[0585] 安定期における慢性閉塞性肺疾患患者の身体活動量に影響する因子の検討
Keywords:慢性閉塞性肺疾患, 身体活動量, 呼吸困難
【はじめに,目的】
慢性呼吸器疾患の代表である慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対して,運動療法を中心とした呼吸リハビリテーション(PR)の効果が数多くの論文にて報告されている。Waschkiらは,COPD患者の身体活動量が生命予後を予測する最も強い因子であると報告しており,身体活動量の向上はPRの最終的な目標の1つとして掲げられている。しかし,患者の身体活動量について言及した報告は少ない。本研究では,COPD患者に対して効果的なPRプログラムを構築する一環として,COPD患者の身体活動量に着目し,肺機能を含めた身体機能との関係を把握することを目的とした。
【方法】
対象は当院にて外来PRを実施している安定期COPD患者7名(全例男性)とした。歩行や日常生活活動(ADL)に著しい影響を及ぼす骨関節疾患や中枢神経疾患などを有する患者,認知症を有する患者は対象から除外した。測定項目は,臨床的背景因子として年齢,身長,体重,BMI,%1秒量(%FEV1),Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)分類,home oxygen therapy(HOT)の有無,過去1年間に増悪入院した回数を調査した。身体機能のうち,下肢筋力の指標としてμTas MT-1(アニマ)にて等尺性膝伸展筋力を体重で除した値(%体重比),運動耐容能として6分間歩行距離(6MWD),呼吸困難感としてmodified Medical Research Council(mMRC)と6分間歩行後の修正Borg scale,QOLとしてCOPD Assessment Test(CAT)scoreを測定した。身体活動量はライフコーダGS(スズケン)を用いて1週間測定し,1日の平均歩数を採用した。ライフコーダは就寝時と入浴時を除いて患者の腰部に装着した。また,身体活動を強度別に調査し,低強度および中等度強度以上の活動時間の割合を算出した。測定はPR開始時に実施し,6分間歩行試験は呼吸リハビリテーションマニュアルの方法に従って行った。解析方法は,歩数と臨床的背景因子および身体機能の関係をSpearmanの順位相関係数で検定し,統計学的有意水準を5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
患者には資料にて本研究の意義や主旨を十分に説明し,書面にて同意を得た。
【結果】
患者の平均年齢は72±4歳,BMIは20.7±2.3kg/m2,%FEV1は49.0±22.0%,病期はGOLD分類でstage Iが1名,IIが1名,IIIが2名,IVが3名であり,HOTは7名中2名導入されていた。また,過去1年間に増悪入院した回数は0.7±1.1回(0-3回)であった。膝伸展筋力は43.3±12.1%体重比,CAT scoreは16.6±6.1点,6MWDは270±124m,6分間歩行後の修正Borg scaleは4.6±1.9であった。ライフコーダから得られた1日の平均歩数は3,348±2,730歩であり,活動時間は37.8±31.6分であった。身体活動を強度別にみると,低強度の活動時間の割合は95.7±4.1%,中等度強度以上の活動時間の割合は4.3±4.1%であった。歩数と各項目との関係を検討すると,歩数とmMRC,CAT score,6分間歩行後の修正Borg scaleの間に負の相関関係があり,相関係数はそれぞれ-0.973,-0.847,-0.927であった。歩数と臨床的背景因子,%FEV1,膝伸展筋力および6MWDとは有意な相関関係を認めなかった。
【考察】
身体活動量と肺機能を含めた身体機能との関係をみると,下肢筋力や運動耐容能よりも呼吸困難感の方が身体活動量と強い相関を認めた。川越らは,活動量は呼吸困難感や下肢筋力,6MWDと有意に相関していると報告している。今回,歩数とmMRCとの相関係数は特に高値を示し,臨床上簡便に測定できるmMRCはCOPD患者の身体活動量を反映する指標となる可能性がある。一方で,本研究において下肢筋力と相関関係がみられなかったことは,対象者が7名と対象数が少なかったことが考えられる。
COPD患者の歩数は1日3,000歩程度と低活動であり,国民健康・栄養調査(厚生労働省)の平均歩数を上回る患者は1人もいなかった。さらに活動強度に注目すると,身体活動のうち約95%は低強度の活動しかできておらず,中等度強度以上の活動はほとんどできていなかった。COPD患者は労作時もしくは安静時からの呼吸困難感により低活動となることが既に知られており,本研究においても同様の結果であった。
今回,身体活動量と%FEV1の間には有意な相関関係は認められなかったが,COPDの病態が進行している程身体活動量が低下するといわれている。そのため,COPDの病期が活動量に及ぼす影響を考慮して詳細な検討をする必要があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
COPD患者の身体活動量は低く,その原因は呼吸困難感が強く関係していることが示唆された。今後,症例数を増やして更なる研究を重ねることで,身体活動量を増やすことの有用性を検討し,病態の重症度や年齢に合わせた効果的なPRを提供することができると考えている。
