[0603] 対象者の柔軟性の違いが筋腱の伸長に与える影響
キーワード:超音波画像診断装置, スティフネス, 柔軟性
【はじめに,目的】
近年,超音波画像診断装置を用いることで静的ストレッチングにより筋腱どちらが伸長されるのかということが検討されている。しかし,現在のところ静的ストレッチングにより筋の柔軟性が向上するとの報告と腱の柔軟性が向上するとの報告がなされており,一致した見解は得られていない。一致した見解が得られていない原因として,対象者の元々の柔軟性が異なることが考えられる。そこで,本研究の目的は,対象者の元々の柔軟性の違いにより伸長されやすい組織が変化するのかを検討することとした。
【方法】
運動習慣および静的ストレッチング習慣のない健常男子大学生18名(年齢24±1.7歳,伸長173±5.7cm,体重64.4±6.1kg)とし,対象筋は利き足の腓腹筋とした。柔軟性測定は対象側の膝関節を伸展位とし,足関節を角速度5度/秒で他動的に背屈することで実施した。測定項目は足関節背屈可動域,受動的トルク,スティフネス,筋腱伸長量,筋腱伸長率とした。足関節背屈可動域および受動的トルクはBiodexを用いて測定し,筋腱伸長量および筋腱伸長率は超音波画像診断装置により得られた画像を解析することで算出した。解析は,柔軟性測定でスティフネスが平均よりも高値であった10名をHigh群,低値であった8名をLow群として群分けして行い,両群間における各測定項目を比較検討した。統計は,群間における足関節背屈角度,スティフネスは対応のないt検定を用いて検討した。また,両群間での筋と腱伸長量の違いは2元配置分散分析を用いて検討した。全ての検定で有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には事前に研究内容について十分に説明を行い,同意を得たうえで実施した。なお,本研究は所属機関における研究倫理委員会の承認を得たうえで実施した。
【結果】
High群のスティフネスは1.07±0.11Nm/deg,Low群は0.59±0.10Nm/degであり,High群はLow群と比較して有意に高値を示した(p<0.01)。すなわち,両群間の柔軟性には有意な違いがあると言える。High群の足関節背屈可動域は31.2±3.7度,Low群は38.4±5.5度であり,High群はLow群と比較して有意に低値を示した(p<0.01)。足関節最大背屈角度での受動的トルクはHigh群は27.7±9.3Nm,Low群は30.2±10.2Nmであり,両群間に有意な差はなかった。High群において筋伸長量は1.29±0.34cm,腱伸長量は1.05±0.37cmであり,筋と腱の伸長量の間に有意な差はなかった。Low群において筋伸長量は1.78±0.22cm,腱伸長量は0.88±0.26cmであり,腱伸長量と比較して筋伸長量は有意に高値を示した(p<0.01)。また,High群とLow群の筋伸長量の間には有意な差があり(p<0.01),腱伸長量の間に有意な差はなかった。
【考察】
スティフネスは柔軟性の客観的指標であり,スティフネスが高いということは柔軟性が低いということを表す。つまり,High群は柔軟性が低いもの,Low群は柔軟性が高いものであるということができる。両群間において受動的トルクに差がなかったことから,本研究で行った柔軟性測定は両群ともに同程度の力で実施したということができる。また,同程度の力で伸長したにも関わらず両群の足関節背屈角度の間には有意な差がみられたことから,両群間における関節可動域の違いはtolerance以外の要素が関係している可能性があることが考えられる。加えて,両群間において筋伸長量は有意な差がみられたが,腱伸長量には有意な差がみられなかったことから,もともと柔軟性の違いは筋伸長量の違いによるものであることが考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により,もともとの柔軟性の違いにより伸長されやすい組織が変化する可能性が示唆された。これは効果的な静的ストレッチングの方法を検討する上で重要な情報となると考えられる。
近年,超音波画像診断装置を用いることで静的ストレッチングにより筋腱どちらが伸長されるのかということが検討されている。しかし,現在のところ静的ストレッチングにより筋の柔軟性が向上するとの報告と腱の柔軟性が向上するとの報告がなされており,一致した見解は得られていない。一致した見解が得られていない原因として,対象者の元々の柔軟性が異なることが考えられる。そこで,本研究の目的は,対象者の元々の柔軟性の違いにより伸長されやすい組織が変化するのかを検討することとした。
【方法】
運動習慣および静的ストレッチング習慣のない健常男子大学生18名(年齢24±1.7歳,伸長173±5.7cm,体重64.4±6.1kg)とし,対象筋は利き足の腓腹筋とした。柔軟性測定は対象側の膝関節を伸展位とし,足関節を角速度5度/秒で他動的に背屈することで実施した。測定項目は足関節背屈可動域,受動的トルク,スティフネス,筋腱伸長量,筋腱伸長率とした。足関節背屈可動域および受動的トルクはBiodexを用いて測定し,筋腱伸長量および筋腱伸長率は超音波画像診断装置により得られた画像を解析することで算出した。解析は,柔軟性測定でスティフネスが平均よりも高値であった10名をHigh群,低値であった8名をLow群として群分けして行い,両群間における各測定項目を比較検討した。統計は,群間における足関節背屈角度,スティフネスは対応のないt検定を用いて検討した。また,両群間での筋と腱伸長量の違いは2元配置分散分析を用いて検討した。全ての検定で有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には事前に研究内容について十分に説明を行い,同意を得たうえで実施した。なお,本研究は所属機関における研究倫理委員会の承認を得たうえで実施した。
【結果】
High群のスティフネスは1.07±0.11Nm/deg,Low群は0.59±0.10Nm/degであり,High群はLow群と比較して有意に高値を示した(p<0.01)。すなわち,両群間の柔軟性には有意な違いがあると言える。High群の足関節背屈可動域は31.2±3.7度,Low群は38.4±5.5度であり,High群はLow群と比較して有意に低値を示した(p<0.01)。足関節最大背屈角度での受動的トルクはHigh群は27.7±9.3Nm,Low群は30.2±10.2Nmであり,両群間に有意な差はなかった。High群において筋伸長量は1.29±0.34cm,腱伸長量は1.05±0.37cmであり,筋と腱の伸長量の間に有意な差はなかった。Low群において筋伸長量は1.78±0.22cm,腱伸長量は0.88±0.26cmであり,腱伸長量と比較して筋伸長量は有意に高値を示した(p<0.01)。また,High群とLow群の筋伸長量の間には有意な差があり(p<0.01),腱伸長量の間に有意な差はなかった。
【考察】
スティフネスは柔軟性の客観的指標であり,スティフネスが高いということは柔軟性が低いということを表す。つまり,High群は柔軟性が低いもの,Low群は柔軟性が高いものであるということができる。両群間において受動的トルクに差がなかったことから,本研究で行った柔軟性測定は両群ともに同程度の力で実施したということができる。また,同程度の力で伸長したにも関わらず両群の足関節背屈角度の間には有意な差がみられたことから,両群間における関節可動域の違いはtolerance以外の要素が関係している可能性があることが考えられる。加えて,両群間において筋伸長量は有意な差がみられたが,腱伸長量には有意な差がみられなかったことから,もともと柔軟性の違いは筋伸長量の違いによるものであることが考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により,もともとの柔軟性の違いにより伸長されやすい組織が変化する可能性が示唆された。これは効果的な静的ストレッチングの方法を検討する上で重要な情報となると考えられる。