[0531] 大腸がんにて腹腔鏡下手術後患者に対する理学療法の必要性について
Keywords:大腸がん, 腹腔鏡下手術, 運動習慣
【はじめに,目的】
現在,外科の周術期において早期離床が様々な合併症や二次的障害の予防に繋がるという報告は多く,実践されている施設が多い。また,大腸がんの術式は腹腔鏡下手術が施行され,低侵襲で術後の疼痛が軽く,早期の離床が実現されている。しかし,低侵襲で術後の疼痛が軽いといわれる腹腔鏡下手術施行前後におけるがん患者の運動耐容能についての報告は少ないのが現状である。また,三村氏は,加齢に伴い体力は低下する傾向を示し,運動習慣が体力の維持・向上および良好な生活習慣の獲得に影響を及ぼすことを報告している。今回我々は,大腸がんにて腹腔鏡下手術を施行した患者の手術前後の運動機能及び運動習慣について調査し,理学療法の必要性について検討したので報告する。
【方法】
対象は2012年5月から2013年3月までに当院にて大腸がんと診断され腹腔鏡下外科手術を施行し,既往歴に呼吸器疾患や心疾患が無い54名(平均年齢67.5±9.1),男性24名(平均年齢66.2±9.2),女性30名(平均年齢68.5±9.0歳)とした。また,術前ADLがBarthel lndex100点でかつ運動機能障害や認知機能障害が認められないものとした。対象者54名の運動機能指標は6分間歩行距離(6-minute walk test;6MWT)を使用し運動耐容能の評価とした。54名のうち,週2回以上,30分以上の運動を1年以上継続している者を運動習慣があるA群28名とし,それ以外の者を運動習慣がないB群26名とした。今回,術前及びリハビリ終了時の6MWT歩行距離を比較・検討した。なお,統計はウィルコクスンの符号付き順位検定を用い有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究を行う上で対象患者に対して説明し同意を得た上で実施した。
【結果】
リハビリ施行日数についてA群及びB群は有意差を認めなかった(リハビリ施行日数7.1±2.2日)。6MWTの歩行距離はA群(術前423.8±65.1m,終了時366.1±63.9m)及びB群(術前356.2±75.6m,終了時317.3±95.3m)であった。6MWTは術前A群と術前B群に有意差を認め,術後A群と術後B群も有意差を認めた。また,A群及びB群それぞれの術前後6MWTに有意差を認めた(P<0.05)。
【考察】
今回,A群とB群の術前歩行能力及び術後歩行能力に有意差を認めたことから,運動習慣のあるものは運動習慣のないものと比較し手術前後ともに運動耐容能が高いと考える。茨城県健康科学センターの調査・報告によると,運動習慣のある者は運動習慣のないものに比べ,体力的に優れ日常生活の活動能力が高いと報告している。しかし,A群及びB群ともに術前後の6MWTに有意差を認め,理学療法終了時は術前歩行能力に達していないことから,運動習慣の有無に関わらず運動耐容能は低下すると考える。また,術後A群と術後B群の平均歩行距離は2群ともに400m未満であった。6MWTにおいて400m未満の者は屋内歩行の自立を意味し,400m以上が屋外歩行自立の目安となる。今回の結果,2群において理学療法終了時の歩行能力は屋外等での実用的な活動量を得られているとは言い難いが,術後A群は術前B群と比較し平均歩行距離は良好であり,運動習慣により運動耐容能を高く維持することが出来たと考える。これらから,術前から運動習慣があることは重要であると考える。しかし,患者は退院後に通院にて化学療法等を受ける療養者となり治療により更に体力低下を招く恐れがある。よって,低侵襲である腹腔鏡下手術後でも,運動習慣や手術侵襲を問わず,早期から術後及び退院後の体力低下を視野に入れた理学療法の実施が重要であると考える。また,大腸がんにて腹腔鏡下手術を施行した患者の入院期間は短いことから,どのような理学療法及び退院時指導を実施するかが今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
外科周術期患者に対し理学療法の介入及び退院時指導を実施することは機能低下予防及び改善の為に重要であり,本研究は外科周術期患者の理学療法介入の際の一助となると考える。
