第49回日本理学療法学術大会

講演情報

発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

健康増進・予防12

2014年5月30日(金) 16:15 〜 17:05 ポスター会場 (生活環境支援)

座長:澤田小夜子(新潟労災病院)

生活環境支援 ポスター

[0542] 排便障害に関するアンケート調査

国武ひかり (大腸肛門病センターくるめ病院)

キーワード:直腸性便秘, 便排出困難, アンケート

【はじめに,目的】
大腸肛門病専門病院で理学療法にあたる私たちは,機能性便秘の治療に携わることが多い。機能性便秘は一般的に,弛緩性便秘,痙攣性便秘,直腸性便秘に分類される。その中で,直腸性便秘は腸管輸送能に問題がなく,直腸からの便排出が困難な状態を指し,主な症状としては,排便時の過剰な息みや残便感,用手的な排便促進等が伴うことが多いと言われている(以下,「便排出困難」とする)。その原因として,感覚障害や疼痛の他に,骨盤底筋の収縮や肛門括約筋の弛緩の協調障害,排出力の不足等が挙げられる。便意出現から便排出に至る過程は随意的な身体動作を含み,理学療法の対象となり得ると思われる。しかし,本邦での直腸性便秘に対する理学療法の取り組みは少ない。そこで健常者の便排出困難の発現頻度やその要因,排便に関連する症状を把握する必要性を感じ,今回,高齢者を中心にアンケート調査を実施したので報告する。
【方法】
対象は,平成24年12月から平成25年10月にK市近郊で行った地域での講演会に参加した40歳代~90歳代1300名(男性288名,女性1012名)。対象者は講演会に自立して参加できるため,今回,健常者と定義した。アンケートは過去の文献を参考に16問からなる無記名選択回答として,講演会終了後に回収し,便排出困難あり群となし群で各項目を比較検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
また,対象者にはアンケートの結果について情報を公開し,共有することを事前に伝え,了解を得ている。
【結果】
回収率81.6%。排便に関する症状を有している割合は全体の84%であった。便排出困難の出現頻度は69.9%であった(男性72.7%,女性69.4%)。排便に関連した病院受診歴は,便秘群31.2%,便失禁群15.1%,便排出困難あり群9.6%,便排出困難なし群5.6%であった。また,便失禁があると回答した対象者の75.5%に便排出困難を伴った。便排出困難あり群では,便排出困難なし群と比較して,残便感(P<0.0001)や用手的な排便促進(P<0.0001)以外にも,便秘(P<0.0001),排便頻度(P=0.007),便性(P<0.0001),排便に要する時間(P<0.0001),腹痛(P<0.0001),空振り(便意があってトイレに行くが便が排出されない状態)(P<0.0001)の8項目において有意差を認めた。しかし,年齢,性別,出産回数,体型,肛門の手術歴,トイレ様式,排便に関する受診歴や便失禁の有無の8項目においては,両群に有意差を認めなかった。
【まとめ】
今回の調査から,便排出困難あり群の受診歴は便秘や便失禁と比べ低く,また便失禁を伴う便排出困難も多くみられ,便排出困難という病態に関する情報を広く公開していく必要性を感じた。今後もアンケート調査を継続し,その結果をもとに,便排出困難という症状の理解や対処法を含めた,排便障害に関する啓発活動を継続していきたい。また,今回取り上げた便排出困難や直腸性便秘に対する理学療法が一般的な治療としてとらえれらるように,今後,介入の在り方等を更に検討し,排便障害に対する理学療法を確立していきたい。
【理学療法学研究としての意義】