[0545] 尿失禁に対する骨盤底筋体操を継続実施するための取り組み
Keywords:尿失禁, 骨盤底筋体操, 習慣化
【はじめに,目的】
加齢に伴う骨盤底筋群の筋力低下や肥満,出産などが原因で尿失禁を経験する女性は4割にものぼる。その治療法として骨盤底筋体操の有用性が国内・国外で報告されており,ガイドラインでは推奨される治療法の第一選択として位置づけている。骨盤底筋体操は患者自身が正しく理解し継続して実施することで初めて効果が期待できる。しかし,日常生活に無理なく骨盤底筋体操を取り入れて継続実施することは困難な場合が多くみられる。そこで我々は2年前より骨盤底筋体操を継続実施するための促通ツールとしてカレンダー表を用いた取り組みを実施している。本研究ではカレンダー表を用いることによる骨盤底筋体操の継続実施効果や尿失禁に対する不安変化について検討することを目的とした。
【方法】
対象は本大学地域連携実践センターが平成24・25年度に企画した「地域と大学が一丸となり健康問題について取り組む地域健康プロジェクト」に参加した16名のうち同意の得られた健常女性12名(平均年齢68.6±8.6歳)。このうち平成24年度参加の6名をグループA,平成25年度参加の6名をグループBとした。尿失禁に対して治療中の者,婦人科系の疾病の手術歴がある者は除外した。プロジェクト初回には①尿失禁について学ぶ②骨盤底筋体操について学ぶ③骨盤底筋体操の実技指導を行い,尿失禁や骨盤底筋体操の理解と習得をはかるプログラムを実施した。骨盤底筋体操は自宅で3か月間継続するよう指導し,初回より1カ月後にフォローアッププログラム,3か月後にプロジェクト終了時の追跡調査を実施した。骨盤底筋体操指導は,「失禁の症状にあわせた予防法」(平成17年日本理学療法士協会推奨)を参考にした。なお,プロジェクト内容はグループA,Bともに同様とし,骨盤底筋体操を継続実施するための促通ツールであるカレンダー表のみ,異なるタイプのものを使用した。グループAのカレンダー表は,体操が実施できた日には「○」,できなかった日には「×」をつけるように指導した。一方,グループBのカレンダー表は,10回を1セットとし,骨盤底筋体操を1セット実施するごとに1マスを塗りつぶすよう指導した。グループBのカレンダー表は骨盤底筋体操を実施したセット回数が増えるほど,塗りつぶすマスが積み上げていくようなものを使用した。調査項目は自宅での骨盤底筋体操の継続実施効果,尿失禁に対する10段階不安評価とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は本学の倫理審査委員会の承認を得て実施し(第12017号),対象者には文書および口頭で本研究の趣旨と目的等の説明を十分に行い,参加についての自由意思による文書同意を得た。
【結果】
尿失禁有りがグループAは2名,グループBは5名であった。また,BMIはグループAが22.0±1.8,グループBが22.4±2.6であった。骨盤底筋体操の継続実施状況はグループAでは「ほとんどできなかった」1名,「週1日」1名,「週2~3日」1名,「週3~4日」1名,「毎日」2名,と個人差がみられた。一方,グループBでは「週3~4日」1名,「週5~6日」2名,「毎日」3名となり,グループAと比べて骨盤底筋体操の継続実施効果が高い結果であった。尿失禁に対する10段階不安変化の3か月間の追跡調査では,初回プログラム実施時と3ヵ月後を比較すると,グループAでは1名のみ大きく不安が増加(6ポイント)し,グループBでは多くの対象者が尿失禁に対する不安は少なく安定した状態であった。
【考察】
グループAと比べてグループBにおいて,骨盤底筋体操の継続実施を促通する効果が得られ,尿失禁に対する不安も少なく,安定した結果となった。これは,グループAよりグループBで使用したカレンダー表のほうが,骨盤底筋体操の実施成果が視覚的にわかりやすく,結果的に骨盤底筋体操を継続実施するためのモチベーションアップに繋がったのではないかと考えられる。また,各日の骨盤実施状況が一目瞭然で把握することができ,前日以上に体操を実施しよう,などの実施回数の目標が立てやすく,自宅での骨盤底筋体操を後押ししたのではないかと考える。本プログラムにより尿失禁に対する正しい理解を深め,正しい体操の実施方法を習得したこと,また,促通ツールとしてカレンダー表を用いることで骨盤底筋体操を継続実施できたことが尿失禁に対する不安の軽減にも寄与したのではないかと考える。
【理学療法学研究としての意義】
骨盤底筋体操の継続実施を目標とした促通ツールとしてカレンダー表の工夫による効果を検証した。この結果は尿失禁に対する骨盤底筋体操継続実施を促通するために意義のあるツールであると考える。
