第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

骨・関節12

2014年5月30日(金) 16:15 〜 17:05 ポスター会場 (運動器)

座長:山元貴功(宮崎県立延岡病院リハビリテーション科)

運動器 ポスター

[0552] 2種類の測定機器による股関節内外旋筋力の比較検討

坂東峰鳴1, 太田恵介2, 瓜谷大輔3, 福本貴彦3 (1.医療法人貴島会貴島病院本院, 2.医療法人春秋会城山病院, 3.畿央大学健康科学部理学療法学科)

キーワード:HHD, トルクマシン, 股関節内外旋トルク

【はじめに,目的】
股関節内外旋筋力に関しては臨床上有用な評価指標は確立されておらず,簡便な評価方法の確立が必要である。筋力評価の機器としてはトルクマシンの信頼性・妥当性が報告されているが,臨床においてはハンドヘルドダイナモメータ(以下,HHD)が実用的である。しかし股関節内外旋筋力に関して両者の関係については検討されていない。そこで本研究の目的は,トルクマシンとHHDで測定した股関節内外旋トルクの関係を明らかにすることとした。
【方法】
対象は下肢に重篤な整形外科的疾患の既往のない健常者38名(男性20名,女性18名,平均年齢22.3±1.5歳)とした。測定項目は最大等尺性収縮での股関節内外旋トルクとした。測定にはトルクマシン(system3 BIODEX社)とハンドヘルドダイナモメーター(以下,HHD)(μ-tas F-100 アニマ社)を使用した。測定肢位はトルクマシンのバックレストを最大に倒した背臥位で,股関節屈伸・内外旋中間位,膝関節90°屈曲位とした。HHDでの測定もトルクマシンのシート上で行った。測定時は体幹,骨盤,大腿部をベルトで固定し,両上肢は座面両端の手すりを把持させた。測定は5秒間行い,測定間には1分間の休息を行った。HHDでの測定はベルト固定法で行い,下腿と固定柱は平行に,それらと固定ベルトは垂直になるよう設定した。パッドの高さは,いずれの機器も内外旋ともに内果の直上とした。トルクマシンとHHDの計測は別日とし,測定順序はランダムとした。測定は左右それぞれ3回ずつ測定し,予備的解析で男女ともすべての項目で左右差がないことが確認されたため,右側での測定値を解析対象とした。統計解析は内外旋トルクを体重で除した値(以下,トルク体重比)に換算し,男女別,運動方向別でt検定,ピアソンの相関係数によって測定方法間の比較検討を行った。統計ソフトはIBM SPSS statistics version20を使用した。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
測定にあたり被験者本人に対して本研究の主旨を説明し,同意を得た上で実施した。
【結果】
測定方法ごとの男女別のトルク体重比の平均値(標準誤差)は,男性の外旋でトルクマシン0.83(0.04)Nm/kg,HHD0.71(0.04)Nm/kg,内旋でトルクマシン0.52(0.04)Nm/kg,HHD0.45(0.04)Nm/kgであった。女性は外旋でトルクマシン0.55(0.03)Nm/kg,HHD0.49(0.03)Nm/kg,内旋でトルクマシン0.52(0.03)Nm/kg,HHD0.42(0.02)Nm/kgであった。トルク体重比の値は全ての項目で測定方法間での有意差を認めた。測定方法間の相関係数は,男性の外旋はr=0.90,内旋はr=0.85であり,女性の背臥位での外旋はr=0.79,内旋はr=0.75であり,全て有意に強い相関が見られた。
【考察】
HHDとトルクマシンで測定し,算出したトルク体重比は,標準誤差が低く,値を比較すると全ての値でトルクマシンがHHDを上回り,有意差が見られた。また男女とも,内外旋どちらも有意に強い相関が見られた。一般的にベルト固定法におけるHHDとトルクマシンの値の比較では信頼性・妥当性は高いとされている。しかし本研究では,測定方法間のトルク値に強い関係性はみられるが,同時に相違も認められた。奈良らは,膝関節における研究でHHDとトルクマシンの値の間に生じる誤差は,機器の精度,入力部の押し付け方,測定単位換算などの影響によるものであると報告している。本研究での測定方法間の相違が認められた理由として,これらに加え,測定方法による入力部の大きさの違い,測定方法間のモーメントアーム値の誤差が考えられる。また本研究での股関節内外旋力測定方法は膝関節を介すため,膝関節の屈伸による代償運動が起こりやすくその影響も考えられる。今後は,より信頼性・妥当性の高いデータを得られるよう,測定前のオリエンテーションを徹底することはもとより,代償運動を生じないような方法論の確立が必要である。以上のことより,今後さらに精度を高めることで,臨床的に有用なHHDにおける内外旋筋力の測定を確立させることが出来る可能性があると考えた。また今回は20歳代のみを対象被験者としているため,年齢を考慮した基準値の確立も必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
股関節の内外旋筋力を臨床で簡易に測定できる方法によって確立することは,股関節疾患患者の機能評価や治療の効果判定などにおいて臨床上非常に有用なものとなると考える。しかし現在そのような評価指標は存在しないため,臨床で簡便に使用できるHHDで股関節の内外旋筋力の測定を行えるようになれば,股関節疾患患者の理学療法評価や治療効果判定に有用な指標を提供できるものと考える。