[0583] 慢性閉塞性肺疾患患者に対する呼吸リハビリテーションの長期効果
Keywords:慢性閉塞性肺疾患, 呼吸リハビリテーション, 身体活動量
【はじめに,目的】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の長期効果の有無について様々な報告されている。このようなことから,呼吸リハの長期効果には患者の様々な要因が影響していると考えられる。今回,1年間の呼吸リハについて,身体活動量の高い群と低い群に分けて検討する事を目的とした。
【方法】
身体活動量の評価として国際身体活動量質問票(IPAQ)を用いて調査した。身体活動量の高低差をIPAQの中央値987で分け,IPAQ987以上を高活動群,987未満を低活動群とした。なお,IPAQの測定は,呼吸リハ期間中に測定した。また,季節性を考慮するため,2012年11月と2013年6月の2回実施し,2回の平均値を採用した。
対象は1年間当院で通院可能であったCOPD患者26例で,高活動群13例(年齢:69.7±9.6歳,MNA:26.2±1.7点,%FEV1.0:57.9±16.2%,mMRCスケール:1.7±0.6,CAT:12.5±6.0点,運動習慣なし:4/13(31%)),低活動群13例(年齢:73.3±10.1歳,MNA:21.4±3.9点,%FEV1.0:47.0±21.2%,mMRCスケール:2.3±0.9,CAT:16.2±5.9点,運動習慣なし7/13(54%))である。
評価項目は,Body Mass Index(BMI),呼吸機能検査(%FEV1.0),症状評価(修正Medical Reseach Counci(mMRC)スケール,COPD Assessment Test(CAT)),筋力評価(呼気筋力(MEP),吸気筋力(MIP),膝伸展筋力/体重比(%膝伸展筋力)),運動耐容能評価(6 Minute Walking Test(6MWT),Incremental Shuttle Walking Test(ISWT)),ADL評価(Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire(NRADL)),QOL評価(St.George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)),精神評価(Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)不安,欝)とした。
統計解析方法は,初期特性の2群間の比較は,Levenの等分散性の検定後,Studentのt検定,Welchのt検定で,運動習慣の有無はχ2検定で,1年後の比較を対応のあるサンプルのt検定を用いて分析した。また,有意確率にBonferoniの調整を実施した。なお,帰無仮説の棄却域は有意水準5%とし,解析にはSPSS version21.0を使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に沿った研究として実施した。対象への説明と同意は,研究の概要を口頭及び文章にて説明後,研究内容を理解し,研究参加の同意が得られた場合,書面にて自筆署名で同意を得た。その際参加は任意であり,測定に同意しなくても何ら不利益を受けないこと,また同意後も常時同意を撤回できること,撤回後も何ら不利益を受けることがないことを説明した。
【結果】
両群の対象特性は,年齢,症状評価,運動習慣に有意差はなかったが,低活動群はMNA(p<0.01)が有意に低下していた。
高活動群の1年間の経過はBMI(25.0±3.9→25.1±3.8 p=ns),%FEV1.0(57.9±16.2→59.3±15.8 p=ns),mMRCスケール(1.7±0.6→1.0±0.7 p<0.05),CAT(12.5±6.0→13.3±6.1p=ns),MEP(108.5±37.2→132.2±55.2 p=ns),MIP(63.5±21.1→68.6±23.7 p=ns),%膝伸展筋力(58.8±13.1→65.4±16.5 p<0.05),6MWT(426.9±73.0→497.7±74.6 p<0.01),ISWT(452.3±158.5→506.1±176.0 p<0.05),NRADL(87.6±15.0→90.6±11.1 p=ns),SGRQ(35.4±16.9→29.5±13.6 p=ns),HADS不安(5.5±2.7→6.0±3.3 p=ns),鬱(6.3±3.3→7.3±3.6 p=ns)であった。
低活動群の1年間の経過はBMI(21.4±3.9→21.2±3.0 p=ns),%FEV1.0(49.3±21.6→46.6±25.2 p=ns),mMRCスケール(2.3±0.9→2.2±0.6 p=ns),CAT(16.2±5.9→16.9±7.1 p=ns),MEP(79.9±38.9→84.4±45.4 p=ns),MIP(52.6±27.6→52.7±21.0 p=ns),%膝伸展筋力(52.4±9.5→55.6±11.2 p=ns),6MWT(333.1±131.7→330.7±119.2 p=ns),ISWT(284.6±129.1→278.5±115.1 p=ns),NRADL(71.4±16.6→65.6±26.5 p=ns),SGRQ(46.1±15.4→46.9±16.4 p=ns),HADS不安(6.2±2.9→4.9±3.4 p=ns),鬱(7.0±2.2→6.5±3.2 p=ns)であった。
【考察】
1年間の呼吸リハ継続において,高活動群は,mMRCスケール,%膝伸展筋力,運動耐容能の項目で有意な改善を示した。一方で低活動群は全てにおいて維持傾向を示した。両群において呼吸リハ開始当初は運動習慣に差が認められないことからも,呼吸リハ期間中に身体活動が向上させることが長期の呼吸リハにおいて重要である事が示唆された。低活動群は低栄養による影響も重なり,長期効果については維持する傾向が強かった。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,身体活動量から考えた呼吸リハの長期的効果について客観的に検証した研究である。本研究結果は呼吸理学療法実施やプログラム立案の重要なアセスメントとなる研究である。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の長期効果の有無について様々な報告されている。このようなことから,呼吸リハの長期効果には患者の様々な要因が影響していると考えられる。今回,1年間の呼吸リハについて,身体活動量の高い群と低い群に分けて検討する事を目的とした。
