[0623] 腹部弾性補助帯（Chest wall呼吸サポーター）の臨床応用のための
基礎的研究（第3報）
Keywords:自転車エルゴメータ, chest wall呼吸サポーター, 腹部弾性帯
【はじめに，目的】いわゆるChest wallは肺を取り巻く胸壁,横隔膜,腹壁からなる換気運動を行う最も重要な装置であり,物性としての弾性力と内蔵する各呼吸筋力のバランスにより効率よく換気が行われる。COPD等の慢性呼吸器疾患者では呼吸筋力の低下とともに弾性力も弱くなり,これが運動時に換気効率を下げてADLを低下させる要因となっている。こうした病態に対しては呼吸筋力を強化するか,chest wallの弾性力の強化により換気効率を上げることが出来る。前者は呼吸筋トレーニングとして従来から行われている対策であるが,病状が進行した基礎的体力が低下した高齢者等では筋力強化法,継続性等で限界があった。そこで我々は腹壁の弾性力を高めて換気効率の改善を図る方法として腹部に弾性帯を装着する方法を提案し,「Chest wall呼吸サポーター」と呼称しその臨床応用のための基礎的検討を行ってきた。これまで安静時呼吸下では臍下部の腹部周囲への弾性帯装着により腹部弾性力が増し,結果的には横隔膜による換気効率を改善することを報告した。今回,エルゴメータによる労作時での本法の応用ついて検討した。
【方法】対象は健常成人とCOPD患者。エルゴメータ運動負荷は負荷量30Wに設定し,乗車姿勢は一側下肢が最下点で膝30°屈曲位,肩関節60°屈曲位にて実施した。使用した弾性帯はセラバンド：黒（60cmで20cm伸長時抵抗1.8kg）で,残気量位（RV）まで呼出後臍下部の腹部に装着した。ウオーミングアップ3min後,30Wで10min漕ぎ後半5minで呼吸が安定した10breathを用い解析した。ニューモタコメーターにて換気諸量（Flow Volume）を計測し,レスピトレースで胸腹壁の動きを測定してアイソボリューム法にて校正したのち胸部換気量（Vrc）,腹部換気量（Vab）を算出しKonno-Meadダイアグラムで解析した。同時に胃・食道バールーン法にて胸腔内圧（Pes）,腹腔内圧（Pga）および経横隔膜圧（⊿Pes-⊿ Pga=⊿Pdi）を測定し横隔膜の換気効率を（⊿VT/⊿Pdi）を測定し評価した。また本法を応用したCOPD症例では換気諸量,パルスオキシメータを測定検討した。
【倫理的配慮，説明と同意】被験者と症例はヘルシンキ宣言に則り本研究の主旨・内容を十分に説明し口頭と書面にて了承を得た。
【結果】（1）エルゴメータ下において弾性帯装着により横隔膜換気効率（⊿VT/⊿Pdi）は著明に向上した。（2）KMダイアグラム上でエルゴメータ運動時には位相差によりループ状曲線を描いていた胸腹壁運動が,弾性帯装着後は直線性になった。（3）胸腹壁関与度は胸壁優位であったが,弾性帯の装着後安静換気に近い呼吸パターンに変わった。（4）エルゴメータ下のCOPD症例での検討では弾性帯装着により一回換気量は大きくなり動脈血の酸素化能も維持された。
【考察】エルゴメータ労作下において弾性帯装着により横隔膜の換気効率が良くなった。KMダイアグラム上胸腹壁運動がループから線形に近いパターンの軌跡を描くようになったことは胸部と腹部が同一位相で動いており,横隔膜によって作り出された力が陽圧として腹圧を上げるとほぼ同時にzone of appositionを介して胸壁に作動して拡張力として働き,結果的に胸腔内内圧の陰圧度を増して肺を広げ換気効率が向上の要因になったと思われる。昨年本学会において弾性帯装着により腹部コンプライアンスが小さくなることを報告した。労作時でも弾性帯装着下腹壁の弾性力増強により小さな横隔膜筋力でも大きな腹腔内圧を発生することが出来るようになったと思われる。本chest wall呼吸サポーターが腹筋機能の補助として労作時でも有用であることが示唆され,COPD患者の結果もその効果が示された。
