[0630] 回復期病棟における脳卒中患者の転倒リスクレベル別転倒状況と運動及び認知機能の関係
キーワード:脳卒中, 転倒, 回復期
【はじめに,目的】
回復期において転倒を予防することはその後のADL,QOL改善に非常に重要である。しかし転倒予防に関して在宅高齢者や包括的に各種疾患を調査している先行研究が多く,回復期脳卒中患者に対する予防策は十分に確立されていない。回復期における運動及び認知機能は多岐に渡るため,転倒リスクレベルに応じた転倒予防策が求められている。本研究の目的は,脳卒中回復期における転倒リスクレベル別の転倒予防策を検討する為の予備的研究として,当院脳卒中患者の転倒リスクレベル別転倒状況を調査し,運動及び認知機能との関連性を検討することである。
【方法】
対象は,入院脳卒中患者76名(年齢70.8±14.2歳,入院時35.5±16.5病日)であった。入院から1週間以内にFIM,Brunnstrom Stage(Br-Stage),両脚立位時間,高次脳機能検査(HDS-R,BIT:Behavioural Inattention Test),転倒リスクレベル評価(回復期リハビリテーション協会推奨)を行い,対象者を転倒低リスク群(低群)16名・中リスク群(中群)26名・高リスク群(高群)34名に分類した。更にインシデント及び転倒に関して日時・場所・内容について病棟スタッフのレポートより情報を得た。入院中一回以上転倒した者を転倒群,転倒しなかった者を非転倒群とし,リスクレベル別に転倒群・非転倒群における各評価を統計的に比較した。また認知機能障害との関連についても検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,対象者及び家族に本研究の趣旨と内容を紙面と口頭にて説明し,書面にて同意を得た。また本研究は所属大学院倫理審査委員会の承認を得て実施した。
【結果】
リスクレベル別転倒率は低群19%(16名中3名),中群23%(26名中6名),高群38%(34名中13名)であり,リスクレベル別転倒率に有意な差がなかった。リスクレベル別に認知機能障害を有する者の割合は,低群37%(6名),中群38%(10名),高群76%(26名)であり,リスクレベルと認知機能障害者数に関連を認めた(P<0.05)。転倒者の認知機能障害の有無は低群において有り0%(0人)・無し13%(1人),中群において有り8%(2人)・無し16%(4人),高群において有り26%(7人)・無し12%(4人)であった。転倒群,非転倒群においてリスクレベル別にFIM,Br-stage,両脚立位時間,HDS-Rを比較したところ全て有意差はなかった。転倒群,非転倒群のインシデント件数は低群・中群において認知機能障害の有無で差はなかった。高群の転倒群において認知機能障害を有する者は有意にインシデント件数が多かった(P<0.05)。転倒内容は,介助・監視レベルに関わらず単独での移乗時,物を取ろうとした際に転倒する例が多く,この転倒内容によるリスクレベル及び認知機能障害の有無による人数は低群において有り0人・無し0人,中群有り1人・無し3人,高群有り7人・無し2人であった。
【考察】
各群の傾向として高群では認知機能障害を有する者の割合が多く,その中でも転倒者は認知機能障害の有無とインシデントの件数に関連がみられた。これらより高群では認知機能障害による危険行動が転倒に繋がっていると考えられる。一方,低・中群は認知機能障害とインシデント・転倒に関連は見られなかった。もともと認知機能障害を有する者が少なく,転倒者において認知機能障害に関係なく危険行動が見られた。転倒状況から介助・監視が必要ながらも一人での移乗や行動時の転倒が多く見られ,自己の運動機能の過信や転倒への認識不足がインシデントや転倒に繋がっている可能性がある。転倒予防策を考える上で,高群においては認知機能障害が多いためインシデントが転倒に繋がらないよう環境設定を重視し,中群に対しては認知機能障害に関わらず自己の身体機能を理解してもらえるような教育的介入を重視する必要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
転倒予防研究において転倒リスクレベル別に検討された研究は少なく,本研究は回復期脳卒中患者の転倒リスクレベル別予防策を提案していく上で,基礎となる研究として位置づけられる。さらに症例数を追加することで,予防策の確立に繋がる。
