[0590] 通所介護利用者における1週間の身体活動量と運動機能
キーワード:高齢者, 身体活動量, 歩数計
【はじめに,目的】通所介護サービス(以下デイ)を利用する虚弱高齢者の身体機能評価は,デイを利用する日に限られることが多い。しかし,利用者の生活の大半を占めるのはデイ利用日以外であり,デイ利用日以外の活動性を理解することは利用者の生活機能向上をめざす上で重要である。通常使用される身体活動量計は,衣服の上から腰部に装着し歩数を計測するものが多いが,更衣時や入浴時に着脱の頻度が増えるため正確な1日の歩数を測定できない場合がある。そこで本研究は,装着のまま入浴可能な生活防水済のリストバンド式身体活動量計を用いることとした。本研究の目的は,デイを利用する虚弱高齢者の,施設および自宅での身体活動量を比較することと,身体活動量と運動機能との関連を明らかにすることとした。
【方法】要支援1~要介護3の認定を受け,デイを利用し,屋内歩行が自立している65歳以上の利用者15名(男性7名,女性8名,平均年齢83.2歳,70-94歳)を対象とした。除外基準はMMSE20点以下とした。身長は平均153.6cm,体重は52.3kg,BMI22.2m2/kg,MMSEは平均26.0点(21-30点)であった。身体活動量測定には手関節にリストバンドとして装着できる機器(UP,JAWBONE社製,生活防水済)を用いて1週間の歩数を計測した。運動機能はTimed up & go test(以下TUG)を測定し,「できるだけ早く」とした口頭指示した歩行条件下で実施した。歩数の分析のために,1日を24-3時,3-6時,6-9時,9-12時,12-15時,15-18時,18-21時,21-24時の8時間帯(以下hour1-8)に分け,デイ利用日と利用日以外で比較した。さらに,デイ利用日の歩数に対する利用日以外の平均歩数比率を対象者毎に算出した。100%を下回る場合,デイ利用以外の日の方が身体活動量が低下していることを示す。この比率が100%以下もしくはほぼ変わらない群(以下100%以下群)と100%を大きく超える群(以下100%超群)に分け,運動機能を比較した。統計処理はWilcoxonの符号順位検定およびSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た。なお,本研究は本研究科倫理委員会の承認済である。
【結果】対象者の1週間の総歩数の平均は8981.5歩(825-21609歩),1日あたりの歩数平均は1283.1歩(117-3087歩)であった。デイ利用日の平均の歩数は1429.7歩/日に対し,デイ利用以外の日の平均歩数は1234.1歩/日と減少していた。hour1-8の平均はデイ利用日で48.0歩,21.4歩,252.1歩,286.7歩,286.7歩,308.0歩,103.5歩,44.5歩,デイ利用以外の日で17.9歩,31.1歩,150.7歩,331.7歩,303.0歩,189.0歩,275.0歩,92.8歩であり,デイ利用日とデイ利用以外の日の各時間帯で有意な差はみられなかった。しかし,6-9時(hour3)と15-18時(hour6)でデイ利用日が高値を示す傾向が認められた。TUGと歩数との相関は,デイ利用日でr=-0.639(p<0.01),デイ利用以外の日でr=-0.519(p<0.048)と有意な中等度の相関を認めた。歩行比率が100%以下群(n=10名)の比率平均は55%で,TUGは14.6秒であった。100%超群(n=5名)の比率平均は177%で,TUGは17.1秒であった。100%超群の5名は,デイでは他の利用者との会話を主に楽しんでいるが,自宅ではセルフケアだけだなく,家事なども積極的に行っているものが多い。
【考察】健康日本21(第二次)によれば,屋外歩行が可能な健常高齢者の平均歩数は,男性が5,628歩/日,女性が4,584歩/日とされる。今回の結果より,デイ利用者の歩数は極めて少ない値であり,特にデイ利用がない日は歩数が低下していた。ほぼ自宅内で活動量の少ない生活をしている様子が改めて確認された。時間帯による歩数の比較では,デイ利用日で6-9時と15-18時で多くなる傾向が認められ,外出や帰宅のための準備がその日の歩数に影響することが示唆された。また,100%以下群は,デイ利用日以外は利用日の約半分しか歩行していないことが認められ,デイ活用が利用者の身体活動を維持している機会になっていると考えられる。また,デイ利用日および利用以外の日の歩数は運動機能と相関関係を認めるものの,歩行比率が100%以下群でTUGの成績が良好であったことは,歩行する運動機能はあるが,自宅では歩いていないという外出機会や屋外歩行の制限など運動機能とは異なる他の要因が歩数減少の原因となっているのではないかと考えられる。