【理学療法学研究としての意義】腹筋強化が困難な高齢者等やCOPD患者の呼吸理学療法における補助装置としての本「chest wall呼吸サポーター」の応用が考えられる。症例への利用には個別性の評価や弾性帯強度等の検討課題は残るが,本研究の弾性装具（代用筋）の併用は労作時の換気効率を向上させADLの改善に寄与するものと思われる。
【方法】対象は健常成人とCOPD患者。エルゴメータ運動負荷は負荷量30Wに設定し,乗車姿勢は一側下肢が最下点で膝30°屈曲位,肩関節60°屈曲位にて実施した。使用した弾性帯はセラバンド：黒（60cmで20cm伸長時抵抗1.8kg）で,残気量位（RV）まで呼出後臍下部の腹部に装着した。ウオーミングアップ3min後,30Wで10min漕ぎ後半5minで呼吸が安定した10breathを用い解析した。ニューモタコメーターにて換気諸量（Flow Volume）を計測し,レスピトレースで胸腹壁の動きを測定してアイソボリューム法にて校正したのち胸部換気量（Vrc）,腹部換気量（Vab）を算出しKonno-Meadダイアグラムで解析した。同時に胃・食道バールーン法にて胸腔内圧（Pes）,腹腔内圧（Pga）および経横隔膜圧（⊿Pes-⊿ Pga=⊿Pdi）を測定し横隔膜の換気効率を（⊿VT/⊿Pdi）を測定し評価した。また本法を応用したCOPD症例では換気諸量,パルスオキシメータを測定検討した。
【倫理的配慮，説明と同意】被験者と症例はヘルシンキ宣言に則り本研究の主旨・内容を十分に説明し口頭と書面にて了承を得た。
【結果】（1）エルゴメータ下において弾性帯装着により横隔膜換気効率（⊿VT/⊿Pdi）は著明に向上した。（2）KMダイアグラム上でエルゴメータ運動時には位相差によりループ状曲線を描いていた胸腹壁運動が,弾性帯装着後は直線性になった。（3）胸腹壁関与度は胸壁優位であったが,弾性帯の装着後安静換気に近い呼吸パターンに変わった。（4）エルゴメータ下のCOPD症例での検討では弾性帯装着により一回換気量は大きくなり動脈血の酸素化能も維持された。
【考察】エルゴメータ労作下において弾性帯装着により横隔膜の換気効率が良くなった。KMダイアグラム上胸腹壁運動がループから線形に近いパターンの軌跡を描くようになったことは胸部と腹部が同一位相で動いており,横隔膜によって作り出された力が陽圧として腹圧を上げるとほぼ同時にzone of appositionを介して胸壁に作動して拡張力として働き,結果的に胸腔内内圧の陰圧度を増して肺を広げ換気効率が向上の要因になったと思われる。昨年本学会において弾性帯装着により腹部コンプライアンスが小さくなることを報告した。労作時でも弾性帯装着下腹壁の弾性力増強により小さな横隔膜筋力でも大きな腹腔内圧を発生することが出来るようになったと思われる。本chest wall呼吸サポーターが腹筋機能の補助として労作時でも有用であることが示唆され,COPD患者の結果もその効果が示された。
【理学療法学研究としての意義】腹筋強化が困難な高齢者等やCOPD患者の呼吸理学療法における補助装置としての本「chest wall呼吸サポーター」の応用が考えられる。症例への利用には個別性の評価や弾性帯強度等の検討課題は残るが,本研究の弾性装具（代用筋）の併用は労作時の換気効率を向上させADLの改善に寄与するものと思われる。