[0548] 慢性非特異的頸部痛症例における身体イメージの異常とその関連因子について
Keywords:慢性非特異的頸部痛, 身体イメージ, 2点識別覚
【はじめに,目的】
近年,複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome以下,CRPS),慢性非特異的腰痛(以下,Chronic non-specific low back pain以下,CNSLBP)及び変形性膝関節症において,身体イメージの異常や2点識別覚閾値(Two Point discrimination Threshold以下,TPD)の増加が報告されている。この身体イメージの異常やTPDの増加は痛みの慢性化に関与する中枢神経系の変化を示す重要な評価として認識されてきている。しかし,CRPSやCNSLBPなどと同様に中枢神経系が変化している可能性が指摘されている慢性非特異的頸部痛(Chronic non-specific neck pain以下,CNSNP)において,これまでに身体イメージやTPDの変化について十分に検討されていない。そこで,本研究ではCNSNP症例において頸部身体イメージの異常が存在するのかを健常者と比較し,さらに,身体イメージやTPDがどのような因子と関連するか検討した。
【方法】
対象は18歳以上75歳以下で,頸部痛が6ヶ月以上持続する男性4名,女性16名の20名(平均年齢55.9±11.7歳)を頸部痛群,頸部痛がなく頸部痛群と同程度の年齢である男性5名,女性15名の20名(平均年齢57.7±11.7歳)を対照群とした。頸部痛群の除外基準は頸部の変形が著明な者,頸椎に対する外科的手術の既往がある者,神経根性疼痛を有する者とした。評価項目は,頸部身体イメージ,頸背部のTPD,疼痛強度,Pain Catastrophizing Scale(以下,PCS),Tampa Scale for Kinesiophobia(以下,TSK)とした。頸部身体イメージはLaucheらの報告を参考に,頸部が欠けた上半身の図を用い,頸部の輪郭を対象者自身に記入させた。その際の指示は「あなたの頸部をイメージしてください。この図の欠けている部分にそのイメージを描いてください。その際,頸部には触らないでください。イメージのまま,感じるままに描いてください。感じることができない部分は描かないでください。どのように見えるかでなく,感じるままに描いてください。」とした。描かれたイメージが正常より明らかに歪んでいる場合を異常ありとし,対象者にはどのように感じたのか口頭で確認した。TPDの測定は,Mobergらの方法に準拠して行った。頸部をできる限り床面と水平にした腹臥位にて第7頸椎棘突起の高さで両側を測定した。キャリパーを脊柱に対して垂直方向にあて,2点の間隔を5mmずつ増減していき,最初に明確に2点と答えた値を記録した。測定は2回行い,値が異なる場合は小さい値を閾値として採用した。疼痛強度はVisual Analogue Scale(VAS)にて測定した。統計解析にはJMP11を使用した。頸部痛群と対照群の頸部身体イメージの異常の有無の比較をFisherの正確確立検定を用いて行った。さらに,頸部痛群を頸部身体イメージの異常の有無で2群に分け,対照群を含めた3群間でTPD,VAS,PCSおよびTSKの比較を多重比較検定を用いて行った。統計学的有意水準はすべて5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には事前に研究目的と方法について口頭で十分に説明し,同意が得られた者のみを対象とした。
【結果】
頸部痛群は対照群と比較して頸部身体イメージの異常が有意に認められた(頸部痛群10/20例,対照群1/20例,p<0.01)。そのイメージについての記述は「腫れているよう」,「膨らんでいるよう」,「へこんでいるよう」というものであった。頸部痛群のうち,頸部身体イメージの異常がある群は疼痛側,非疼痛側ともに対照群と比較してTPDの有意な増加が認められた(p<0.05)。疼痛強度,PCSおよびTSKに有意な差は認められなかった。
【考察】
身体イメージの異常やTPDの増加は一次体性感覚野を中心とした中枢神経系の異常との関連が報告されており,臨床的に簡便に評価可能であることからも有用な指標である。本研究の結果より,CNSNP症例において頸部身体イメージの異常が対照群と比較して有意に認められ,また,頸部身体イメージの異常が存在する群でTPDの有意な増加が認められたことから身体イメージの異常とTPDの関連が示唆された。よって,CRPS症例などと同様にCNSNP症例においても疼痛の慢性化や難治化に中枢神経系の変化が関与している可能性が考えられる。。
【理学療法学研究としての意義】