【方法】
身体活動量の評価として国際身体活動量質問票(IPAQ)を用いて調査した。身体活動量の高低差をIPAQの中央値987で分け,IPAQ987以上を高活動群,987未満を低活動群とした。なお,IPAQの測定は,呼吸リハ期間中に測定した。また,季節性を考慮するため,2012年11月と2013年6月の2回実施し,2回の平均値を採用した。
対象は1年間当院で通院可能であったCOPD患者26例で,高活動群13例(年齢:69.7±9.6歳,MNA:26.2±1.7点,%FEV1.0:57.9±16.2%,mMRCスケール:1.7±0.6,CAT:12.5±6.0点,運動習慣なし:4/13(31%)),低活動群13例(年齢:73.3±10.1歳,MNA:21.4±3.9点,%FEV1.0:47.0±21.2%,mMRCスケール:2.3±0.9,CAT:16.2±5.9点,運動習慣なし7/13(54%))である。
評価項目は,Body Mass Index(BMI),呼吸機能検査(%FEV1.0),症状評価(修正Medical Reseach Counci(mMRC)スケール,COPD Assessment Test(CAT)),筋力評価(呼気筋力(MEP),吸気筋力(MIP),膝伸展筋力/体重比(%膝伸展筋力)),運動耐容能評価(6 Minute Walking Test(6MWT),Incremental Shuttle Walking Test(ISWT)),ADL評価(Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire(NRADL)),QOL評価(St.George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)),精神評価(Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)不安,欝)とした。
統計解析方法は,初期特性の2群間の比較は,Levenの等分散性の検定後,Studentのt検定,Welchのt検定で,運動習慣の有無はχ2検定で,1年後の比較を対応のあるサンプルのt検定を用いて分析した。また,有意確率にBonferoniの調整を実施した。なお,帰無仮説の棄却域は有意水準5%とし,解析にはSPSS version21.0を使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に沿った研究として実施した。対象への説明と同意は,研究の概要を口頭及び文章にて説明後,研究内容を理解し,研究参加の同意が得られた場合,書面にて自筆署名で同意を得た。その際参加は任意であり,測定に同意しなくても何ら不利益を受けないこと,また同意後も常時同意を撤回できること,撤回後も何ら不利益を受けることがないことを説明した。
【結果】
両群の対象特性は,年齢,症状評価,運動習慣に有意差はなかったが,低活動群はMNA(p<0.01)が有意に低下していた。
高活動群の1年間の経過はBMI(25.0±3.9→25.1±3.8 p=ns),%FEV1.0(57.9±16.2→59.3±15.8 p=ns),mMRCスケール(1.7±0.6→1.0±0.7 p<0.05),CAT(12.5±6.0→13.3±6.1p=ns),MEP(108.5±37.2→132.2±55.2 p=ns),MIP(63.5±21.1→68.6±23.7 p=ns),%膝伸展筋力(58.8±13.1→65.4±16.5 p<0.05),6MWT(426.9±73.0→497.7±74.6 p<0.01),ISWT(452.3±158.5→506.1±176.0 p<0.05),NRADL(87.6±15.0→90.6±11.1 p=ns),SGRQ(35.4±16.9→29.5±13.6 p=ns),HADS不安(5.5±2.7→6.0±3.3 p=ns),鬱(6.3±3.3→7.3±3.6 p=ns)であった。
低活動群の1年間の経過はBMI(21.4±3.9→21.2±3.0 p=ns),%FEV1.0(49.3±21.6→46.6±25.2 p=ns),mMRCスケール(2.3±0.9→2.2±0.6 p=ns),CAT(16.2±5.9→16.9±7.1 p=ns),MEP(79.9±38.9→84.4±45.4 p=ns),MIP(52.6±27.6→52.7±21.0 p=ns),%膝伸展筋力(52.4±9.5→55.6±11.2 p=ns),6MWT(333.1±131.7→330.7±119.2 p=ns),ISWT(284.6±129.1→278.5±115.1 p=ns),NRADL(71.4±16.6→65.6±26.5 p=ns),SGRQ(46.1±15.4→46.9±16.4 p=ns),HADS不安(6.2±2.9→4.9±3.4 p=ns),鬱(7.0±2.2→6.5±3.2 p=ns)であった。
【考察】
1年間の呼吸リハ継続において,高活動群は,mMRCスケール,%膝伸展筋力,運動耐容能の項目で有意な改善を示した。一方で低活動群は全てにおいて維持傾向を示した。両群において呼吸リハ開始当初は運動習慣に差が認められないことからも,呼吸リハ期間中に身体活動が向上させることが長期の呼吸リハにおいて重要である事が示唆された。低活動群は低栄養による影響も重なり,長期効果については維持する傾向が強かった。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,身体活動量から考えた呼吸リハの長期的効果について客観的に検証した研究である。本研究結果は呼吸理学療法実施やプログラム立案の重要なアセスメントとなる研究である。