[0615] ストレッチポールひめトレが姿勢・バランスに及ぼす影響
キーワード:ストレッチポールひめトレ, 姿勢, バランス
【はじめに,目的】最近,高齢者の尿失禁予防・改善を目的にストレッチポールひめトレ(以下:SPH)という商品(4cm×4.5cm×20.5cm円柱:株式会社LPN製)が開発された。これは簡単に利用しやすく,尿失禁の改善以外に姿勢やバランスに関しても,使用者から良好な反応を得ている。しかし,SPHに関しての研究報告はなく,客観的な効果検証はなされていない。そのため,SPHが姿勢とバランスにどのような影響を与えるのかを目的に検討を行った。なお,本研究の一部は日本コアコンディショニング協会(以下,JCCA)の助成を受けて実施された。
【方法】対象は,健常な学生81名(男性42名,女性39名:平均年齢21.5±1.5歳)。このうち,対象群1(何も行わない:24名),対象群2(SPHを使用しない:25名),実験群(SPHを使用する:32名)の3群を無作為に設定した。対象群1はトレーニングせず,対象群2と実験群は1回につき2セットのトレーニングを週3回,2週間継続して行った。トレーニングはJCCAが提唱するものをもとに,統一化を図るため計5分のトレーニング動画を作成し,研究者の管理下で行った。実験初日及び最終日に測定を行い,測定機器としてスパイナルマウス(インデックス有限会社)とバランスWiiボード(任天堂株式会社,以下Wiiボード)を使用した。測定項目は,スパイナルマウスによる姿勢(仙骨傾斜角,胸椎後彎角,腰椎前彎角),並びにWiiボードによる重心動揺(総軌跡長,重心最大移動距離)である。スパイナルマウスの測定方法は,座位では股・膝関節90°屈曲位,腰幅に足を開き,足底は接地,立位では足を肩幅に開いて実施した。Wiiボードの測定方法は,裸足で視覚的指標として壁に目線の高さのテープを張り被験者に注視を促した。静的バランスの座位では両上肢を組み,両下肢は床面に接地せずに測定した。立位では両踵間を20cm離し,足先を15°外側に向け,測定した。測定時間は30秒間とした。動的バランスの座位では前後左右とも両側殿部がWiiボードから離れない範囲で,最大限の重心移動を要求し,10秒間停止させた。立位では,被験者に安定して立位を保てる範囲内で前後左右に重心を移動させ10秒間測定した。Wiiボードから得られたデータはBluetoothを用いて,サンプリング周波数100HzでPCに転送され,フリーソフトFitTriを使用しCSVファイルとして保存される。その後,Microsoft ExcelのVBA(Visual Basic for Applications)を用いて,データ処理を行った。統計処理にはStudent’s T-Test,Welch’s T-Test,多重比較としてkruskal-wallis検定を用いて行った。統計解析ソフトはMicrosoft Excel2010,IBM SPSS statics19を用い,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者にはヘルシンキ宣言に沿って研究の主旨及び目的を十分説明し,書面にて同意を得た(川崎病院倫理委員会承認番号2001)。
【結果】スパイナルマウスによる計測では,実験前後における座位の仙骨傾斜角が,参照値と比較した場合,トレーニング後,有意に増加(前傾)した。その他の胸椎後彎角,腰椎前彎角では有意差が認められなかった。また,Wiiボードによる計測では,実験開始から2週間後の静的立位(総軌跡長)の変化量を3群間で比較したところ,実験群が有意に減少していた。その他の項目については,有意差は認められなかった。
【考察】スパイナルマウスの測定結果から,座位の仙骨傾斜角に有意差が認められた要因として,SPHの使用により,骨盤前傾位が促進されたことが考えられた。骨盤後傾位でSPHを使用すると,尾骨部とSPHが接触するため,自然に骨盤前傾位へと促されることが示唆された。また,骨盤前傾作用をもつ筋として,多裂筋が挙げられる(安彦ら,2010)。骨盤後傾位と比較して骨盤前傾位では多裂筋が優位に働くため,それに伴い仙骨傾斜角が増大したことが考えられた。他方,Wiiボードの測定結果から,実験群では静的立位において総軌跡長が有意に減少していた。このことから,SPHの使用により,骨盤底筋群への刺激が増大し,収縮が促進されることが示唆された。先行研究では,骨盤底筋群は他のインナーユニットと協働し,姿勢のコントロールに寄与すると報告されている(石井,2008)。そのため,インナーユニットが賦活され,腹腔内圧の上昇に伴い体幹の安定性が向上し,重心動揺が減少したことが推測された。今後は,対象者年齢層を広げ,トレーニング期間なども考慮し,さらにSPHに関するエビデンスを蓄積していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】本研究により,理学療法の分野で注目されている,姿勢およびバランスに対するトレーニング法の一助として,SPHの有効性を示したことは,新たな理学療法を展開する上で大変意義があるものと考える。
