[0533] 障害者スポーツ選手は消化器癌切除術後,復帰に影響を及ぼすのか?
キーワード:消化器癌, 障害者スポーツ, 心肺機能強化トレーニング
【目的】食道癌をはじめ消化器癌に対する内視鏡手術は近年急増し,術後患者への負担は軽減されつつある。しかし開胸および開腹を余儀なくされる切除術は侵襲が大きく,術後早期は創部痛や呼吸機能低下により離床が妨げられることが多い。また周術期の心肺機能強化トレーニングを怠ると,退院後の早期社会復帰やQOL低下が危惧される。今回,障害者スポーツで活躍中の選手が消化器癌を罹患し,開腹切除術後再び全国トップクラスへの復帰に成功した。この2症例について検証し復帰する際に留意した点について報告する。
【対象】当院で消化器癌切除術を施行され,周術期心肺機能強化トレーニングを実施した2例。いずれも術前5年以内に全国障害者スポーツ大会に出場し,術後も運動を継続して2年以内に同大会に選抜された。症例1は50代男性,胸部食道癌に対し内視鏡および開腹切除術を施行された投擲選手。障害は左足部の一部切断。術前大会参加時の体重は65Kgで,術後(復帰後)は53Kg。症例2は60代男性,肝臓癌に対し開腹切除(逆L字切開)術を施行されたフライングディスク選手。障害は左前腕切断。術前大会参加時の体重は72Kgで,術後(復帰後)は68Kgだった。
【方法】術前および術後に,全国障害者スポーツ大会に出場した際の成績をそれぞれ比較した。また周術期リハ担当PTと全国障害者スポーツ大会参加時の帯同スタッフとで情報を共有した。心肺機能強化トレーニングについては,術前に50-70%HRR負荷で1日2回エアロバイクとハンドエルゴで30分以上の有酸素運動やスクワット等筋力トレーニングを実施した。術後は翌日から離床して歩行を開始し,1週間以内でリハ室でのトレーニングを再開している。
【倫理的配慮,説明と同意】両例には競技成績と入院中の状況について報告することと,個人の特定を避けるために,参加日時や手術時期について公表しないことを説明し文書で同意を得た。周術期のトレーニングについては,本大学倫理審査会により承認されている研究の一環として行っている。
【結果】2例とも術前と術後の大会参加では5および7歳加齢し,体重は2例とも低下を認めた。症例1はソフトボール投げでは,術前55mで全国1位,術後は52.04mで1位だった。ジャベリックスローでは,術前32.22mで1位,術後は33.76mで3位と順位はさがったが距離は延長していた。症例2はフライングディスク競技のディスタンスで,術前39mで1位,術後は26.63mで4位と距離および順位で低下を認めた。アキュラシーでは術前3位,術後は2位と順位は高位となった。
【考察】障害者では健常者と比較し,日常的な活動量が少ないことが知られている。また癌患者でも,告知後の抑うつ状態や創部痛,低栄養等により易疲労が危惧される。今回2例とも周術期の運動と早期離床,早期スポーツ復帰を実践し,今もなおパフォーマンス維持向上が出来ている。症例1は消化の良い食事を少量で回数多くとるようこころがけ,大会参加中も脱水予防と体重や排便状況について確認を行った。また脊柱や肩甲帯の柔軟性を高めるためセルフストレッチを説明し,術前のフォームに近づけるよう指導したことが結果につながったと考える。症例2にもセルフストレッチや鏡での姿勢確認を指導した。また倦怠感やむくみの有無,食欲について確認し競技帯同スタッフは飲酒を控えた。結果は,正確性が求められるアキュラシーでは順位が上昇したが遠投では距離が低下した。L字切除は縦横に切開創があり,術後は脊柱伸展や回旋時に創部痛が出現し,術後の動作や姿勢に影響を及ぼすことがある。フライングディスク遠投は脊柱の可動性が重要な役割を果たすため,距離低下に至ったと考える。