CNSNP症例においても身体イメージの異常やTPDの増加を認めることが明らかとなり,その病態に中枢神経系の機能異常が関与している可能性を示唆した点。
近年,複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome以下,CRPS),慢性非特異的腰痛(以下,Chronic non-specific low back pain以下,CNSLBP)及び変形性膝関節症において,身体イメージの異常や2点識別覚閾値(Two Point discrimination Threshold以下,TPD)の増加が報告されている。この身体イメージの異常やTPDの増加は痛みの慢性化に関与する中枢神経系の変化を示す重要な評価として認識されてきている。しかし,CRPSやCNSLBPなどと同様に中枢神経系が変化している可能性が指摘されている慢性非特異的頸部痛(Chronic non-specific neck pain以下,CNSNP)において,これまでに身体イメージやTPDの変化について十分に検討されていない。そこで,本研究ではCNSNP症例において頸部身体イメージの異常が存在するのかを健常者と比較し,さらに,身体イメージやTPDがどのような因子と関連するか検討した。
【方法】
対象は18歳以上75歳以下で,頸部痛が6ヶ月以上持続する男性4名,女性16名の20名(平均年齢55.9±11.7歳)を頸部痛群,頸部痛がなく頸部痛群と同程度の年齢である男性5名,女性15名の20名(平均年齢57.7±11.7歳)を対照群とした。頸部痛群の除外基準は頸部の変形が著明な者,頸椎に対する外科的手術の既往がある者,神経根性疼痛を有する者とした。評価項目は,頸部身体イメージ,頸背部のTPD,疼痛強度,Pain Catastrophizing Scale(以下,PCS),Tampa Scale for Kinesiophobia(以下,TSK)とした。頸部身体イメージはLaucheらの報告を参考に,頸部が欠けた上半身の図を用い,頸部の輪郭を対象者自身に記入させた。その際の指示は「あなたの頸部をイメージしてください。この図の欠けている部分にそのイメージを描いてください。その際,頸部には触らないでください。イメージのまま,感じるままに描いてください。感じることができない部分は描かないでください。どのように見えるかでなく,感じるままに描いてください。」とした。描かれたイメージが正常より明らかに歪んでいる場合を異常ありとし,対象者にはどのように感じたのか口頭で確認した。TPDの測定は,Mobergらの方法に準拠して行った。頸部をできる限り床面と水平にした腹臥位にて第7頸椎棘突起の高さで両側を測定した。キャリパーを脊柱に対して垂直方向にあて,2点の間隔を5mmずつ増減していき,最初に明確に2点と答えた値を記録した。測定は2回行い,値が異なる場合は小さい値を閾値として採用した。疼痛強度はVisual Analogue Scale(VAS)にて測定した。統計解析にはJMP11を使用した。頸部痛群と対照群の頸部身体イメージの異常の有無の比較をFisherの正確確立検定を用いて行った。さらに,頸部痛群を頸部身体イメージの異常の有無で2群に分け,対照群を含めた3群間でTPD,VAS,PCSおよびTSKの比較を多重比較検定を用いて行った。統計学的有意水準はすべて5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には事前に研究目的と方法について口頭で十分に説明し,同意が得られた者のみを対象とした。
【結果】
頸部痛群は対照群と比較して頸部身体イメージの異常が有意に認められた(頸部痛群10/20例,対照群1/20例,p<0.01)。そのイメージについての記述は「腫れているよう」,「膨らんでいるよう」,「へこんでいるよう」というものであった。頸部痛群のうち,頸部身体イメージの異常がある群は疼痛側,非疼痛側ともに対照群と比較してTPDの有意な増加が認められた(p<0.05)。疼痛強度,PCSおよびTSKに有意な差は認められなかった。
【考察】
身体イメージの異常やTPDの増加は一次体性感覚野を中心とした中枢神経系の異常との関連が報告されており,臨床的に簡便に評価可能であることからも有用な指標である。本研究の結果より,CNSNP症例において頸部身体イメージの異常が対照群と比較して有意に認められ,また,頸部身体イメージの異常が存在する群でTPDの有意な増加が認められたことから身体イメージの異常とTPDの関連が示唆された。よって,CRPS症例などと同様にCNSNP症例においても疼痛の慢性化や難治化に中枢神経系の変化が関与している可能性が考えられる。。
【理学療法学研究としての意義】
CNSNP症例においても身体イメージの異常やTPDの増加を認めることが明らかとなり,その病態に中枢神経系の機能異常が関与している可能性を示唆した点。