【方法】対象は,健常な学生81名(男性42名,女性39名:平均年齢21.5±1.5歳)。このうち,対象群1(何も行わない:24名),対象群2(SPHを使用しない:25名),実験群(SPHを使用する:32名)の3群を無作為に設定した。対象群1はトレーニングせず,対象群2と実験群は1回につき2セットのトレーニングを週3回,2週間継続して行った。トレーニングはJCCAが提唱するものをもとに,統一化を図るため計5分のトレーニング動画を作成し,研究者の管理下で行った。実験初日及び最終日に測定を行い,測定機器としてスパイナルマウス(インデックス有限会社)とバランスWiiボード(任天堂株式会社,以下Wiiボード)を使用した。測定項目は,スパイナルマウスによる姿勢(仙骨傾斜角,胸椎後彎角,腰椎前彎角),並びにWiiボードによる重心動揺(総軌跡長,重心最大移動距離)である。スパイナルマウスの測定方法は,座位では股・膝関節90°屈曲位,腰幅に足を開き,足底は接地,立位では足を肩幅に開いて実施した。Wiiボードの測定方法は,裸足で視覚的指標として壁に目線の高さのテープを張り被験者に注視を促した。静的バランスの座位では両上肢を組み,両下肢は床面に接地せずに測定した。立位では両踵間を20cm離し,足先を15°外側に向け,測定した。測定時間は30秒間とした。動的バランスの座位では前後左右とも両側殿部がWiiボードから離れない範囲で,最大限の重心移動を要求し,10秒間停止させた。立位では,被験者に安定して立位を保てる範囲内で前後左右に重心を移動させ10秒間測定した。Wiiボードから得られたデータはBluetoothを用いて,サンプリング周波数100HzでPCに転送され,フリーソフトFitTriを使用しCSVファイルとして保存される。その後,Microsoft ExcelのVBA(Visual Basic for Applications)を用いて,データ処理を行った。統計処理にはStudent’s T-Test,Welch’s T-Test,多重比較としてkruskal-wallis検定を用いて行った。統計解析ソフトはMicrosoft Excel2010,IBM SPSS statics19を用い,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者にはヘルシンキ宣言に沿って研究の主旨及び目的を十分説明し,書面にて同意を得た(川崎病院倫理委員会承認番号2001)。
【結果】スパイナルマウスによる計測では,実験前後における座位の仙骨傾斜角が,参照値と比較した場合,トレーニング後,有意に増加(前傾)した。その他の胸椎後彎角,腰椎前彎角では有意差が認められなかった。また,Wiiボードによる計測では,実験開始から2週間後の静的立位(総軌跡長)の変化量を3群間で比較したところ,実験群が有意に減少していた。その他の項目については,有意差は認められなかった。
【考察】スパイナルマウスの測定結果から,座位の仙骨傾斜角に有意差が認められた要因として,SPHの使用により,骨盤前傾位が促進されたことが考えられた。骨盤後傾位でSPHを使用すると,尾骨部とSPHが接触するため,自然に骨盤前傾位へと促されることが示唆された。また,骨盤前傾作用をもつ筋として,多裂筋が挙げられる(安彦ら,2010)。骨盤後傾位と比較して骨盤前傾位では多裂筋が優位に働くため,それに伴い仙骨傾斜角が増大したことが考えられた。他方,Wiiボードの測定結果から,実験群では静的立位において総軌跡長が有意に減少していた。このことから,SPHの使用により,骨盤底筋群への刺激が増大し,収縮が促進されることが示唆された。先行研究では,骨盤底筋群は他のインナーユニットと協働し,姿勢のコントロールに寄与すると報告されている(石井,2008)。そのため,インナーユニットが賦活され,腹腔内圧の上昇に伴い体幹の安定性が向上し,重心動揺が減少したことが推測された。今後は,対象者年齢層を広げ,トレーニング期間なども考慮し,さらにSPHに関するエビデンスを蓄積していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】本研究により,理学療法の分野で注目されている,姿勢およびバランスに対するトレーニング法の一助として,SPHの有効性を示したことは,新たな理学療法を展開する上で大変意義があるものと考える。