加齢に伴う骨盤底筋群の筋力低下や肥満,出産などが原因で尿失禁を経験する女性は4割にものぼる。その治療法として骨盤底筋体操の有用性が国内・国外で報告されており,ガイドラインでは推奨される治療法の第一選択として位置づけている。骨盤底筋体操は患者自身が正しく理解し継続して実施することで初めて効果が期待できる。しかし,日常生活に無理なく骨盤底筋体操を取り入れて継続実施することは困難な場合が多くみられる。そこで我々は2年前より骨盤底筋体操を継続実施するための促通ツールとしてカレンダー表を用いた取り組みを実施している。本研究ではカレンダー表を用いることによる骨盤底筋体操の継続実施効果や尿失禁に対する不安変化について検討することを目的とした。
【方法】
対象は本大学地域連携実践センターが平成24・25年度に企画した「地域と大学が一丸となり健康問題について取り組む地域健康プロジェクト」に参加した16名のうち同意の得られた健常女性12名(平均年齢68.6±8.6歳)。このうち平成24年度参加の6名をグループA,平成25年度参加の6名をグループBとした。尿失禁に対して治療中の者,婦人科系の疾病の手術歴がある者は除外した。プロジェクト初回には①尿失禁について学ぶ②骨盤底筋体操について学ぶ③骨盤底筋体操の実技指導を行い,尿失禁や骨盤底筋体操の理解と習得をはかるプログラムを実施した。骨盤底筋体操は自宅で3か月間継続するよう指導し,初回より1カ月後にフォローアッププログラム,3か月後にプロジェクト終了時の追跡調査を実施した。骨盤底筋体操指導は,「失禁の症状にあわせた予防法」(平成17年日本理学療法士協会推奨)を参考にした。なお,プロジェクト内容はグループA,Bともに同様とし,骨盤底筋体操を継続実施するための促通ツールであるカレンダー表のみ,異なるタイプのものを使用した。グループAのカレンダー表は,体操が実施できた日には「○」,できなかった日には「×」をつけるように指導した。一方,グループBのカレンダー表は,10回を1セットとし,骨盤底筋体操を1セット実施するごとに1マスを塗りつぶすよう指導した。グループBのカレンダー表は骨盤底筋体操を実施したセット回数が増えるほど,塗りつぶすマスが積み上げていくようなものを使用した。調査項目は自宅での骨盤底筋体操の継続実施効果,尿失禁に対する10段階不安評価とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は本学の倫理審査委員会の承認を得て実施し(第12017号),対象者には文書および口頭で本研究の趣旨と目的等の説明を十分に行い,参加についての自由意思による文書同意を得た。
【結果】
尿失禁有りがグループAは2名,グループBは5名であった。また,BMIはグループAが22.0±1.8,グループBが22.4±2.6であった。骨盤底筋体操の継続実施状況はグループAでは「ほとんどできなかった」1名,「週1日」1名,「週2~3日」1名,「週3~4日」1名,「毎日」2名,と個人差がみられた。一方,グループBでは「週3~4日」1名,「週5~6日」2名,「毎日」3名となり,グループAと比べて骨盤底筋体操の継続実施効果が高い結果であった。尿失禁に対する10段階不安変化の3か月間の追跡調査では,初回プログラム実施時と3ヵ月後を比較すると,グループAでは1名のみ大きく不安が増加(6ポイント)し,グループBでは多くの対象者が尿失禁に対する不安は少なく安定した状態であった。
【考察】
グループAと比べてグループBにおいて,骨盤底筋体操の継続実施を促通する効果が得られ,尿失禁に対する不安も少なく,安定した結果となった。これは,グループAよりグループBで使用したカレンダー表のほうが,骨盤底筋体操の実施成果が視覚的にわかりやすく,結果的に骨盤底筋体操を継続実施するためのモチベーションアップに繋がったのではないかと考えられる。また,各日の骨盤実施状況が一目瞭然で把握することができ,前日以上に体操を実施しよう,などの実施回数の目標が立てやすく,自宅での骨盤底筋体操を後押ししたのではないかと考える。本プログラムにより尿失禁に対する正しい理解を深め,正しい体操の実施方法を習得したこと,また,促通ツールとしてカレンダー表を用いることで骨盤底筋体操を継続実施できたことが尿失禁に対する不安の軽減にも寄与したのではないかと考える。
【理学療法学研究としての意義】
骨盤底筋体操の継続実施を目標とした促通ツールとしてカレンダー表の工夫による効果を検証した。この結果は尿失禁に対する骨盤底筋体操継続実施を促通するために意義のあるツールであると考える。