【理学療法学研究としての意義】障害をもつ癌患者であっても周術期に運動を行い臓器特有の術後対応を行えば安全なスポーツ復帰可能で,継続によりパフォーマンスを維持向上できることが証明された。本報告は,普段からか活動量が低下しがちな障害者や癌患者への,スポーツ奨励の励みになると考える。
【対象】当院で消化器癌切除術を施行され,周術期心肺機能強化トレーニングを実施した2例。いずれも術前5年以内に全国障害者スポーツ大会に出場し,術後も運動を継続して2年以内に同大会に選抜された。症例1は50代男性,胸部食道癌に対し内視鏡および開腹切除術を施行された投擲選手。障害は左足部の一部切断。術前大会参加時の体重は65Kgで,術後(復帰後)は53Kg。症例2は60代男性,肝臓癌に対し開腹切除(逆L字切開)術を施行されたフライングディスク選手。障害は左前腕切断。術前大会参加時の体重は72Kgで,術後(復帰後)は68Kgだった。
【方法】術前および術後に,全国障害者スポーツ大会に出場した際の成績をそれぞれ比較した。また周術期リハ担当PTと全国障害者スポーツ大会参加時の帯同スタッフとで情報を共有した。心肺機能強化トレーニングについては,術前に50-70%HRR負荷で1日2回エアロバイクとハンドエルゴで30分以上の有酸素運動やスクワット等筋力トレーニングを実施した。術後は翌日から離床して歩行を開始し,1週間以内でリハ室でのトレーニングを再開している。
【倫理的配慮,説明と同意】両例には競技成績と入院中の状況について報告することと,個人の特定を避けるために,参加日時や手術時期について公表しないことを説明し文書で同意を得た。周術期のトレーニングについては,本大学倫理審査会により承認されている研究の一環として行っている。
【結果】2例とも術前と術後の大会参加では5および7歳加齢し,体重は2例とも低下を認めた。症例1はソフトボール投げでは,術前55mで全国1位,術後は52.04mで1位だった。ジャベリックスローでは,術前32.22mで1位,術後は33.76mで3位と順位はさがったが距離は延長していた。症例2はフライングディスク競技のディスタンスで,術前39mで1位,術後は26.63mで4位と距離および順位で低下を認めた。アキュラシーでは術前3位,術後は2位と順位は高位となった。
【考察】障害者では健常者と比較し,日常的な活動量が少ないことが知られている。また癌患者でも,告知後の抑うつ状態や創部痛,低栄養等により易疲労が危惧される。今回2例とも周術期の運動と早期離床,早期スポーツ復帰を実践し,今もなおパフォーマンス維持向上が出来ている。症例1は消化の良い食事を少量で回数多くとるようこころがけ,大会参加中も脱水予防と体重や排便状況について確認を行った。また脊柱や肩甲帯の柔軟性を高めるためセルフストレッチを説明し,術前のフォームに近づけるよう指導したことが結果につながったと考える。症例2にもセルフストレッチや鏡での姿勢確認を指導した。また倦怠感やむくみの有無,食欲について確認し競技帯同スタッフは飲酒を控えた。結果は,正確性が求められるアキュラシーでは順位が上昇したが遠投では距離が低下した。L字切除は縦横に切開創があり,術後は脊柱伸展や回旋時に創部痛が出現し,術後の動作や姿勢に影響を及ぼすことがある。フライングディスク遠投は脊柱の可動性が重要な役割を果たすため,距離低下に至ったと考える。
【理学療法学研究としての意義】障害をもつ癌患者であっても周術期に運動を行い臓器特有の術後対応を行えば安全なスポーツ復帰可能で,継続によりパフォーマンスを維持向上できることが証明された。本報告は,普段からか活動量が低下しがちな障害者や癌患者への,スポーツ奨励の励みになると考える。