[0578] 骨髄由来間葉系間質細胞移植治療と運動との併用は骨軟骨欠損した関節軟骨の再生を促進する
キーワード:細胞移植, 関節軟骨, 運動
【はじめに,目的】近年,関節軟骨損傷の治療方法として細胞移植治療が期待され,移植細胞の種類や足場となる生体材料の研究などが報告されてきた。骨髄間葉系間質細胞(以下MSCs)は,高い軟骨分化能力や細胞採取の容易性,免疫寛容能を有することから,関節軟骨損傷に対する有力な移植細胞として考えられている。しかし,細胞移植後の運動やリハビリテーションの有効性・安全性を調べた研究はほとんどない。今後,細胞治療が臨床にて適用されるにあたり,再生治療におけるリハビリテーションの有効性を明らかにしていくことは重要な研究課題である。そこで本研究では骨軟骨欠損したラット膝関節にMSCsを移植した後,走行運動介入を行うことが関節軟骨再生にどのような影響を及ぼすかを検証した。
【方法】8週齢のWistar系雄性ラット32匹に対し,左右の大腿骨滑車部に直径1mmの骨軟骨欠損を処置した。移植細胞は,MSCsを8週齢の同種他家雄性ラット大腿骨より採取した。骨軟骨欠損処置から4週後に,1.0×106個の細胞をリン酸緩衝液(以下PBS)で希釈し,右膝関節に注入した。左膝関節に対しては,対照群としてPBSのみを注入した。MSCs移植後,ラットを通常飼育群(左膝:Control群,右膝:MSC群)と運動群(左膝:運動群,右膝:MSC+運動群)に分けた。運動群には移植2日後より週3回,12m/分,30分のトレッドミル走行を負荷した。2,4週後に膝関節を摘出し(各群n=8),大腿骨の組織切片を作成した。組織はサフラニンOおよびヘマトキシリン・エオジンにて染色を行い,Wakitaniの軟骨再生スコアにて評価した。統計解析は有意水準を5%とし,Kruskal-Wallis検定を行った後,Bonferroni’s検定にて多重比較を行った。データは平均値±95%信頼区間にて表示した。またピクロシリウスレッド染色による偏光顕微鏡観察によりコラーゲンの配向性を評価し,免疫組織化学的手法によりII型コラーゲンの発現分布を観察した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は所属施設の動物実験委員会の承認を得て行った。
【結果】Wakitaniの軟骨再生スコアは値が低いほど良好な再生を示す。MSCs移植2週後ではControl群:7.5±1.17,運動群:5.8±1.56,MSC群:5.8±1.47,MSC+運動群:4.0±1.93となり,Control群に比べてMSC+運動群でのみ有意にスコアの改善が見られた(P<0.05)。組織学的所見ではPBSを注入した2群(Control群と運動群)の軟骨細胞は線維軟骨様の形態であり,MSCsを注入した2群(MSC群とMSC+運動群)では硝子軟骨様の形態が認められた。しかしPBS注入の2群やMSC群では欠損部位が十分に埋まらず,MSC+運動群では再生軟骨の厚さが周囲の組織に近づき,有意にスコアの改善が見られた。ピクロシリウスレッド染色においてコラーゲンの配向性はMSC+運動群で他の3群と異なり,周辺組織の配向性に近い所見が見られた。II型コラーゲン所見はMSCを注入した2群では深層に発現が見られた。MSCs移植4週後の再生スコアはControl群:7.4±1.23,運動群:6.4±1.23,MSC群:4.5±0.98,MSC+運動群:2.3±0.72となり,MSC注入2群の軟骨細胞はほぼ硝子軟骨様となった。そしてMSC+運動群では再生組織の軟骨厚,サフラニンO染色性に回復が見られ,Control群に比べてMSC群,MSC+運動群で有意に再生が見られた(P<0.01)。また4週においてMSC群に比べてMSC+運動群では有意にスコアの改善が見られた(P<0.05)。ピクロシリウスレッド染色ではPBSを注入した2群に比べて,MSCを注入した2群では周辺組織の配向性に近い所見が見られた。II型コラーゲンはMSC群では中間層から深層に発現が見られ,MSC+運動群では表層の一部を除く大部分で発現が認められた。
【考察】MSCs移植2日後から走行運動介入(MSC+運動介入群)により,軟骨再生が非運動群(MSC群)に比べて促進された。In vitroの研究においてMSCsに対しての機械的刺激は軟骨分化の促進と基質合成の増加を促すことが報告されている。本研究の実験動物を用いたin vivo研究においても,MSCs移植後の走行による機械的刺激は,再生部位のMSCsの軟骨分化促進と軟骨基質合成の増加,あるいは移植されたMSCsの成長因子分泌促進などを引き起こし,軟骨再生を促進させたと推察される。以上のことからMSCs移植治療に運動を併用することはMSCs移植の再生効果を損なうことなく,欠損した関節軟骨を再生することにつながることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】本研究結果は関節軟骨損傷に対する細胞治療において,術後の運動介入が軟骨再生を促進する可能性があることを示唆した。これは再生医療におけるリハビリテーションの重要性を示しており,再生治療後のリハビリテーション(再生リハビリテーション)確立の必要性を示している。