慢性呼吸器疾患の代表である慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対して,運動療法を中心とした呼吸リハビリテーション(PR)の効果が数多くの論文にて報告されている。Waschkiらは,COPD患者の身体活動量が生命予後を予測する最も強い因子であると報告しており,身体活動量の向上はPRの最終的な目標の1つとして掲げられている。しかし,患者の身体活動量について言及した報告は少ない。本研究では,COPD患者に対して効果的なPRプログラムを構築する一環として,COPD患者の身体活動量に着目し,肺機能を含めた身体機能との関係を把握することを目的とした。
【方法】
対象は当院にて外来PRを実施している安定期COPD患者7名(全例男性)とした。歩行や日常生活活動(ADL)に著しい影響を及ぼす骨関節疾患や中枢神経疾患などを有する患者,認知症を有する患者は対象から除外した。測定項目は,臨床的背景因子として年齢,身長,体重,BMI,%1秒量(%FEV1),Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)分類,home oxygen therapy(HOT)の有無,過去1年間に増悪入院した回数を調査した。身体機能のうち,下肢筋力の指標としてμTas MT-1(アニマ)にて等尺性膝伸展筋力を体重で除した値(%体重比),運動耐容能として6分間歩行距離(6MWD),呼吸困難感としてmodified Medical Research Council(mMRC)と6分間歩行後の修正Borg scale,QOLとしてCOPD Assessment Test(CAT)scoreを測定した。身体活動量はライフコーダGS(スズケン)を用いて1週間測定し,1日の平均歩数を採用した。ライフコーダは就寝時と入浴時を除いて患者の腰部に装着した。また,身体活動を強度別に調査し,低強度および中等度強度以上の活動時間の割合を算出した。測定はPR開始時に実施し,6分間歩行試験は呼吸リハビリテーションマニュアルの方法に従って行った。解析方法は,歩数と臨床的背景因子および身体機能の関係をSpearmanの順位相関係数で検定し,統計学的有意水準を5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
患者には資料にて本研究の意義や主旨を十分に説明し,書面にて同意を得た。
【結果】
患者の平均年齢は72±4歳,BMIは20.7±2.3kg/m2,%FEV1は49.0±22.0%,病期はGOLD分類でstage Iが1名,IIが1名,IIIが2名,IVが3名であり,HOTは7名中2名導入されていた。また,過去1年間に増悪入院した回数は0.7±1.1回(0-3回)であった。膝伸展筋力は43.3±12.1%体重比,CAT scoreは16.6±6.1点,6MWDは270±124m,6分間歩行後の修正Borg scaleは4.6±1.9であった。ライフコーダから得られた1日の平均歩数は3,348±2,730歩であり,活動時間は37.8±31.6分であった。身体活動を強度別にみると,低強度の活動時間の割合は95.7±4.1%,中等度強度以上の活動時間の割合は4.3±4.1%であった。歩数と各項目との関係を検討すると,歩数とmMRC,CAT score,6分間歩行後の修正Borg scaleの間に負の相関関係があり,相関係数はそれぞれ-0.973,-0.847,-0.927であった。歩数と臨床的背景因子,%FEV1,膝伸展筋力および6MWDとは有意な相関関係を認めなかった。
【考察】
身体活動量と肺機能を含めた身体機能との関係をみると,下肢筋力や運動耐容能よりも呼吸困難感の方が身体活動量と強い相関を認めた。川越らは,活動量は呼吸困難感や下肢筋力,6MWDと有意に相関していると報告している。今回,歩数とmMRCとの相関係数は特に高値を示し,臨床上簡便に測定できるmMRCはCOPD患者の身体活動量を反映する指標となる可能性がある。一方で,本研究において下肢筋力と相関関係がみられなかったことは,対象者が7名と対象数が少なかったことが考えられる。
COPD患者の歩数は1日3,000歩程度と低活動であり,国民健康・栄養調査(厚生労働省)の平均歩数を上回る患者は1人もいなかった。さらに活動強度に注目すると,身体活動のうち約95%は低強度の活動しかできておらず,中等度強度以上の活動はほとんどできていなかった。COPD患者は労作時もしくは安静時からの呼吸困難感により低活動となることが既に知られており,本研究においても同様の結果であった。
今回,身体活動量と%FEV1の間には有意な相関関係は認められなかったが,COPDの病態が進行している程身体活動量が低下するといわれている。そのため,COPDの病期が活動量に及ぼす影響を考慮して詳細な検討をする必要があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
COPD患者の身体活動量は低く,その原因は呼吸困難感が強く関係していることが示唆された。今後,症例数を増やして更なる研究を重ねることで,身体活動量を増やすことの有用性を検討し,病態の重症度や年齢に合わせた効果的なPRを提供することができると考えている。