[0540] 女子大学生の月経周期に伴う動的バランス能力の変化
Keywords:ウィメンズヘルス, 月経周期, バランス能力
【はじめに,目的】エストロゲンとプロゲステロンは卵胞形成や排卵などの月経に関与するだけでなく,自律神経系,筋骨格系,中枢神経系に影響するといわれている。姿勢保持能力は,視覚系,前庭系,固有感覚系の感覚情報を中枢神経系を経て筋に連絡することで成り立ち,静的バランス能力は月経周期の影響を受けると報告されている(林ら,2004)(Darlingtonら,2001)。動的バランス能力への影響を報告した研究は少なく,また外乱刺激への応答を調べた研究はみられない。一方,月経周期における運動選手のパフォーマンスや主観的コンディションの変化が複数報告されており,月経に伴う気分が競技記録に影響するとする報告もある。動的バランス能力は月経周期の影響を受ける可能性があるため,理学療法介入効果のためにも配慮すべき点である。本研究では主観的コンディションと動的バランス能力の月経周期に伴う変化およびその関係について明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は本研究に同意の得られた埼玉県立大学の女子学生で,月経周期の安定した(25~38日周期で変動6日以内,かつ正常持続日数3~7日)10名。いずれも避妊薬等の月経周期に影響の及ぶ服薬・治療を行っていない者であった。基礎体温の計測をもとに月経期・卵胞期・黄体期前半・黄体期後半の4つの時期にわけ,各時期に一回,動的バランス検査と,月経随伴症状のアセスメント用紙の記入をした。動的バランス検査にはEqui test system version7.0(Neuro Com社)を用い,sensory organization test(SOT),motor control test(MCT),adaptation test(ADT)を行った。月経随伴症状のアセスメントにはPMS(premenstrual syndrome)メモリー(月経研究会連絡協議会,1997)を用いた。統計処理はIBM SPSS statistics21を用いて,各スコアについて一元配置の反復測定による分散分析,またはFriedman検定を行い,有意差があったものについてTukey HSD法またはBonferroni法を用いて多重比較を行った。有意水準はすべて5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には研究内容について説明し同意を得た。また本研究は埼玉県立大学倫理委員会の承認を得て行った(25839号)。
【結果】月経随伴症状はPMSメモリーの総合点において中央値にて月経期58点,卵胞期53.5点,黄体期前半54点,黄体期後半55点であり,卵胞期や黄体期前半と比べて月経期に有意に点数が高かった(p<0.05)。Eui testではSOTの開眼静止立位のみに有意差がみられ(p<0.05),平均値にて月経期95.2,卵胞期96.37,黄体期前半95.72,黄体期後半95.34であり,卵胞期と比べて月経期と黄体期後半のスコアが低かった。
【考察】卵胞期や月経期前半と比べると月経期に主観的コンディションが下がることが分かった。Equit testではSOTの開眼静止立位のみに有意差が見られ,卵胞期と比べて月経期と黄体期後半に重心動揺が大きいことが分かった。動的バランス能力は月経周期の影響を受けず,静的バランス能力は影響を受けることが示唆された。これらの結果は先行研究と一致し,バランス能力の低下する時期も先行研究と一致した。閉眼静止立位では有意差が見られなかったことから視覚系への影響が考えられるが,原因は明確でなく,「眠くなる」「無気力」「気分が集中できない」などの主観的コンディションによって変化する可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】静的バランス能力は月経期と黄体期後半に低下する可能性があり,静的バランス評価の際に女性が対象の場合は時期を考慮する必要性が示唆された。また,主観的コンディションは月経期に低下し,理学療法効果に影響する可能性が考えられるため,本研究は理学療法研究としての意義がある。
【方法】対象は本研究に同意の得られた埼玉県立大学の女子学生で,月経周期の安定した(25~38日周期で変動6日以内,かつ正常持続日数3~7日)10名。いずれも避妊薬等の月経周期に影響の及ぶ服薬・治療を行っていない者であった。基礎体温の計測をもとに月経期・卵胞期・黄体期前半・黄体期後半の4つの時期にわけ,各時期に一回,動的バランス検査と,月経随伴症状のアセスメント用紙の記入をした。動的バランス検査にはEqui test system version7.0(Neuro Com社)を用い,sensory organization test(SOT),motor control test(MCT),adaptation test(ADT)を行った。月経随伴症状のアセスメントにはPMS(premenstrual syndrome)メモリー(月経研究会連絡協議会,1997)を用いた。統計処理はIBM SPSS statistics21を用いて,各スコアについて一元配置の反復測定による分散分析,またはFriedman検定を行い,有意差があったものについてTukey HSD法またはBonferroni法を用いて多重比較を行った。有意水準はすべて5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には研究内容について説明し同意を得た。また本研究は埼玉県立大学倫理委員会の承認を得て行った(25839号)。
【結果】月経随伴症状はPMSメモリーの総合点において中央値にて月経期58点,卵胞期53.5点,黄体期前半54点,黄体期後半55点であり,卵胞期や黄体期前半と比べて月経期に有意に点数が高かった(p<0.05)。Eui testではSOTの開眼静止立位のみに有意差がみられ(p<0.05),平均値にて月経期95.2,卵胞期96.37,黄体期前半95.72,黄体期後半95.34であり,卵胞期と比べて月経期と黄体期後半のスコアが低かった。
【考察】卵胞期や月経期前半と比べると月経期に主観的コンディションが下がることが分かった。Equit testではSOTの開眼静止立位のみに有意差が見られ,卵胞期と比べて月経期と黄体期後半に重心動揺が大きいことが分かった。動的バランス能力は月経周期の影響を受けず,静的バランス能力は影響を受けることが示唆された。これらの結果は先行研究と一致し,バランス能力の低下する時期も先行研究と一致した。閉眼静止立位では有意差が見られなかったことから視覚系への影響が考えられるが,原因は明確でなく,「眠くなる」「無気力」「気分が集中できない」などの主観的コンディションによって変化する可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】静的バランス能力は月経期と黄体期後半に低下する可能性があり,静的バランス評価の際に女性が対象の場合は時期を考慮する必要性が示唆された。また,主観的コンディションは月経期に低下し,理学療法効果に影響する可能性が考えられるため,本研究は理学療法研究としての意義がある。