回復期において転倒を予防することはその後のADL,QOL改善に非常に重要である。しかし転倒予防に関して在宅高齢者や包括的に各種疾患を調査している先行研究が多く,回復期脳卒中患者に対する予防策は十分に確立されていない。回復期における運動及び認知機能は多岐に渡るため,転倒リスクレベルに応じた転倒予防策が求められている。本研究の目的は,脳卒中回復期における転倒リスクレベル別の転倒予防策を検討する為の予備的研究として,当院脳卒中患者の転倒リスクレベル別転倒状況を調査し,運動及び認知機能との関連性を検討することである。
【方法】
対象は,入院脳卒中患者76名(年齢70.8±14.2歳,入院時35.5±16.5病日)であった。入院から1週間以内にFIM,Brunnstrom Stage(Br-Stage),両脚立位時間,高次脳機能検査(HDS-R,BIT:Behavioural Inattention Test),転倒リスクレベル評価(回復期リハビリテーション協会推奨)を行い,対象者を転倒低リスク群(低群)16名・中リスク群(中群)26名・高リスク群(高群)34名に分類した。更にインシデント及び転倒に関して日時・場所・内容について病棟スタッフのレポートより情報を得た。入院中一回以上転倒した者を転倒群,転倒しなかった者を非転倒群とし,リスクレベル別に転倒群・非転倒群における各評価を統計的に比較した。また認知機能障害との関連についても検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,対象者及び家族に本研究の趣旨と内容を紙面と口頭にて説明し,書面にて同意を得た。また本研究は所属大学院倫理審査委員会の承認を得て実施した。
【結果】
リスクレベル別転倒率は低群19%(16名中3名),中群23%(26名中6名),高群38%(34名中13名)であり,リスクレベル別転倒率に有意な差がなかった。リスクレベル別に認知機能障害を有する者の割合は,低群37%(6名),中群38%(10名),高群76%(26名)であり,リスクレベルと認知機能障害者数に関連を認めた(P<0.05)。転倒者の認知機能障害の有無は低群において有り0%(0人)・無し13%(1人),中群において有り8%(2人)・無し16%(4人),高群において有り26%(7人)・無し12%(4人)であった。転倒群,非転倒群においてリスクレベル別にFIM,Br-stage,両脚立位時間,HDS-Rを比較したところ全て有意差はなかった。転倒群,非転倒群のインシデント件数は低群・中群において認知機能障害の有無で差はなかった。高群の転倒群において認知機能障害を有する者は有意にインシデント件数が多かった(P<0.05)。転倒内容は,介助・監視レベルに関わらず単独での移乗時,物を取ろうとした際に転倒する例が多く,この転倒内容によるリスクレベル及び認知機能障害の有無による人数は低群において有り0人・無し0人,中群有り1人・無し3人,高群有り7人・無し2人であった。
【考察】
各群の傾向として高群では認知機能障害を有する者の割合が多く,その中でも転倒者は認知機能障害の有無とインシデントの件数に関連がみられた。これらより高群では認知機能障害による危険行動が転倒に繋がっていると考えられる。一方,低・中群は認知機能障害とインシデント・転倒に関連は見られなかった。もともと認知機能障害を有する者が少なく,転倒者において認知機能障害に関係なく危険行動が見られた。転倒状況から介助・監視が必要ながらも一人での移乗や行動時の転倒が多く見られ,自己の運動機能の過信や転倒への認識不足がインシデントや転倒に繋がっている可能性がある。転倒予防策を考える上で,高群においては認知機能障害が多いためインシデントが転倒に繋がらないよう環境設定を重視し,中群に対しては認知機能障害に関わらず自己の身体機能を理解してもらえるような教育的介入を重視する必要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
転倒予防研究において転倒リスクレベル別に検討された研究は少なく,本研究は回復期脳卒中患者の転倒リスクレベル別予防策を提案していく上で,基礎となる研究として位置づけられる。さらに症例数を追加することで,予防策の確立に繋がる。