【理学療法研究としての意義】デイ利用者の1日,1週間の歩数での身体活動量を可視化でき,デイを利用していない日の身体活動も把握した上で,運動指導に利用できること。
【方法】要支援1~要介護3の認定を受け,デイを利用し,屋内歩行が自立している65歳以上の利用者15名(男性7名,女性8名,平均年齢83.2歳,70-94歳)を対象とした。除外基準はMMSE20点以下とした。身長は平均153.6cm,体重は52.3kg,BMI22.2m2/kg,MMSEは平均26.0点(21-30点)であった。身体活動量測定には手関節にリストバンドとして装着できる機器(UP,JAWBONE社製,生活防水済)を用いて1週間の歩数を計測した。運動機能はTimed up & go test(以下TUG)を測定し,「できるだけ早く」とした口頭指示した歩行条件下で実施した。歩数の分析のために,1日を24-3時,3-6時,6-9時,9-12時,12-15時,15-18時,18-21時,21-24時の8時間帯(以下hour1-8)に分け,デイ利用日と利用日以外で比較した。さらに,デイ利用日の歩数に対する利用日以外の平均歩数比率を対象者毎に算出した。100%を下回る場合,デイ利用以外の日の方が身体活動量が低下していることを示す。この比率が100%以下もしくはほぼ変わらない群(以下100%以下群)と100%を大きく超える群(以下100%超群)に分け,運動機能を比較した。統計処理はWilcoxonの符号順位検定およびSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には研究の趣旨を説明し書面にて同意を得た。なお,本研究は本研究科倫理委員会の承認済である。
【結果】対象者の1週間の総歩数の平均は8981.5歩(825-21609歩),1日あたりの歩数平均は1283.1歩(117-3087歩)であった。デイ利用日の平均の歩数は1429.7歩/日に対し,デイ利用以外の日の平均歩数は1234.1歩/日と減少していた。hour1-8の平均はデイ利用日で48.0歩,21.4歩,252.1歩,286.7歩,286.7歩,308.0歩,103.5歩,44.5歩,デイ利用以外の日で17.9歩,31.1歩,150.7歩,331.7歩,303.0歩,189.0歩,275.0歩,92.8歩であり,デイ利用日とデイ利用以外の日の各時間帯で有意な差はみられなかった。しかし,6-9時(hour3)と15-18時(hour6)でデイ利用日が高値を示す傾向が認められた。TUGと歩数との相関は,デイ利用日でr=-0.639(p<0.01),デイ利用以外の日でr=-0.519(p<0.048)と有意な中等度の相関を認めた。歩行比率が100%以下群(n=10名)の比率平均は55%で,TUGは14.6秒であった。100%超群(n=5名)の比率平均は177%で,TUGは17.1秒であった。100%超群の5名は,デイでは他の利用者との会話を主に楽しんでいるが,自宅ではセルフケアだけだなく,家事なども積極的に行っているものが多い。
【考察】健康日本21(第二次)によれば,屋外歩行が可能な健常高齢者の平均歩数は,男性が5,628歩/日,女性が4,584歩/日とされる。今回の結果より,デイ利用者の歩数は極めて少ない値であり,特にデイ利用がない日は歩数が低下していた。ほぼ自宅内で活動量の少ない生活をしている様子が改めて確認された。時間帯による歩数の比較では,デイ利用日で6-9時と15-18時で多くなる傾向が認められ,外出や帰宅のための準備がその日の歩数に影響することが示唆された。また,100%以下群は,デイ利用日以外は利用日の約半分しか歩行していないことが認められ,デイ活用が利用者の身体活動を維持している機会になっていると考えられる。また,デイ利用日および利用以外の日の歩数は運動機能と相関関係を認めるものの,歩行比率が100%以下群でTUGの成績が良好であったことは,歩行する運動機能はあるが,自宅では歩いていないという外出機会や屋外歩行の制限など運動機能とは異なる他の要因が歩数減少の原因となっているのではないかと考えられる。
【理学療法研究としての意義】デイ利用者の1日,1週間の歩数での身体活動量を可視化でき,デイを利用していない日の身体活動も把握した上で,運動指導に利用できること。