現在,外科の周術期において早期離床が様々な合併症や二次的障害の予防に繋がるという報告は多く,実践されている施設が多い。また,大腸がんの術式は腹腔鏡下手術が施行され,低侵襲で術後の疼痛が軽く,早期の離床が実現されている。しかし,低侵襲で術後の疼痛が軽いといわれる腹腔鏡下手術施行前後におけるがん患者の運動耐容能についての報告は少ないのが現状である。また,三村氏は,加齢に伴い体力は低下する傾向を示し,運動習慣が体力の維持・向上および良好な生活習慣の獲得に影響を及ぼすことを報告している。今回我々は,大腸がんにて腹腔鏡下手術を施行した患者の手術前後の運動機能及び運動習慣について調査し,理学療法の必要性について検討したので報告する。
【方法】
対象は2012年5月から2013年3月までに当院にて大腸がんと診断され腹腔鏡下外科手術を施行し,既往歴に呼吸器疾患や心疾患が無い54名(平均年齢67.5±9.1),男性24名(平均年齢66.2±9.2),女性30名(平均年齢68.5±9.0歳)とした。また,術前ADLがBarthel lndex100点でかつ運動機能障害や認知機能障害が認められないものとした。対象者54名の運動機能指標は6分間歩行距離(6-minute walk test;6MWT)を使用し運動耐容能の評価とした。54名のうち,週2回以上,30分以上の運動を1年以上継続している者を運動習慣があるA群28名とし,それ以外の者を運動習慣がないB群26名とした。今回,術前及びリハビリ終了時の6MWT歩行距離を比較・検討した。なお,統計はウィルコクスンの符号付き順位検定を用い有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究を行う上で対象患者に対して説明し同意を得た上で実施した。
【結果】
リハビリ施行日数についてA群及びB群は有意差を認めなかった(リハビリ施行日数7.1±2.2日)。6MWTの歩行距離はA群(術前423.8±65.1m,終了時366.1±63.9m)及びB群(術前356.2±75.6m,終了時317.3±95.3m)であった。6MWTは術前A群と術前B群に有意差を認め,術後A群と術後B群も有意差を認めた。また,A群及びB群それぞれの術前後6MWTに有意差を認めた(P<0.05)。
【考察】
今回,A群とB群の術前歩行能力及び術後歩行能力に有意差を認めたことから,運動習慣のあるものは運動習慣のないものと比較し手術前後ともに運動耐容能が高いと考える。茨城県健康科学センターの調査・報告によると,運動習慣のある者は運動習慣のないものに比べ,体力的に優れ日常生活の活動能力が高いと報告している。しかし,A群及びB群ともに術前後の6MWTに有意差を認め,理学療法終了時は術前歩行能力に達していないことから,運動習慣の有無に関わらず運動耐容能は低下すると考える。また,術後A群と術後B群の平均歩行距離は2群ともに400m未満であった。6MWTにおいて400m未満の者は屋内歩行の自立を意味し,400m以上が屋外歩行自立の目安となる。今回の結果,2群において理学療法終了時の歩行能力は屋外等での実用的な活動量を得られているとは言い難いが,術後A群は術前B群と比較し平均歩行距離は良好であり,運動習慣により運動耐容能を高く維持することが出来たと考える。これらから,術前から運動習慣があることは重要であると考える。しかし,患者は退院後に通院にて化学療法等を受ける療養者となり治療により更に体力低下を招く恐れがある。よって,低侵襲である腹腔鏡下手術後でも,運動習慣や手術侵襲を問わず,早期から術後及び退院後の体力低下を視野に入れた理学療法の実施が重要であると考える。また,大腸がんにて腹腔鏡下手術を施行した患者の入院期間は短いことから,どのような理学療法及び退院時指導を実施するかが今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
外科周術期患者に対し理学療法の介入及び退院時指導を実施することは機能低下予防及び改善の為に重要であり,本研究は外科周術期患者の理学療法介入の際の一助となると考える。