【方法】8週齢のWistar系雄性ラット32匹に対し,左右の大腿骨滑車部に直径1mmの骨軟骨欠損を処置した。移植細胞は,MSCsを8週齢の同種他家雄性ラット大腿骨より採取した。骨軟骨欠損処置から4週後に,1.0×106個の細胞をリン酸緩衝液(以下PBS)で希釈し,右膝関節に注入した。左膝関節に対しては,対照群としてPBSのみを注入した。MSCs移植後,ラットを通常飼育群(左膝:Control群,右膝:MSC群)と運動群(左膝:運動群,右膝:MSC+運動群)に分けた。運動群には移植2日後より週3回,12m/分,30分のトレッドミル走行を負荷した。2,4週後に膝関節を摘出し(各群n=8),大腿骨の組織切片を作成した。組織はサフラニンOおよびヘマトキシリン・エオジンにて染色を行い,Wakitaniの軟骨再生スコアにて評価した。統計解析は有意水準を5%とし,Kruskal-Wallis検定を行った後,Bonferroni’s検定にて多重比較を行った。データは平均値±95%信頼区間にて表示した。またピクロシリウスレッド染色による偏光顕微鏡観察によりコラーゲンの配向性を評価し,免疫組織化学的手法によりII型コラーゲンの発現分布を観察した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は所属施設の動物実験委員会の承認を得て行った。
【結果】Wakitaniの軟骨再生スコアは値が低いほど良好な再生を示す。MSCs移植2週後ではControl群:7.5±1.17,運動群:5.8±1.56,MSC群:5.8±1.47,MSC+運動群:4.0±1.93となり,Control群に比べてMSC+運動群でのみ有意にスコアの改善が見られた(P<0.05)。組織学的所見ではPBSを注入した2群(Control群と運動群)の軟骨細胞は線維軟骨様の形態であり,MSCsを注入した2群(MSC群とMSC+運動群)では硝子軟骨様の形態が認められた。しかしPBS注入の2群やMSC群では欠損部位が十分に埋まらず,MSC+運動群では再生軟骨の厚さが周囲の組織に近づき,有意にスコアの改善が見られた。ピクロシリウスレッド染色においてコラーゲンの配向性はMSC+運動群で他の3群と異なり,周辺組織の配向性に近い所見が見られた。II型コラーゲン所見はMSCを注入した2群では深層に発現が見られた。MSCs移植4週後の再生スコアはControl群:7.4±1.23,運動群:6.4±1.23,MSC群:4.5±0.98,MSC+運動群:2.3±0.72となり,MSC注入2群の軟骨細胞はほぼ硝子軟骨様となった。そしてMSC+運動群では再生組織の軟骨厚,サフラニンO染色性に回復が見られ,Control群に比べてMSC群,MSC+運動群で有意に再生が見られた(P<0.01)。また4週においてMSC群に比べてMSC+運動群では有意にスコアの改善が見られた(P<0.05)。ピクロシリウスレッド染色ではPBSを注入した2群に比べて,MSCを注入した2群では周辺組織の配向性に近い所見が見られた。II型コラーゲンはMSC群では中間層から深層に発現が見られ,MSC+運動群では表層の一部を除く大部分で発現が認められた。
【考察】MSCs移植2日後から走行運動介入(MSC+運動介入群)により,軟骨再生が非運動群(MSC群)に比べて促進された。In vitroの研究においてMSCsに対しての機械的刺激は軟骨分化の促進と基質合成の増加を促すことが報告されている。本研究の実験動物を用いたin vivo研究においても,MSCs移植後の走行による機械的刺激は,再生部位のMSCsの軟骨分化促進と軟骨基質合成の増加,あるいは移植されたMSCsの成長因子分泌促進などを引き起こし,軟骨再生を促進させたと推察される。以上のことからMSCs移植治療に運動を併用することはMSCs移植の再生効果を損なうことなく,欠損した関節軟骨を再生することにつながることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】本研究結果は関節軟骨損傷に対する細胞治療において,術後の運動介入が軟骨再生を促進する可能性があることを示唆した。これは再生医療におけるリハビリテーションの重要性を示しており,再生治療後のリハビリテーション(再生リハビリテーション)確立の必要性を示している。