:長期効果, 運動機能, 健康関連QOL
【はじめに,目的】
一次予防高齢者においては,運動機能面の維持のみでなく,「生きがい」を反映した生活の質(quality of life:QOL)の維持,改善を企図した施策の充実が必要である。高齢者を対象とした運動介入による運動機能向上や健康関連QOLの改善を示した報告は数多くある。その中でも集団での運動介入がQOLと関連する精神機能の賦活に効果的であるとの報告もあるが,短期間の介入効果を言及していることが多い。そこで本研究では,一次予防高齢者に対する長期間の運動介入が運動機能,健康関連QOLに与える影響を経時的変化から検討することを目的とした。
【方法】
平成19年9月から当施設が実施している一次予防高齢者を対象とした中央開催型の運動事業参加者のうち,5年以上参加している20名(男性2名,女性18名,参加開始時の平均年齢74.0±4.8歳)を本研究の対象者とした。事業は月2回の通年開催で,運動内容はストレッチ,筋力トレーニング,バランストレーニングから構成されており,1回につき90分程度の集団で行うプログラムとなっている。調査項目は,問診項目として,GDS-15,鈴木らの転倒アセスメント,SF-36を調査し,SF-36に関しては8項目の下位尺度,身体的健康を表すサマリースコア(PCS),精神的健康を表すサマリースコア(MCS)を算出した。運動機能評価として握力,開眼片脚立位,椅子起立時間,Timed Up and Goの4項目を測定した。調査は,初回時,1年後(1Y),2年後(2Y),3年後(3Y),4年後(4Y),5年後(5Y)の計6回とし,それぞれの経時的変化を検討した。統計解析は反復測定分散分析を用いて検討を行い,有意差を認めた場合はBonferroni法を用いた多重比較を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には,事前に研究の主旨と目的を説明。この際,プライバシーの保持,参加途中での研究協力が断れることを説明し,研究参加に同意を得た。
【結果】
事業への参加率は79.4±11.7%であった。主効果の認められた項目はGDS,SF-36の下位尺度のうちVT(活力),MH(心の健康),運動機能では椅子起立時間であった。その後の多重比較において,GDS(点)では初回時(2.3±2.8)と比較して3Y(1.3±2.2),4Y(1.1±1.6)に有意な改善を認めた。VTでは,3Y(66.9±25.0)と比較して5Y(73.8±23.6)に有意な改善を認めた。MHでは初回時(64.3±21.5)と比較して4Y(79.0±18.3),5Y(76.0±20.0)に有意な改善を認めた。椅子起立時間(秒)では初回時(6.4±0.9)と比較して2Y(5.5±0.9),3Y(5.2±1.2),5Y(4.7±1.2),1Y(5.6±1.5)と比較して5Y,2Yと比較して5Y,3Yと比較して5Yに有意な改善を認めた。
【考察】
運動機能面に関しては,椅子起立時間を除いて経時的変化に主効果は認められず,開始時の運動機能水準を5年間維持していた。また,椅子起立時間においては,早い段階で向上しそのまま維持することが示され,下肢筋力に対する運動介入効果が示唆された。健康関連QOLに関しては,精神的健康度を示すVT,MHを除いて主効果は認められず,開始時の水準を維持していた。VT,MHに関して,改善したことが示されたことで,長期的な運動介入により精神的健康度の向上が図れることが示唆された。また,GDSにおいても同様のことがいえ,一次予防高齢者において,長期間運動介入を行うことは,運動機能並びに,身体的健康度の維持,そして精神的健康感,心理面に対して肯定的な影響を与える可能性があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
一次予防高齢者に対する長期間の運動介入が運動機能面の維持だけでなく,健康関連QOL,特に精神的側面の向上に寄与することが明らかになったことは,今後の介護予防に取り組む上で,貴重な資料となりうると考える。
一次予防高齢者においては,運動機能面の維持のみでなく,「生きがい」を反映した生活の質(quality of life:QOL)の維持,改善を企図した施策の充実が必要である。高齢者を対象とした運動介入による運動機能向上や健康関連QOLの改善を示した報告は数多くある。その中でも集団での運動介入がQOLと関連する精神機能の賦活に効果的であるとの報告もあるが,短期間の介入効果を言及していることが多い。そこで本研究では,一次予防高齢者に対する長期間の運動介入が運動機能,健康関連QOLに与える影響を経時的変化から検討することを目的とした。
【方法】
平成19年9月から当施設が実施している一次予防高齢者を対象とした中央開催型の運動事業参加者のうち,5年以上参加している20名(男性2名,女性18名,参加開始時の平均年齢74.0±4.8歳)を本研究の対象者とした。事業は月2回の通年開催で,運動内容はストレッチ,筋力トレーニング,バランストレーニングから構成されており,1回につき90分程度の集団で行うプログラムとなっている。調査項目は,問診項目として,GDS-15,鈴木らの転倒アセスメント,SF-36を調査し,SF-36に関しては8項目の下位尺度,身体的健康を表すサマリースコア(PCS),精神的健康を表すサマリースコア(MCS)を算出した。運動機能評価として握力,開眼片脚立位,椅子起立時間,Timed Up and Goの4項目を測定した。調査は,初回時,1年後(1Y),2年後(2Y),3年後(3Y),4年後(4Y),5年後(5Y)の計6回とし,それぞれの経時的変化を検討した。統計解析は反復測定分散分析を用いて検討を行い,有意差を認めた場合はBonferroni法を用いた多重比較を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には,事前に研究の主旨と目的を説明。この際,プライバシーの保持,参加途中での研究協力が断れることを説明し,研究参加に同意を得た。
【結果】
事業への参加率は79.4±11.7%であった。主効果の認められた項目はGDS,SF-36の下位尺度のうちVT(活力),MH(心の健康),運動機能では椅子起立時間であった。その後の多重比較において,GDS(点)では初回時(2.3±2.8)と比較して3Y(1.3±2.2),4Y(1.1±1.6)に有意な改善を認めた。VTでは,3Y(66.9±25.0)と比較して5Y(73.8±23.6)に有意な改善を認めた。MHでは初回時(64.3±21.5)と比較して4Y(79.0±18.3),5Y(76.0±20.0)に有意な改善を認めた。椅子起立時間(秒)では初回時(6.4±0.9)と比較して2Y(5.5±0.9),3Y(5.2±1.2),5Y(4.7±1.2),1Y(5.6±1.5)と比較して5Y,2Yと比較して5Y,3Yと比較して5Yに有意な改善を認めた。
【考察】
運動機能面に関しては,椅子起立時間を除いて経時的変化に主効果は認められず,開始時の運動機能水準を5年間維持していた。また,椅子起立時間においては,早い段階で向上しそのまま維持することが示され,下肢筋力に対する運動介入効果が示唆された。健康関連QOLに関しては,精神的健康度を示すVT,MHを除いて主効果は認められず,開始時の水準を維持していた。VT,MHに関して,改善したことが示されたことで,長期的な運動介入により精神的健康度の向上が図れることが示唆された。また,GDSにおいても同様のことがいえ,一次予防高齢者において,長期間運動介入を行うことは,運動機能並びに,身体的健康度の維持,そして精神的健康感,心理面に対して肯定的な影響を与える可能性があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
一次予防高齢者に対する長期間の運動介入が運動機能面の維持だけでなく,健康関連QOL,特に精神的側面の向上に寄与することが明らかになったことは,今後の介護予防に取り組む上で,貴重な資料となりうると考える。