[0554] 大腿骨近位部骨折手術後患者は術後早期の歩行能力から予後予測が可能か?
Keywords:大腿骨近位部骨折, 術後1週, 歩行予後
【目的】大腿骨近位部骨折手術後患者の歩行予後に影響を与える因子については多くの研究がされており,年齢,認知症,受傷前歩行能力,疼痛など様々な因子が報告されている。その因子の1つとして術後早期の歩行能力があり,早期の歩行獲得は予後が良好と一般にいわれている。しかしその方法は,歩行可否やカットオフ値を基準としたもの,また対象を限定したものが多く,術後理学療法を行った全症例を能力別に分け予後を検討したものは少ない。そこで本研究は,当院の大腿骨近位部骨折手術後患者の早期歩行能力と予後との関係を術後1週,2週で能力別に分けて検討し,術後1週歩行能力ではその要因を検討することを目的とした。
【方法】対象は2011年4月から2013年1月に当院で大腿骨近位部骨折の手術後,理学療法を行った患者117名とした。平均年齢は79.9歳(39-98歳),男性23名,女性94名,術後在院日数は平均42.6日であった。術式はPFNA44名,PFNA Long1名,人工骨頭置換術34名,ハンソンピン25名,DHS12名,THA1名であった。除外基準は何らかの理由で手術後免荷期間が生じた者,理学療法が中止になった者とした。方法は,歩行能力を平行棒以下,歩行器,杖歩行以上(杖以上)の3群に分け,術後1週,2週の歩行能力から,退院時に杖以上の歩行獲得者の到達確率を人数より算出した。さらに退院時に杖以上の到達確率が高い術後1週において,1週時歩行能力が平行棒以下であった62名(男性13名,女性49名,平均年齢83.8歳)と,歩行器以上であった55名(男性10名,女性45名,平均年齢75.6歳)の2群に分け,性別,年齢,BMI,血清アルブミン値(Alb),骨折型,認知症,手術までの日数,術後在院日数,受傷前Barthel Index(BI)を比較検討した。そして有意差を認めた因子を独立変数,術後1週歩行能力が歩行器以上,平行棒以下を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。統計学的検討として,2群の比較にはt検定,Mann-WhitneyのU検定,χ2検定を行い,有意水準は5%とした。
【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき対象者全員に本研究の主旨を説明し,同意を得た。
【結果】到達確率は,1週時平行棒以下の方は退院時杖以上獲得者が24%であったが,1週時歩行器の方は退院時に87%,杖以上では100%杖以上を獲得した。一方,2週時杖以上では退院時杖以上獲得者が100%であったが,2週時平行棒以下では退院時杖以上獲得者が17%,歩行器の方は退院時杖以上が59%と高い確率の群はなかった。そして1週時歩行能力を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,有意な因子として認知症(p=0.004,オッズ比4.401)が採択された。
【考察】今回,術後早期の歩行能力を因子として歩行予後を検討した結果,術後1週に歩行器以上の能力があると,退院時(約40日後)に87%が杖以上を獲得した。これは除外対象以外全症例を対象にした点,術後2週の検討では高い確率の群がないことから,術後1週の歩行能力を総合的なパフォーマンス能力として指標にすることにより,臨床において高い精度の予後予測が可能と考えられる。一方,術後1週の歩行能力に影響を与える要因として認知症が選択された。認知症は多くの研究にて歩行の再獲得を阻害する,とされており,今回も術後1週で歩行器を獲得する際に影響し,予後予測をする上で考慮する必要性が考えられた。よって,大腿骨近位部骨折手術後患者の歩行予後予測は,術後1週の歩行能力が歩行器以上であると高い確率で杖以上を獲得され,その歩行能力には認知症が影響することが示された。しかしながら,術後1週の歩行能力が平行棒以下の群では高い確率の群はなく,この能力群では今後さらに他因子も考慮した検討が必要と考えられる。以上より,大腿骨近位部骨折手術後患者の歩行予後予測について術後早期歩行能力を用い検討した結果,術後1週歩行能力が有用な指標となることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】本研究では,大腿骨近位部骨折手術後患者の歩行予後予測を術後早期の歩行能力に着目し,一定の見解を得た。今後他因子にも着目し研究を継続する事で,臨床での有効な指標の1つになると考える。
【方法】対象は2011年4月から2013年1月に当院で大腿骨近位部骨折の手術後,理学療法を行った患者117名とした。平均年齢は79.9歳(39-98歳),男性23名,女性94名,術後在院日数は平均42.6日であった。術式はPFNA44名,PFNA Long1名,人工骨頭置換術34名,ハンソンピン25名,DHS12名,THA1名であった。除外基準は何らかの理由で手術後免荷期間が生じた者,理学療法が中止になった者とした。方法は,歩行能力を平行棒以下,歩行器,杖歩行以上(杖以上)の3群に分け,術後1週,2週の歩行能力から,退院時に杖以上の歩行獲得者の到達確率を人数より算出した。さらに退院時に杖以上の到達確率が高い術後1週において,1週時歩行能力が平行棒以下であった62名(男性13名,女性49名,平均年齢83.8歳)と,歩行器以上であった55名(男性10名,女性45名,平均年齢75.6歳)の2群に分け,性別,年齢,BMI,血清アルブミン値(Alb),骨折型,認知症,手術までの日数,術後在院日数,受傷前Barthel Index(BI)を比較検討した。そして有意差を認めた因子を独立変数,術後1週歩行能力が歩行器以上,平行棒以下を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。統計学的検討として,2群の比較にはt検定,Mann-WhitneyのU検定,χ2検定を行い,有意水準は5%とした。
【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき対象者全員に本研究の主旨を説明し,同意を得た。
【結果】到達確率は,1週時平行棒以下の方は退院時杖以上獲得者が24%であったが,1週時歩行器の方は退院時に87%,杖以上では100%杖以上を獲得した。一方,2週時杖以上では退院時杖以上獲得者が100%であったが,2週時平行棒以下では退院時杖以上獲得者が17%,歩行器の方は退院時杖以上が59%と高い確率の群はなかった。そして1週時歩行能力を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,有意な因子として認知症(p=0.004,オッズ比4.401)が採択された。
【考察】今回,術後早期の歩行能力を因子として歩行予後を検討した結果,術後1週に歩行器以上の能力があると,退院時(約40日後)に87%が杖以上を獲得した。これは除外対象以外全症例を対象にした点,術後2週の検討では高い確率の群がないことから,術後1週の歩行能力を総合的なパフォーマンス能力として指標にすることにより,臨床において高い精度の予後予測が可能と考えられる。一方,術後1週の歩行能力に影響を与える要因として認知症が選択された。認知症は多くの研究にて歩行の再獲得を阻害する,とされており,今回も術後1週で歩行器を獲得する際に影響し,予後予測をする上で考慮する必要性が考えられた。よって,大腿骨近位部骨折手術後患者の歩行予後予測は,術後1週の歩行能力が歩行器以上であると高い確率で杖以上を獲得され,その歩行能力には認知症が影響することが示された。しかしながら,術後1週の歩行能力が平行棒以下の群では高い確率の群はなく,この能力群では今後さらに他因子も考慮した検討が必要と考えられる。以上より,大腿骨近位部骨折手術後患者の歩行予後予測について術後早期歩行能力を用い検討した結果,術後1週歩行能力が有用な指標となることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】本研究では,大腿骨近位部骨折手術後患者の歩行予後予測を術後早期の歩行能力に着目し,一定の見解を得た。今後他因子にも着目し研究を継続する事で,臨床での有効な指標の1つになると考える。